第4話 短い旅路
「おっちゃん、この馬、売れる?」
そう言うと、商店のおっちゃんは、戸惑い、聞き返す。
「少年、旅人、だよな?こんないい馬売っぱらっちまっていいのかい?荷物もずいぶんすくないみたいだしよぅ」
「大丈夫だ・・・あてがあるからな。感謝する。」
シュクロになった私は、最初についた街で馬を売ってしまおうと、評判のいい店を捜し、この
『テルダ商店』にたどり着いた。
「ならいいんだけどよう。ほい、金貨1枚と銀貨5枚が妥当だな。」
「随分と思い切った値段だな。」
戦争で馬の需要が上がったといえ、せいぜい金貨1枚だ。
銀貨5枚もつけるのはやりすぎだ。
「そりゃ、ほんのガキのくせに独りで旅するような奴見かけたら、誰だってこうするさ。」
「別にすきで旅してるわけじゃない。徴兵だ。それにそこらへんの盗賊なら、2,3回壊滅させた。」
おっちゃんは冗談だろ、とせせら笑って、金貨を手渡した。
負けず嫌いの私はカチンときて、「証拠もある」、と盗賊討伐による褒賞金の証明書を見せた。
マントのポケットに入りっぱなしだったものだ。
名前はケインのままだが、再会することも無いだろう。
「お、おお、これは・・・すごいな、君・・・」
証明書を返してもらうと、この街で一番見晴らしのいいところを聞き、商店を去った。
教えて貰ったのは、千年前の遺物だという砦。
確かに絶景だったが、いかんせん砦なのでどこか味気なく、人もいなかった。
まぁ、この方が好都合だが。
眼をつぶって、冷たくなってきた風に身を任せてみると、自然と両腕が変化していき、
砦から足を浮かせる。
最高の気分だ。
眼下に広がる街並み、遠くに地平線。
視界の急激な変化にクラッとくるのさえ心地よくて、戦地に向かっているのさえ忘れて、
ふざけて空中で1回転する。
鷹の目で見る街は、空は、とても美しかった。
ぼうっとただ飛んでいるうちに夜になって、また夜が明けて。
睡眠は必要ないから飛び続ける。
不思議と飽きないもんなんだな。来世は鷹になりたい。
特に事件も異常もないまま、2日で王都についた。
馬だと、10日かかったりする。
鷹、すごい。