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第4話 聖騎士だけじゃない・・・護ることは誰にでもできる

ティアは途方に暮れていた。

今、森の中で一人歩いている。

二日前にしょんなことからゼフィドとマシュリとすっかりはぐれてしまったのだ。

ソラという男にやられた傷はもっていた傷薬でなんとか補っている。

でも、早く合流するかそれとも町をみつけて待ってみるか・・・

しかし、森の中で迷っているティアは自分自身にあきれていた。

(自分って・・・ゼフィドとかいないと何もできないのかしら・・・情けない)

森がざわめきだした。

さっきまで静かだった森が・・・

空は曇りだしいまにでも雨が降り出しそうだ。

「うわぁ・・ややこ・・・」

ティアはめんどくさそうに空をみあげた。

すると、森の遠くところから声がきこえた。

「あっちにいったかもしれん!さがせ!!」

遠くから聞こえるもののはっきりと聞き取れた。

「すまんが私を隠してくれんか?お嬢さん」

ティアはいきなりの掛け声にびっくり仰天。

エラファー族の男だろうか・・・しかも年もみるからに40代のひとだった。

(なんかこういうパターンまえにもあったような・・・)

どうみても身長が高いのに隠してくれなんて無茶苦茶いうやつだなぁ・・・

髪の毛は銀色でエラファー族の特徴となる長い耳もあった。

顔は凛とした整った顔、格好はどうやら戦士らしい・・・茶色のコートの中に軽装の鎧がみえた。

「はぁ・・・」


「いまの人たちは一体?」

男は平然とした顔で

「ああ・・・あれ盗賊。ちとアジトのほうにある物があるってきいてね。少々拝借していこうとしたけど途中でみつかってしまって・・・あはは」

盗賊から盗もうなんて・・・

ティアはあきれた顔をしながらため息をつく。

「私はティア。あなたは?」

男は一間あけて、なにかを考えるようにこういった。

「ディーだ。探し物をしている旅の者だ。ティアはなんでこんなところに?」

ティアは顔を赤くしながらぼそっという。

「迷子になっちゃって・・・てへ♪一緒にいた人とはぐれちゃったの」

「そうか・・・一度街のほうにもどるとおもうんだ、一緒にくるかね?」

ティアはにっぱりと微笑んだ。

ディーは笑い返したが、その微笑みから小さな寂しさが伝わってきたように感じた。



リマージュ・・・エルファネットの行き来するもの達が旅の疲れをとるための街であり、商人達があつまるバザーの街。

小さくてもまた活気があり、良い雰囲気の街だがその反面その商人が行き来するために盗賊がおおいわけも納得できる。

「記憶が戻る医術書?」

ディーとティアは露天の店で麺と汁がはいった食べ物をすすりながら晩御飯をとっていた。

「うむ、ある有名な医者がその医術書を盗賊に盗まれたと聞いてな・・・リマージュ付近に盗賊ではないかと小耳にはさんだのだ」

ティアは首をかしげるとディーに問う。

「なんでそんなのさがしてるの・・?あ・・ごめん、詮索しすぎかな」

優しく微笑むと首を振った。

「私には妻がいてな・・・ミュウルラと言うんだ。とても愛してる妻だ。しかしあるときに記憶喪失になってな・・・」

「そうなんだ・・・」

会話をつなげた。

「この世界には<人々を護る者>それを聖騎士といっていた。いまはもういないらしいが・・・しかし私は聖騎士ではない・・・でも聖騎士だけじゃないんだ、護ることは誰にでもできるからな。私がミュウを護ってあげたいんだ」

(護ることは誰にでもできるか・・・)

ティアはにっぱりと微笑みながら

「早くみつかるといいね!」

ディーは箸をとめる。

「早く仲間がみつかるといいな」

少女は腕を組みながら冗談まぢりで怒った顔をしたかのように

「もう・・・早く私をみつけろってんだ、ゼフィドったら!」

ディーは驚くかのように眉間に皺を寄せる。

「ゼフィド?・・・赤翼のゼフィドのことか?」

するとその場の雰囲気をぶち壊すような大声が聞こえてくる。

「みつけたぞ!!あいつだ!!」

街人の悲鳴とざわめきが町中を荒らす。

銀色の男を指差した追ってきた者達が、そこらへんにあるものを関係なしに武器で荒らしながら近づいてきた。

「やば!昼間追ってきたやつらだ!」

盗賊達だ。

ディーは持っていた麺にはいっていたどんぶりを盗賊めがけてぶつけた。

盗賊がたおれこむと、ディーはティアの腕をつかむと走り出した。

「これもまた運命だ!付き合え!」

ティアは顔が騒然と青くなる。

「えええええええ・・・!!?まぢっすか!?冗談きっつーー!」

こんなことを運命って言葉で片付けないでほしいとティアは思った。


盗賊達から追われ、町に出たティアとディーは少しの離れた木陰で休むことになった。

「もう見つかってしまったからに、盗賊達に追われるしかないな・・・やむえん、私はもいちどアジトに乗り込もうとおもう」

息を切らしながら男をみたポニーテールの少女が目を丸くした。

「見つかったことを逆に使って、手薄になったアジトにのりこもうっていうのかしら?でも無謀すぎない?」

ディーは苦笑いしながらティアに微笑んだ。

「護るものがあるからこそできるんだ」

ティアは険しい顔をしながら

「でも、自分が犠牲になったらなにもできないじゃない・・・」

銀色の髪の毛がさらりにながれディーは遠い場所を見るように、夕日を眺めた。

「君にも護るものができたらわかるさ」


盗賊のアジト・・・

昔あった小さなを村を占領し、そこに何箇所か塀をつくった汚らしい巣窟みたいな場所になっている。

このアジトはリマージュ南西部の森の奥にあり、リマージュを襲うにもってこいの場所でもあった。

ここはあくまでも支部みたいなもので本部は首領タユーが率いる世界的に大きな盗賊団のひとつであるのだ。

時はすでに夜・・・

盗賊団のひとりが警備で、大きくあくびをしながら次の交代をまっていた。

「あ~・・・晩飯くってねぇな」

「なら、麺と汁のはいったラーミョンなんてどう?」*(ラーメンみたいなもの)  ふと横をみると小さなポニーテールをしてた少女がにっぱりと微笑みながらあそこめがけておもいっきりけりこんだ。

男にとっては致命的だろう。

横で隠れてみていたディーも痛々しそうに見ていた。

結局ディー一人では危ないとティアも参戦したのだ。

あまりの痛さで発狂した盗賊はその声で違う仲間達に知らされてしまった。

「ティア、乗り込むぞ!」

「一暴れしますか!」

来る敵達をティアは次々と斬りこんでいく。

弧月を描きながら鮮やかな動きで、壁をいかにも大地にたっているかように走り、重力を感じさせない身軽さにディーは感嘆する。

しかし、

(人を斬るにためらっている・・・まだそんなに慣れていないのだな)

ディーは背中に背負ったいた両手斧で大胆さとその破壊力を盗賊達に見せ付ける。

あまりの破壊力に壁は軽々に粉砕し、その瓦礫に埋もれる不運な盗賊もいた。

銀色の男は少女に問う。

「その剣技もゼフィドとやらに指南してもらったのか?」

「うん、そだけど・・・ゼフィドと知り合いなの?」

ディーはにやりと微笑んだまま、なにも言わない。

ちゃんと答えろよー・・・って思いながらもティアは次々を敵をなぎ倒していった。


奥部にのりこんだ二人は妙な祭壇をみつける。

部屋は赤くそまっていて、部屋の中心には魔方陣があった。

「ここは一体・・・」

ディーは周りを見回す。

盗賊団のアジトにこんなのがあるなんて不可思議だ。

ディーは何箇所かの盗賊団のアジトに乗り込んだことがあるという。

しかし、こういうケースは初めてだと言った。

祭壇の階段のうえに一人の男がたっていた。

「騒がしいとおもえばただのネズミどもですか」

その男は髪の毛が黒く、めがねをしていた。

青いローブを着込んでいて、右手に本をもっていた。

「お前がここの首領か?ひとつ問う。ここは一体・・・なんだ?」

めがねの男は大きく笑いながら答えた。

「きいてもいいですが、生きては帰れませんよ?」

ティアとディーは剣と斧を構え、戦闘態勢に入った。

男はニヤニヤと笑いながら

「もうひとつ・・・ここの元の首領はすでに死んでます。私が支配したんで盗賊どものゴミ達はわたしの催眠術で操り人形同然」

男は本を取りだし、開くとそこから光が現れた。

その光の中から奇妙な化け物が現れ、ふたりにいきなり襲い掛かってきた。

「一体なにこれ!?」

ティアは初めてみたものに焦りを見せ、逃げ惑う。

その奇妙な化け物は人のゾンビみたいなものでディーの3倍の大きさはある。

ゾンビの指からでてくる炎が、二人をしつこくつきまとう。

めがねの男は勝利に酔ったかのように笑い狂う。

「無駄ですよ!!ククク!こんなところに来たあなた達が悪い!計画が外にばれてしまっては・・・しまった!」

酔いくるったばかりかすぎた口をしてしまった。

ディーはその言葉を聞き逃さなかった。

「お前・・・盗賊とは無関係の人間だな!一体何者だ!」

ディーの両手斧を大きく振るうと炎の嵐を払った。

男はあせるかように本に力をこめた。

「やっておしまい!!」

化け物の力が倍増しだした。

炎の勢いが激しく、そのあまりの暑さにディーとティアは汗だくになっている。

服がちりじりとこげだし、もう肌に接近しようとしていた。

このままじゃ火傷じゃすまない。

(やばい・・・このままじゃほんとに焼け焦げてしぬかもしれん!)

ディーの焦りがより一層重なる。

すると少女のほうから白い光が放たれていた。

「ラヴィス!!こんな炎なんか跳ね返しちゃえ!!」

少女が持っていたのはさっきまでの剣ではなく、盾になっていた。

ディーはその姿を呆然とみていた。

(あれはまさか・・・)

少女にむけられていた炎の嵐は、盾で跳ね返りものすごい勢いでめがねの男のほうに返っていく。

その炎の渦は化け物ともども、男といっしょに燃えていく。

突然なことに信じれない男は、炭になった本をちりばめながら倒れこんだ。

ディーは男のほうに駆け寄ると胸ぐらをつかみ、

「死ぬ前にきいておきたい。お前は一体だれだ?」

男は奇妙な笑い方をする以外に何もいわない。

ディーは怒りを一瞬あらわすが冷静になり、

「違う質問をしよう。ここに医術書はなかったか?」

男はも一度含み笑いをし、

「・・・それで人を救おうとおもったのですか?無駄なことを・・・ここの本は光の血族の本ばかりできにくわないから・・・全部燃やしましたよ・・・くくく」

その後、男はぐったりと全身の力がぬけたかのように倒れた。

ディーは小さく舌打ちをする、悔しそうな顔をしながら。

(これは愛する者を護れなかった罰というのか!・・・くそ!)


「見つからなかったんだね・・・残念」

夜明けの鮮やかなオレンジ色の太陽を見ながら、ティアと苦笑いする。

ディーもまた悔しさをこらえながら笑い返した。

「やむえん、また1からやり直しだ」

男はティアにこれからどうするかときいた。

ティアは頭の後ろに腕を組むと

「エルファネットまでいったらきっと、ゼフィド達と合流できると思うんだ」

「私は一度ファブリアフォールいかねばならん・・・これも運命だ!一緒に同行しようではないか」

ティアは喜びを隠し切れない。

「ほんと?!やった!うれしい!」

たまには運命という言葉もわるくはないとティアは思ったのだった。


第4話終わり

第5話 名のない花に願いを に続く

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