俺と後ろの花咲さん!2
俺と後ろの花咲さん!2
しばらくは車いす生活を強いられる事になった俺こと水樹直哉は、花咲はな と名乗る美少女と出会った。
事故の発端は自分だから責任を果たしたいと俺の介護を申し出、頭を深々と下げた花咲さんを断ることもできず、車いすで始まる俺の高校生活が幕を開けるのだった…。
「調子はどう?」
時計は間もなく8時を回る。俺は学校向かうべく、花咲さんと登校するようになった。花咲さんがなぜ俺の家を知っているかというと、中学校の卒業式が終わり冬休みに入ると、メールでお見舞いに行きたいと連絡がきたので、住所を送ったのだ。実は家が近所で、俺ん家は車がないため俺は家に出た瞬間に彼女のお世話になる。なんか、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「まあまあかな」
よし、自然に言えた。女の子には慣れてないから、緊張して変なイメージを持たせてしまうのが俺の欠点だ。しかし、冬休みの間に少しは親睦が深まったため今は何とかなる。
「うん、それじゃあ行こっか」
その声とともに、ゆっくりと車いすが動く。俺重くないかな、と心配になるほどゆっくりと。
家から学校までは徒歩で10分ほどで到着する距離だ。
20分ほどしてようやく正門の前に着くと、他愛もない話をしていた俺の身が引き締まる。
俺も、今日から高校生…!どんな青春ラブストーリーが待ったいるのだろう!楽しみ……
「ねぇ、あの子超可愛くない!?」
「やば!可愛い!……車いす引いてるけど、乗ってる人って彼氏かなんか?」
「んなわけねぇだろ!あんな冴えないやつが彼氏なわけ!」
おい、慎んでもらおうか。俺は、花咲さんとの反応の差に少し憤りを感じつつ門をくぐった。
ここは、夢ケ丘高等学校。いたって普通の高校だが、ここだけの話中学生の時、夢高の学校説明会に行ったら可愛い先輩がいっぱいいたので、この高校を選んだ。……といったら過言だが、8割くらいはそうだ。って、何言ってんだ。下心丸出しじゃねぇか。あぁ、緊張のあまり興奮してしまっている。 ……?
…あれ、そういえばなんで花咲さんが俺と一緒の高校にきてるんだ???
「ねぇ、なんで花咲さん、俺と同じ高校来てるの? 自分の高校は?」
「何言ってるの? 同じ高校でしょ?」
聞いてないわ!……って、朝から車いす引いて学校まで来てくれるなんて、花咲さんと同じ高校じゃないと無理があるもんな、じゃなくて。
「今初めて知ったよ!ってか、ここからは先生に手伝ってもらうからもう大丈夫だから!!」
「そ、そう?でも、無理しないでね! 一人でできることなんて少ないんだから」
なぜだか、さっきから周りの視線が痛い。特に男子なんて、こんな子に自分の手伝いをしてもらって、さらには心配までかけてくれる光景を目にして嫉妬しているような……。俺はいつも嫉妬する側の人間だったから、気持ちがよくわかる。
「じゃ、ここで!」
「うん、わざわざありがとう」
昇降口に張られた座席表を確認し、指定された教室へと向かおうとすると。俺の名前の下のほうに「花咲はな」とある。
おいまじかよ。クラスまで一緒とか、どこまで偶然が重なるんだ。
「同じクラスじゃん! じゃあ、私が引いていくよ」
「ありがとう…その、本当に悪い…」
結局、教室まで運んでもらった。
あぁぁ、どうしよう…ってか俺、最初のインパクトでかすぎでしょ。車いすで、しかも美少女が後ろで引いてくれて…。
俺、これからどんな生活を送るのだろう。全然思い浮かばない。
しかし、これだけは言える。
思い描いた学校生活は、送れない。