季節の狭間
「ほーほけっきょ けっけょ けょ」
「ちっ ちっ ちちっ けちゃこちゃぺちゃ」
「ぴーひょろー ひょー ひょろー」
青空一面に 色とりどりの音が ひろがる
子はいう
「鶯は 何で泣いてるの?」
親はいう
「かぞくをさがしてるのよ」
子はかしげる
「燕は 何で怒ってるの?」
親は答える
「怒ってないわ いそがしいのよ」
子はきく
「鳶は?」
親はそっと目を閉じて 呟く
「どこから聴こえてくるか 耳をすませてみれば分かるわ」
「どうして?」
「獲物を見つけた 証だからよ」
子は空を見上げる
そこには、雄大な真っ青な空
家族のために 低く飛ぶ鳥
姿なく 音だけが訴える鳥
そして 大きく旋回をしながら
頭上を回る 凧のように
横に長く 隆々とした たくましい翼を
誇示するかのように広げる鳥
地べたには 新雪のような 真っ白な体
扇子のような長い尾を ひょこひょこさせ
歩き回る 物静かな鳥
日差しの眩しい 明けたばかりの朝
誰ものものでもない どの季節でもない
季節の狭間。