俺と後ろの花咲さん! 3
どうしてこうなった。
入学式が終わり、教室に戻ってきた俺ら1組は、いくつかのグループに分かれ会話を楽しんでいる。
いや待て。みんなよく初対面でそんな喋れるな、中学が一緒だったのか? 俺はといえば、席の後ろのほうで1人ぼーっとしていた。自分から積極的に話しかけるタイプじゃないからな。
そんな中、花咲さんといえば……
「ねぇ、どこ中だったの? どこの市にあるの?」
「部活何かやってた? あ、これからは『はなちゃん』で良い?」
「良い匂いだ…なぁなぁ、シャンプーはLAX使ってるっしょ? 俺好みの匂いだぜ!」
デリカシーのない匂いフェチ変態がいた気がしたが、花咲さんはたくさんの人に話しかけられていた。その人たちに愛想の良い笑顔を見せながら、元気よく質問に答える花咲さん。
なんか、次元の違いを見せつけられてるな……俺もあんな風にちやほやされたい。向こうから話しかけてくれれば、俺は話しやすいんだけどな…。
「なぁなぁ、さっきからなに花咲さんばっか見てんだよぉー! あ、もしかして好きなのか? 朝一緒に登校してたけど、もしかして……もしかするのか!?」
まさか、さっきの変態野郎が最初に話しかけてくれるとは。
「別にみてねーし! つーかさっきの、もはやセクハラレベルの発言は何なんだよ」
「やっぱり見てたんじゃーん! 俺の声が聞こえるということは、花咲さんに集中してた証拠だぜ?」
「あーはいはいそーっすね。名前なんて言うの?」
「ん? 俺は沢波 逞っていうんだ。『たくま』って気軽に読んでくれよな!」
「おう、ありがとう。俺は水樹 直哉っていうんだ、じゃあ同じように『なおや』で良いよ」
「よし分かったぜ! なおや!」
こいつ、勢いがすさまじい。まぁでも、高校初の友達が初日からできて良かった。ここから人脈を広げ、たくさん友達を作りたいところ。
「それでよ、直哉! このクラス当たりだと思わない?」
‘‘当たり‘‘の意味は何となく分かった。このクラスには、男子にとって神様のような存在の恩恵でも受けているのか。
このクラス、可愛い子が多い。
いや待て、天国だろ。なんだここ、俺この学校に来てよかったわ。所々に固まっている男子たちは、周りをきょろきょろ見ながらコソコソ話している。
「俺、可愛い子には積極的でさ! 何人かに声かけてみたんだけど、やっぱり可愛いわ! ここ来てよかった」
「いやお前、誰にでも積極的なタイプだろ。それにしても、天国みたいだなぁ」
花咲さんといい、クラスメイトの女子といい、俺結構幸せな高校生活送れんじゃね? 車いすのおかげで、思い描いた高校生活を送るのは無理かなって思ったけど、案外そうでもないな。
チャイムが鳴る。この学校のチャイムは、なんだか貴族の学校みたいだなと思いながら席に着くと、扉がゆっくりと開けられた。
「みなさん初めまして! この1組を担当する、河合と言います!」
入ってきたのは、肌が黒っぽく筋肉質な元気のよい担任だった。こういうタイプの先生は嫌いじゃない。
「みなさんと、面白く楽しく、元気に生活していければなと思います! よろしくお願いします!」
担任が挨拶を終えホームルームが終わると、グループごとに分かれそれぞれ下校を始める。俺はまだ友達が少ないから、花咲さんと一緒に帰ることになりそうだ。
「おう直哉、一緒にかえろうぜ」
あれ、逞? おうまじか、もしかして俺と一緒に帰りたいからって、グループの友達にに断って一緒に帰ろうとしてんのか?
「友達はどーしたよ、俺なんかでいいのか?」
「いや、友達っていう友達まだ直哉ぐらいだし」
まさかどこのグループにも属していなかったとは。
…下校の道中、花咲さんが隣に歩き俺は逞に車いすを押してもらっていた。
「お前、最初話した時から『こいつ友達多そう』とか思ってたんだけど、どこのグループにも属してなかったんだな」
「まぁ、あいつらは同じ中学だったとかなんとかで、いろいろ繋がりが前からあったんだよ。俺ここからまぁまぁ近いとこ住んでるのに、同級生あんまりいねーんだよ」
「私も友達多そうだなーって、なんかそういう感じしたのに意外ー!」
「花ちゃんは一瞬で友達1000人くらいできそーっつか! 俺たちと一緒でいいのかよー!」
逞、いつから‘‘ちゃん‘‘付けになったんだ。そういうの気にならないのか?
「そんなことないよー、私あまり大人数好きじゃないしね」
「え、そうなの? 花咲さんそういうの好きそうって感じしてたのに」
他愛もない話をしていると、俺の家近くの十字路に着いた。
「あ、じゃあ俺と花咲さんこっちだから」
「あれ? 駅までじゃないのか?」
「まぁ、俺と花咲さんは夢高の近所に住んでるから」
「あれ、じゃあ2人は同級生だったとか、幼馴染だったとか、そういう関係?」
「近くに住んでるのに、実は最近知り合ったんだよな」
「驚きだよねぇ」
まぁ、きっかけを思い出すと痛々しい記憶が蘇ってくるから、あまり想像したくない。
「あ、そうそう。車いす乗ってるけど、それ治るのか?」
「両足を骨折したぐらいだから、平気だよ」
「ならよかった、それ治ったらどこか遊びいこーぜー! あ、花ちゃんもどう?」
「うん! 行く!」
「よし、じゃまた明日な! じゃあな!」
「おう、じゃあなー」
「バイバーイ!」
……それから、少しだけ花咲さんに車いすを押してもらい、家に着いた。
家のソファーにゆっくりと寝転ぶと、今日あったことを思い出す。
俺、緊張でずっと興奮状態だったな。変じゃなかったかな…。
とりあえず、疲れたから寝るか……。
俺の高校生活、一風変わってるけど、いい感じの生活送れる…かも?




