公園で
公園でサトは安奈と話をする。熊五郎たちが優しく見守る中で
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公園はまだ明るかった。
陽介にメールで呼び出された安奈がそこに座っていた。
「よう、もう具合いいのか?」
こくんとうなずく安奈。
赤いジャケットは薄地で、顔色も良く映った。
小さい身体は、それでもいつもよりシャンとしているように見えた。
砂場に隣接している木でできたベンチと動物の形の背もたれのついた作り付けの椅子が何個か並んでいる。
昼間は砂場で遊ぶ子どもたちを見守りながら、ママ友たちがくつろぐスペース。
「サトに、ちゃんと気持ち伝えられるか?」
熊が安奈に優しく声をかけながら座る。
こくんともう一度うなずいた。
サトは安奈の目の前の椅子に座る。
コンクリートでできた椅子はヒンヤリして熱い身体に心地よい。
「自分の気持ち、言葉にしてちゃんと言えなくて。もどかしくなるの」
安奈が小さい声。
「知ってるよ、だからずっとそばにいたんだ。だけど、それをいいことにあたし、安奈の事」
サトも小さい声だ。
「わたし、サトちゃんから離れても一人で普通に生きて行けるようにならなくちゃいけないって」
安奈はどんどん声が小さくなる。
「知ってる。それを、あたしが邪魔してたんだろ?」
ゴメン、サトが謝った。
「違うよ!わたしが独り立ちできなかっただけだよ」
声が大きくなる安奈。
足音が聞こえた。
みんなが振り向くと、学が立っていた。
「お、遅かったな」
熊があごを上げて学を促す。
頷いて学は話の輪の一番遠くのキリンの形をした椅子に腰かける。
湿気を含んだ風は生温く、それぞれの間に吹き抜けてこれからの天気を予報していた。
また、雨が降って来るかな。
サトは空を見上げて、息を吸い込んだ。