新たな青春看護系ラブコメ始動!
長いようで短かった、中学校生活も終わる春のシーズン。受験は終わっていて、あとは卒業式、クラスメイトとの打ち上げを満喫することだけ。
そんな毎日まいにちが貴重に感じる、ある日のことだった。
いつものように学校へ行く途中にある、少し大きな横断歩道の前で待っていた。交通量が多く、音がとてもうるさい。
ふと、下に向いていた目線を前に戻すと、一匹の小さな犬を目にした。
散歩中の犬なのだろう、首輪をつけリードを引きずりながらこちらに向かっている。しかし飼い主不在だ。あまり見ないその姿に妙な新鮮さを感じていた、その時。
大型の車の騒音と共に、とてつもなく嫌な予感が体中を雷撃が如く走った。
「あぶなぁぁああい!!」
((うぅ…あ、あれ?俺、何やってんだ……学校、あるんだよな…?))
?「しっかりして!!頑張って!もうすぐ病院だから!!お願い…!」
((ううん?誰だ…?女の人…なのかな…?))
?「着いたよ!早く!…すみません!、この方、お願いします!!!!」
((うぅ…………。))
「はっ!!!? あれ、なんだ…?」
見慣れない壁、天井、機材、そして人。情報量が多すぎて頭が混乱する。え、人?
「起きたぁ!! 良かったぁ……よかったよぉぉ…!」
「あの…えっと……どちら様ですか?」
「えっ…あ、そっか。お互い初対面だもんね」
良かった、実はお互い知り合いで俺が忘れているかもしれないと思ったから。
「花咲ひなっていいます!!」
「は、はあ。えっと、お、俺は水樹直哉と言います、はい!」
俺だけ緊張してる……無理もない、相手は超絶美少女だ。スタイル抜群、さらさらな黒髪ショートの髪の毛に、ちいさな顔。
俺のタイプの条件をほぼ満たしている。夢みたいだ!何故かはわからないが、今俺とこの子二人っきりのじょ…
「具合はどうですか?」
「へっ!? あ! 具合! ま、まぁまぁかな!」
「良かった…」
いきなり来たから驚いて変な声出してしまった…恥ずかしい…!!って、具合?
「なんか、釈然としてなくない?」
「しょ、正直何がなんだか…」
「あー、まぁそれもそっか。意識なかったもんね」
彼女は真剣な面持ちで、状況を説明してくれた。どうやら俺は事故にあってしまったせいで、両足の骨を骨折してしまったらしい。結果的に車いす生活の始まりなんだと。
「部活でケガして松葉杖ってことはあったけど、車いすとなると協力が不可欠だよな……」
車いすというワードを聞いて、一人で呟いてみる。すると、
「水樹くんが家にいるとき以外は、私ができる限り協力します!」
……ん?今、こんな可愛い子に、家にいるとき以外は協力するって言われた気がする。
そんなの、願ってもみなかった最高の提案だ。しかし、俺の善意がいい仕事をしてくれる。
「そ、そんなの悪いよ!自分一人でもなんとかなるし!」
彼女の事情もあるだろうし、それにこの子は事故の目撃者として、俺のことが心配でここにいる、と思うから。言い方は悪いが協力してもらう義理はないから、外出時の看護をしてもらうなんて申し訳なさすぎる。
「いえ……これは私が原因です。私の不注意が招いた不幸なんです。」
急に声のトーンが低くなり、改まった態度で彼女はその言葉を吐いた。
そして、ばっと起立すると彼女ははっきりとした、涙交じりの声の大きな声で
「この度は、私の愛犬を助けてくださりありがとうございました!!この恩は、返そうとしても返すことのできないほど大きいものですが!私は自分ができる限りを尽くして、あなたを支えたいんです!私にあなたの協力をさせてください!!!」
こう言い切った。そして感銘を受けた。俺はこの子の愛犬を救って、こんなけがをしたんだな。なら、
「…分かった、それじゃあよろしくお願いします」
「…うん! よろしくね!」
病室の窓から吹き込む春の温かな風が、いつもより気持ちよく感じた。