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神と妖と人の物語  作者: 月ノ宮
7/11

7話

アレス様、何処に行ったんだろう。森の方角へ影が消えたから、来てみたけれど、人の気配はまるで無し。此処ら辺は妖怪達も居ないから、聞きようにも聞けないし……


僕は溜息を吐きながら森の奥へと足を進める。本当に彼の人は、軍神アレス様だったのだろうか。なら、イタリア人ではなく、ギリシャ人だったかもしれない。


外国人の見分けが付かないんだよな。僕は再度辺りを見回し、かなり森の奥深くに来ている事に気付いた。そろそろ引き返した方が良いかな。


そう思って踵を返すと、頭上でガサッと草木が揺れる音がした。振り返ると、黒い影が見えた。けれど、太陽の光が反射して、顔がよく見えない。其の影が木から飛び降りると同時に、


「危ないよ!」


と制止する叫び声が聞こえた。


影……多分人だと思う。唖然とする僕の前に着地した。そして、其の人が顔を上げて漸く表情が見れた。如何見ても日本人じゃない顔立ちで、紺みたいな髪色に、蒼い瞳。


背が高く、鼻筋も通っていて、美しい容姿をしていた。此れが所謂美青年か……なんて考えて居ると、もう一人が木から飛び降りて、男の人の隣に着地した。


其の人も顔立ちが端正の金髪碧眼で、最早人間とは思えない美しさだった。だが正直言って面倒事になりそうな気がしてならない。……見なかった事にしてアジトに帰ろう。


そう思ってそそくさと歩き出した。が。


「おい待て」


声を掛けられた。無視しても良かったが、そうしたら僕の何かが終わる様な気がした。振り向くと、此方を凝視している男の人と視線がぶつかる。というか、此の二人は此の森で何をしていたんだろ。


何もない小さな森なのに……


「あんた、日本人か?」


何を聞かれるかと思えば日本人か如何かだった。


「そうですけど……」


てか、日本語喋れるんだ……


「道に迷ってな。一緒に来ていた仲間ともはぐれたんだ」


ふーん。ツレが居るんだ。すると、男の人の隣にいる一寸小柄な金髪の男の人が、困った様に笑い、事情を話す。


「彼と近道しようとして森に入ったら、見事に迷って。辺りには誰もいないし、困っていたんだ。良かったら、道を教えて欲しいんだ」


まあ、其れくらいなら構わないけど……


「目的地は分かってるから、街に出られれば問題ない」


そう言うから、僕は二人を森の出口まで案内した。二人を森の出口まで案内する間、僕は気になっていた事を質問する。


「あの、此の辺りで全身黒ずくめの男の人を見かけませんでしたか?」


そう聞くと、二人は頸を傾げ顔を見合わせる。


「そんな奴、見たか?」


「さあ、記憶に無いな……」


二人共見ていない様だった。


可笑しいな。確かに此方に来たと思ったのに……歩みを進めると、道に出た。


「此処が出口です。何方に向かわれるんですか?」


紺色の髪を持つ男性が答えた。


「祓い屋をやっている、道真という男に会いに行くんだ」


其の名前を聞いた途端、ドクンッと心臓が跳ねた。いや、落ち着け。妖怪に悩まされて、道真さん達に相談しに来た人達かもしれないし。


でも、如何見ても外国人っぽい此の人達が、妖怪と関係或る様には思えない。其れに、変だ。人に流れる霊気が全く感じられない。


何方かというと、之は……


「世話になった。ありがとな」


ハッと意識を戻すと、二人は既に歩き始めていた。……まあ、僕には関係ないし。面倒事にならなくて良かった。


……ただ、彼の人達に流れる神気が気になるけど。しかもその神々は滅びたはずの北欧神話に登場する農業の神フレイ様とトリックスターであるロキ様だなんて。


「触らぬ神に祟りなし、か……」


僕はアレス様を探すのを諦め、アジトに戻る為歩き出す。フレイ様とロキ様に会った事、ボスに報告しないとな。若しかしたら道真さんに協力を煽られるかもしれない。


「もう千年か……」


‟竜の巫女”が絡む事案じゃなきゃ良いけど。僕はこれから起きる未来を予想し、深いため息を吐いた。


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