サトの疑問符
安奈と学の笑い声に美奈香の騒々しい声が混じって部活が始まる。
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「やっぱ、完璧じゃね?」
高松翔が窓の下にいる安奈と学が仲良さそうに話してるのを見て呟く。
「サトちゃんは、それで納得してるんでしょ?」
新城陽介が笹塚熊五郎の顔を見る。
「ま、な」
階下ににぎやかな別の声が響いてくる。
安奈と学の間に美奈香がピョンピョン跳ねている。
「あいつを何とかしてほしいらしい」
熊五郎が眉間にしわを寄せる。
「まあ、悪気はないと思うけどね」
陽介がメガネを押し上げる。
「別に二人とも嫌そうでもないんじゃね?アクセントあっていいじゃん」
翔は肩にドクロの入ったTシャツだ。
「なんとかしろったって、あいつ動かすの難しいよな」
熊がため息をつく。
「人に左右されないからね」
陽介が真っ白い歯を見せて笑う。
「別に今のままでいいんじゃね?」
翔はのんきな顔でニヤリとほほ笑む。
「美奈香は食べ物でしかつられねぇし、なに考えてんだかな?わっかんねぇとこあるし」
熊五郎が生徒会室に歩き出しながら頷く。
「確かに」
「そうそう」
二人とも後に続く。
窓の外からは大きな笑い声が聞こえてくる。
美奈香だけじゃなくて、安奈と学の声も混じって聞こえていた。
楽しそうな笑い声は、そのまま校庭に移動してゆく。
「サトちゃん!」
大きな声で声をかける安奈に
「あ」
答えた声には元気がないサト。
騒がしい美奈香のしゃべり声に
きっとこうやって、あたしの存在って曖昧になっていくんだな。
あたしは自分の存在価値をちゃんと考えなくちゃいけないのかな?
答えのない疑問符に、サトの頭の中が整理されないまま部活は始まった。