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ジルージア

ペルドット共和国。それは古来よりライングレッド王国と幾度となく衝突を繰り返し、今や不倶戴天の敵対国の関係柄になった中堅国家である。


元々はデ・ヘカテス連邦の一部だったのが内戦によって分裂し、300年前に独立する形で国として発足したのが原型だ。そのため国としての立場上はダイナディア帝国陣営に属し、かつてはデ・ヘカテス連邦の一部であったにも関わらず連邦とは敵対する間柄になっていた。


その後は、国の発展を最重要として工業と農業の両面で着実に力をつけ、またダイナディア帝国の支援も受けることで軍事力でも発展を遂げた。その結果、生まれた当初は世界でも三指の指に入る最貧国だったペルドット共和国は、中堅国家として地位を確立するに至るまでになったのだ。その時点ではまだライングレッド王国との関係も良好で、頻繁な国交も行われていた。


ところが今から100年前に、ペルドット共和国最高責任者のガルディアス書記長が突然の軍備拡張を宣言してからはその風潮が変わり始める。若い頃から覇権国家への憧れを抱いていた彼はデ・ヘカテス連邦に友好的な姿勢を示し、ガルディアス書記長はペルドット共和国の更なる発展のためにはより広い国土と人民が必要だと考えた。そして土地に恵まれていたライングレッド王国をペルドット共和国の支配下に置きたいと考えたのだ。彼はライングレッド王国と結んでいた全ての友好条約を一方的に破棄し、そしてライングレッド王国への侵攻を決定した。


ガルディアス書記長はライングレッド王国に事前通告することなく戦争を仕掛け、一時はライングレッド王国領のほぼ全域がペルドット共和国の支配域になるまでに追い込まれた。しかし、その窮地を救ったのがライングレッド王国の最高戦力にして伝説の三英雄、クレバス、ハーバル、そしてメリーシャを持つ魔術師、サニイの三人。彼らはペルドット共和国の軍勢をたったの三人で撃退し、当時ペルドット共和国の最南に位置し最も重要な砦の一つだったガルグ砦をも占領することに成功した。


ガルディアス書記長は更なるライングレッド王国への攻撃を計画していたが、事態を重く見たダイナディア帝国の介入と、デ・ヘカテス連邦がペルドット共和国への支援を拒否したことで事実上の詰み、ペルドット共和国の敗戦が決定した。ガルディアス書記長は戦争敗戦の責任を取る形で辞任、その後ペルドット共和国郊外にて暗殺された。ライングレッド王国が占領したガルグ砦は王国がその後も占領を続けることで『その時点では』合意し、王国と共和国との間で生じた戦争は終結した。


しかし、戦争終結から50年後に事態は少しづつ動き出す。

ペルドット共和国の書記長に就任したジルージアという男は反帝国主義者であり、熱烈なデ・ヘカテス連邦の支持者でもあった。またガルディアス書記長の考え方に賛同する人間の一人でもありガルグ砦を、ライングレッド王国がクレバス砦と名称を変更して実効支配を続けていることを激しく忌み嫌っていた。


ジルージア書記長はライングレッド王国を『盗人』と表現して、幾度となく王国を侮辱する。

またダイナディア帝国とは不可侵条約を締結する一方で、ライングレッド王国との不可侵条約締結には徹底的に反対し、事実上の敵対的関係を明確にすることとなった。

しかし、古来より平和主義を重んじる風潮の強いライングレッド王国は『平和的交渉』を基軸としてペルドット共和国の攻撃的姿勢に応ずることなく、今もなおペルドット共和国と友好的な関係は続いていると主張し続け、不可侵条約締結と友好的関係の構築を目指して外交を続けている。


だが、そんなライングレッド王国の思いも虚しく、ペルドット共和国は遂にデ・ヘカテス連邦との友好条約を極秘に締結し、悲願であるガルグ砦の奪還とライングレッド王国の植民地化へと歩みを進めていた⋯⋯



=================



「ジルージア書記長。お久しぶりで御座います」


ここは、ペルドット共和国中心部にある閲覧の間。

ジルージア書記長が他国の高官と会う際に使われる場所であり、ライングレッド王国の遣いとしてバルグがこの場所を訪れていた。


すると、高座に位置する場所に一人の杖をついた男が現れる。


「よく来てくれたなバルグ。さあさあ、こちらへ来るのだ」


ニコニコと笑いながらやって来るのは、ジルージア書記長。

ライングレッド王国に対して敵対的な彼であったが、実はバルグとは幼い頃からの友人関係にあった。ダイナディアの士官学校に留学していた両者は、そこで知り合い、仲良くなったのである。


「私はバルグがペルドット共和国の軍師としてやって来る日を、一日千秋の思いで待ち続けている。今日という今日は、私の思いに応えてくれるのだろうな?」


そう口にして手を差し伸べるジルージア書記長。

しかしバルグは一歩後ずさると、はっきりとした口調で口を開いた。


「書記長閣下にお尋ねしたいことが御座います。先日、閣下がデ・ヘカテス連邦の者を迎え入れて密談を交わしたという噂について、真偽のほどをお聞かせ願いたい」


ペルドット共和国は、ダイナディア帝国と同盟関係にある。

また覇権主義を年々強めているデ・ヘカテス連邦は本来抑えなければならない敵であり、その国の高官を招き入れて密談をしたというのは、バルグにとって看過できない話なのだ。


「この話は、ダイナディア帝国との同盟関係、ひいてはライングレッド王国との友好関係の構築にも関わる重大な話ですぞ。誠意をもって、説明して頂きたい!」


するとジルージアは、ほんの少しだけ口元に笑みを浮かべると近くの従者に目で合図をする。


「堅苦しい話は嫌いなのだ。私とお前の仲なら、茶でも囲んでゆっくりと話をしようではないかね」


「書記長殿!!」


「そう大きな声を出すなバルグ。おい、早く茶を持ってこい」


するとメイド服を着た従者がお茶を二人分持ってやって来た。

ジルージアの前に陶器を置くと、香りのよい紅茶を注ぐ。そして砂糖を机に置いた。


「さあ友よ。私が今までお前を裏切ったことなどあったかね? 何も心配せず席に着くのだ、私とお前の仲だろう⋯⋯」


それを聞き、台座に歩み寄るバルグ。

横の兵士が心配そうに歩み寄ろうとするが、それをバルグは止めた。


「心配するな。どんな策を用意していようと、私が惑わされることは無い」


席へとつくバルグ。

するとバルグは置かれていた紅茶をジルージアの物と取り替えた。


「相変わらず慎重だなバルグ。私が友に毒を盛るような男に見えるのかね?」


だがバルグはジルージアの言葉には応じない。

胸元から毒に反応する銀のマドラーを取り出すと、紅茶に付ける。

もし毒が入っていれば色が変色するはずだが⋯⋯


「ほら見ろ。何も入っていまい」


色は変わらない。匂いを確かめながらバルグは紅茶を一口飲む。

香しい最高級の茶葉の香りが鼻腔を満たす。どうやら毒は入っていないようだ。


「では、私も頂くとしよう。この茶葉はユーリシア地方から取り寄せた、世界でも僅かしか採れぬ究極の逸品。値段にすれば二人分の茶葉で戦艦が一隻買えるほどだ」


そう言いながら、バルグが飲むはずだった紅茶を一口飲むジルージア。

まるで見せつけるかのような彼の様子は、取り替えるほどの用心深さを見せたバルグに対しての当てつけにも見えた。


「ジルージア。お前はデ・ヘカテス連邦に魂を売ったのか?」


ここで初めて書記長とは呼ばず、バルグは名前でジルージアのことを呼ぶ。

するとジルージアは不敵な笑みを浮かべながら言った。


「お前は、そうだと思うのか?」


「その結論を聞くためにここに来た。真実を言え、ジルージア」


カップをコトンと置くジルージア。

その途端、彼の顔から温和な笑みが消えた。


「友よ。私はこの世でお前にだけは嘘をつかないと決めている。だから、胸の内にあることを全てお前にだけは告げよう」


バルグは指をパチンと鳴らす。

すると突然、ガチャッ!!という音と共に周りを囲む衛兵が銃を魔法で具現化させた。

そして一斉に銃口をバルグへと向ける。


「ジルージア!! 貴様!!」


危機を察したバルグの警備の兵士が横からジルージア目掛けて剣を振り上げる。

しかし衛兵たちは一斉に銃弾を放ち、飛び掛かった兵士をハチの巣にした。


「最後のチャンスだ。私の元で軍師として仕えよ。お前ほどの天才を亡き者にするのは惜しい」


「⋯⋯それは、私の問いに肯定するということか?」


「その通りだ。私は既にダイナディア帝国との条約も破棄し、デ・ヘカテス連邦の一員となることを了承している。何故か分かるか? 何故私が、そこまでしてライングレッド王国を憎むか分かるか!」


ジルージアは紅茶のカップを投げ捨てる。

そして自らの腰に帯びた剣を抜き放つと、バルグに剣先を向けた。


「私の二代前の書記長。お前たちとの戦争に敗れ、最期には無惨に殺された男。ガルディアス書記長は、私の祖父だ!!」


「何だと⋯⋯!?」と驚愕の表情を浮かべるバルグ。

バルグもその事実を知らなかった。いや、そこにいる全員がそのことを知らなかったようだ。


「そうだ、誰も知らぬ事実だ! もしそれを知られていれば、私は自我を持つ人間となる前に祖父同様に殺されていただろう。だから私はその事実をひた隠しにし続けた。そして、お前たちを、ライングレッド王国を心の底から憎んだ! 血が湧きたつほどの憎しみと、肉も引き裂けんばかりの激情を押し殺し、お前たちが絶望の淵で私に懇願する日が来ることを心底待ち望み続けながら、この地位に辿り着き、そして遂にこの日を迎えた!!」


剣先は怒りと興奮でプルプルと震え、ジルージアの目も血走っている。

それは彼の持つ感情が、決壊寸前であることを示していた。


「友よ⋯⋯この世のライングレッド王国の住民全てが地獄の火に焼かれればいいとすら思っている私でも、お前だけは殺したくないという一抹の感情がある。お前は、学生時代に誰とも話すことが出来ず、孤立していた私を唯一助けてくれたな。出来損ないだった私に勉強を教えてくれて、いつも未来輝く希望に満ちた世界について熱く語り合ってくれたな!!」


息が荒く、激情の余りに鼻や目から血が滴り落ちている。

大してバルグは、鷹を思わせるような鋭い眼光でジルージアを臆せず睨みつけている。


「さあ、来い! 私と共にペルドット共和国の一員として、ライングレッド王国を滅ぼそうではないか! 友よ! 唯一無二の、私の友よ!!」


剣を持たない左の手で、バルグに手を差し伸べるジルージア。

するとバルグは、静かに言った。


「断る。たとえここで命尽き果てることになろうと、私はライングレッド王国に背くことは出来ん」


「何故だ! 何故だッ!? 私とお前は友ではなかったのか!?」


「友だ。いや、友だったのだ」


その途端、スッとジルージアの瞳から光が消える。

友だった、つまり今はもう友ではない。バルグからの明確な拒絶意志だった。


「ジルージア、もう私はライングレッド王国の軍統括官なのだ。国に忠誠を捧げ、国のために奉仕し、ライングレッド一族の更なる繁栄に尽くす狗なのだ。過去のお前の中に存在するバルグはもう居ない。また同様に、私の中にいたかつてのお前も⋯⋯もう居ない」


バルグの頬を涙が伝う。

それは死を目前に控えた恐怖によるものではない。かつて友だった過去を虚像だとジルージアに伝えることも、己の内に秘めたかつての希望に満ち、未来について雄弁に語り合えた友がもうこの世に存在していないという事実を認識することも、バルグにとっては心が張り裂けるような思いだったのだ。


「私はお前の物にはならん。だがもしお前が私を、このバルグを友だと思ってくれるなら、私をこのまま無事に国に返して欲しい。だが、もしお前が私を裏切り者だと思うなら⋯⋯」


両の手を広げて、ジルージアの前に立つバルグ。

それは、覚悟を決めた男の姿だった。

次の瞬間、バルグは両の手に小刀を具現化させる。


「私はタダでは死なぬ! 地獄の果てまで生死を共にしようぞ!! ジルージア!!」


そして、バルグは跳んだ。

目にも止まらぬ高速の剣捌きで横にいたジルージアの護衛を斬り捨てると、空中を舞いながら手に持っていたナイフを銃口を向けていた兵二人の喉首に叩き込んだ。

飛び散る血液と、崩れ落ちる兵を目の前にしてジルージアもまた醜悪な笑みを見せる。


「良かろう!! ならば貴様の首を落とし、干からびたその生首を手土産にライングレッド王国へ侵攻しようぞ!!」


ジルージアの持つレイピアの剣が恐るべき速度で刺突を放つ。

またバルグはそれを人間を越えた動体視力で全て躱すと、ナイフを具現化させてジルージアに投げつける。だがジルージアはそれを剣で全てはたき落とした。


「ハッハッハ!! 腕が落ちたなバルグ!! かつては王国最強の剣豪と謳われた貴様も、今や老兵か!」


勝ち誇るように剣を振るジルージア。

対してバルグは、地面に落ちたナイフを指差しながら言った。


「フッ、確かに腕は落ちた。だが、それを補うのが『経験』だろう」


その瞬間、ナイフが爆発する。

バルグはナイフに小型の爆弾を仕込んでいたのだ。

さらにナイフには煙幕も仕込まれており、一瞬にしてバルグは煙の向こうへと隠れる。


「グホオオオオッッ!!」


「お前の悪い癖だジルージア。勝利を確信してはならない、追い込まれたネズミほど恐ろしい敵はいないと士官学校で習ったのを忘れたのか?」


爆風で宙に打ち上げられたジルージアを目で捕捉するバルグ。

再度宙を飛ぶと、ジルージアの喉笛を目掛けて短刀を振り上げる。


「さらばだジルージア。古き良き時代の、かつての友よ」


そしてナイフは振り下ろされ⋯⋯


「ムッ!?」


その刹那、バルグは途轍もない殺気を感じた。

背後からバルグに向けて放たれた恐るべき負の瘴気と、迫りくる剣戟。

空中で身を躱したバルグの下腹部を、何者かの斬撃が貫いた。


「グハッ!!」


もし一瞬でも回避が遅れていたら、バルグの上半身と下半身は泣き別れになっていただろう。

しかし今の攻撃でバルグは深手を負ってしまった。

地に倒れ伏すバルグに、重厚な響きの足音が近づいてくる。

すると勝ち誇るような笑みを浮かべながらジルージアは立ち上がる。


「やっと来たか。デストロ中佐よ」


「デス⋯⋯トロだと!?」


「そうだ。デ・ヘカテス連邦魔法騎士軍第二大隊長のデストロ中佐だ。私の護衛のためにはるばるデ・ヘカテス連邦からお越しくださっていたのだよ」


現れたのは、黒い甲冑に身を包んだ巨大な男。

体からは黒い魔力が溢れ、身の丈ほどもあろうかという大剣を背負っている。

先程の一撃も、その剣によって放たれたもののようだ。


「この男は強いぞ。今の無様な醜態を見せる貴様ではとても勝てん程にな」


大剣を抜き放つデストロ。

その刃の先には、下腹部を抑えて息を荒らげるバルグがいる。


「き⋯⋯さまッ!!」


「何とでも喚け、ライングレッドの犬っころめ。デストロよ、この地に這いつくばる老骨の首を叩き切り、生首を天に掲げるのだ!!」


振り上げられる大剣。

その刃を遮るものは何もない。


「さらばだバルグ。王国に魂を売った、かつての友よ」


そして、大剣が振り下ろされた。

冷たい空気を、鮮やかな血液が赤く染める。

飛び散ったその血はバルグの物で⋯⋯


⋯⋯はなかった。


「お初にお目にかかりますわ。ペルドット共和国最高指導者、ジルージア書記長様」


丸太のように太いデストロの両腕が飛んだ。

まるで見えない刃に切り落とされたかのように。

次の瞬間ピュッという甲高い風切り音と共に、デストロが着ていた黒の甲冑がまるでサイコロステーキの如く、駒切りに切断されると剥がれ落ちた。


「その方は我が国を守護する国防軍の最高責任者で御座います。その男に刃を向けるは我が国に対する裏切り、そして明確な敵対行為と捉えてよろしいですわね?」


「だ、誰だ貴様は!!」


突如現れたのは、白いドレスに上からフード付きの茶色いコートを羽織った小さな少女。

バルグは、その少女の声に聞き覚えがあった。


「ま、マリー殿!?」


フードを下ろす少女。

緑色の大きな瞳と、幼いながらも整った可愛らしい顔立ち。そして金色の美しい長い髪。

その胸元には、ライングレッド家を象徴するドラゴンの家紋があった。


「貴方の善戦、空から楽しく拝見させていただきましたわ。しかしこれ以上は我が国の貴重な戦力を失う可能性が高いと判断し、介入を決断しましたの。格安の他所から貰った派遣社員と違い、貴方は我が国の数少ない実績と実力を併せ持つ生え抜き幹部ですから。助けるのは当然でしょう?」


「生え抜き⋯⋯? 派遣⋯⋯?」


「おっと、私の口が悪さをし過ぎたようです。今の言葉は忘れて頂けると嬉しいですわ」


すると、その少女はジルージアに向けてドレスの裾を広げて挨拶する。


「私はマリー・ライングレッド。ライングレッド家に名を連ねる第一王女ですわ」


「ライングレッドの娘だと⋯⋯? まだ小童ではないか!!」


ジルージアは憎しみの籠った醜悪な顔を見せると、デストロに命ずる。


「その子供も纏めて殺せ!!」


だが、デストロは動かない。

両手を失い、甲冑も身から剥がされ、そして男は一言も発さない。

するとジンワリと、デストロの下着が赤く静かに染まってきた。


「お気の毒ですが書記長。その『人間だった物』は、もう貴方の命令には従いませんわ」


パチンと指を鳴らすマリー。その瞬間、デストロは細かい肉片となって崩れ落ちた。

鋭利な刃物で細かく切断されたかのように、正方の肉片となってデストロは死んでいた。


「デ、デストロ!! デ・ヘカテス連邦屈指の実力者だぞ!?」


「私のハンドブレード・零式の前に頑強な肉体など無意味。皆等しく切断される運命ですわ」


そして、マリーの体が宙に浮き始めた。

浮遊するように、まるで空を飛んでいくかのように。


彼女の顔は紅潮し、隠しきれない興奮が溢れ出す。

するとマリーのスカートからポタポタと透明な雫が滴り落ちた。


「書記長殿。今日、ライングレッド王国はペルドット共和国に宣戦布告致します。しかし御心配なく、戦争は今日の夜が明けるまでに終結し、事の真偽も公になることなくこの国は無力化されることになるのです」


キーンという甲高い音と共に、マリーの両の手から無数の長い刃が現れる。

指揮者(マエストロ)の如くマリーが指を振ると、その刃が一斉にうねり始める。

それはまるで、その場に居る全員を捕食せんと頭をもたげる大蛇のようだった。


大虐殺(ジェノサイド)の始まりですわ!!」


そして、マリーによる地獄の大量殺戮が始まった。

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