違法な追放をされたダジャレ魔術師は今日最強になる―今更まっさらな気持ちで戻ってクレヨン? ……恐ろしく遅い!―
「ダレン! あんたは追放だ!」
「何でそんな損な事を?」
「だから! そのつまんねーダジャレがむかつくんだよ!」
「ダジャレを言うのは誰じゃってか?」
「黙れ! とにかくあんたは追放だ!」
「そんな……違法な追放って事か?」
「出ていけ! 二度と面見せるな!」
俺は違法な追放をされてしまった。
職が無くなってショックだった。
今は家の居間にいる。
「アルミ缶の上にあるミカン」
俺がそう呟くと、アルミ缶とその上に乗ったミカンがシュッと出現した。
俺はアルミ缶の上にあるミカンを取って、口をベタベタにしながら食べた。
俺の憎いユニークスキルダジャレ魔術は、口にしたダジャレを正直に具象化する事が出来るマジですごい魔術だ。
しかし、行く先々で「つまらないダジャレを言うのは誰じゃ」などと言われて違法な追放を受けてしまうので、職が無くてショックだった。
仕方ないのでミカンを出しては食べるだけのヒビ割れた日々を俺はすごすごと過ごしていた。
ふと、傷ついた俺はアルミ缶の上にあるミカンを見かけながらある事に気付いた。
――このミカンを売ると、軽々と儲かるのでは?
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「アルミ缶の上にあるミカン……アルミ缶の上にあるミカン……アルミ缶の上にあるミカン」
俺が早口でつぶさに呟く度に、アルミ缶とその上に乗ったミカンが生成されて行く。
俺はミカンを作れたら完結と思っていた。
しかしアルミ缶の方も軽くて、異常に丈夫で、錆びないので確実に高く売れた。
俺は奥ゆかしい億万長者になっていた。
「ダレンさん! 俺が間違ってました! 戻って来てください!」
元のパーティの優秀じゃない勇者が北から来た。
「今更まっさらな関係とはいかん! 俺のダジャレを馬鹿にしたのはダレジャ? 違法な追放をしたのはダレジャ?」
「ごめんなさい! 俺が悪かったです!」
「今居間に行く」
「良かった……旅立ちの準備をしてくれるんですね?」
俺は勇者を忌々しく思いながら居間に向かった。
「今は居間にいない」
居間でつぶさにそう呟き、俺は新天地へと転移した。
俺はムラ村の建設を検討した。
「アルミ缶の上にあるミカン」を本気で基本産業にしつつも、「ラクダはラクダ」でラクダを使役しての運送業も早々に思いついた。
「ウメはウメー」で梅を過去に無くウメくしていく食品加工業も仰々しくこなして行った。
俺の村、ムラ村は王も逆らえない程栄えていた。
おっさんばかりなのは散々だが、中々いい仲間も増えた。
「アルミ缶の上にあるミカン」
「ファアアアアアアアア! ファアアアア! ひいいいいいい! 藁をも掴むくらい笑えるううううううう!」
イワンさんは俺のダジャレにつまらないとか言わん。
以降も最高の友達として共にガンガン頑張ってくれるだろう。
そんな時、裂けそうな叫び声がした。
「北から魔王軍が攻めて来たぞー!」
まず、まずいと思った俺は異常な城壁の上に登った。
魔王軍は異常な城壁を訝しんで畏怖していた。
「何だこの城壁は……布か?」
そういいつつも、魔王軍はつつがなくグングン進んで来た。
「異常な城壁をシクシクせずに敷くんだ!」
「ダレンさん! 回答は了解です!」
俺はラクダ達を「ラクダはラクダ」で甲斐甲斐しく回復させる。
そして異常な城壁を村民と忖度せず、魔王軍のゆくゆくの行く手に敷いていった。
グングン進む魔王軍が、白い布の衣料の領域へと入って行く。
折れない俺の村を……そして居間を守るなら、今だ!
「――ふとんが、吹っ飛んだ!!」
魔王軍の足元にあった巨大な布団が吹っ飛んで、魔王軍は壊滅した。
無理なくらい出た煙の後、往々にして魔王だけが立っていた。
「妙な魔法を使うな……だがこの程度で俺を倒せるとでも?」
俺は一人、鳥のように出た。データが無い魔王の前へと。
「たった一人でこの私と戦う気か……面白い奴だ」
俺は心折れずに、つぶさに呟いた。
「――内臓がないぞう!!」
「グハアアアアアアアアアアアアア!」
こうして子牛みたいなツノの魔王が死んだのが真実だ。
俺の折れない村、ムラ村は永遠にええ感じだった。完。