第一話 何処にも属さない森
気分で投稿
プロローグ
いつからっだたか、人々は争うのをやめ、進歩するのもやめ、安定を望むようになった。
それを独り見下ろす神は、暇を持て余していた。
『人の幸福は見あきた。手助けすることだって有りはしない。
これじゃあ、人間たちを創った意味がないじゃないか。
・・・・・・そうだ、起こせばいいんだ、戦争を、災厄を。
人間どもの中から役者を決めて、どこかの星のテレビドラマのように、眺めていればいいんだ。』
こうして彼は、人間を作った時以来のわくわくを胸に、演者達に目印を付けに行った。
8の月27の日 名称不明の森
さくっ。
その音と共に、口の中にパイの香ばしさと、砂糖でじっくり煮込んだりんごの甘みが広がり、
思わず私はうなる。5月の森は暖かく、
隣人であり友人のウノが作るアップルパイは、そこらへんのパン屋のそれよりずっと美味しい。
隠し味が入っているらしいのだが、ウノは絶対に教えてくれない。
ウノの大好きなミルの実を交換条件に持ちかけたって、ウノは彫刻のように黙りこくるばっかりだ。
なにが言いたいかと言うと、ウノの料理にかける情熱は並大抵ではなく、その腕も相当のものだということだ。
ついついハタナギ師範と約束したおやつの時間をこえてしまうというものだ。
手に残るパイの残骸を名残惜しくおもいながら、渋々顔をあげると、外見年齢40歳、実年齢100の化け物の姿が目に入って、
めをそらした。
「おい、ケイン。約束の30分は過ぎたぞ.....ノルマ追加だ」
ハタナギは木々の隙間から音もなく現れ、死刑宣告を言い渡す。
そんなことしたら、今日の晩御飯のシチューが!
せっかくウノがつくったのに、冷めちゃうじゃないかっ!?
短い