表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

神様のミスでトラックに跳ねられて死んだ際にすべき事

作者: 真・司法転生

 そこは死後の世界。

 俺は神のミスでトラックに撥ねられて死ぬという、いつの間にか定型文と化して二次創作や転生系ノべルで濫用されるようになった導入手口によって殺されてしまった。という訳で俺はとりあえず神――女神だ――にちょっといちゃもん付けることにした。


「自分さぁ、ホントに分かってんの?冷静に考えてみ?神のきまぐれでトラックに跳ねられて死ぬってさぁ、死んだ本人と同じぐらい轢く係にさせられたトラックの運ちゃんが可哀そうだろ?」

「はい………」


 神の代理人として人を殺させられ、そして罪は全て被せられる。道徳的に考えてこんなに酷い話があるだろうか。弁護士も法律も裁判官も神様のことなど認知してくれないし、当人が気付かぬうちに罪を擦り付けられている。この状況こそ悪辣と言う他ない。


「人を轢いて殺すのよ?自分の意志に関係なくよ?業務上過失致死とかの罪をつけられて、警察に捕まって、職を失って家族を路頭に迷わせ、遺族に恨まれ、眠れぬ夜を過ごし、ご近所さんからは『あのお宅の旦那さん人を轢き殺して捕まってるんですって、やーねー人殺しの家だわ』とかあることないこと言われてさ」

「はいぃ………」


 自分の親がどんな反応をするかは俺には分からない。でも、交通事故で子供を亡くした親は、例え子供に多かれ少なかれ過失があったとして、犯人を容易に許すことなどできない。それは理屈ではなく感情の問題であり、どんなに謝られたとて既に取り返しはつかないのだ。


「罪を償って戻ってきても、一生前科が付きまとってまともな職に就けないなんてことだってあるのよ?気まぐれなら俺を殺して、なおかつトラックの運ちゃんの人生狂わせていい訳?それで死んだ側だけ転生させまーすって筋が通らねえだろ。まず運ちゃんの補償が先だろ。おいどうなんだよそこんトコロよぉ」

「償います。私が償いますぅ……!トラックの運ちゃんも私が救いますぅ……!!」


 最初の方こそへらへらしていた神様も今や形無し。

 どこで覚えたのか情けなく土下座する神様に、俺はため息をつく。


「分かればいいんだよ、分かれば。じゃ、俺はまず運ちゃんの補償がしっかりされるまでここを動かないし転生の話も聞かねえぞ。どうカタつけるのか見物する」

「ひぃぃぃぃ………!」


 なんかすごく気弱な神だな。でも駄目です。責任はしっかりとらないといけません。

 神様は補償について考えに考えた挙句、俺の存在を世界の因果律から消すしか誰も傷つけない方法はないという結論に達して「ごめんなさい許してくださいこれしかないんです!!」とまた土下座した。しょうがねえ、俺は死んであっちには戻れない訳だし、運ちゃんの為にあっちの世界からは消えよう。


「ほ、本当にいいのぉ……?生まれたこと、やったこと、友達家族の記憶からも一生いなくなっちゃうのよ……?」

「なに、本当なら死んだら終わりなんだぜ? 死後に運ちゃんを救えるなんて素敵なことじゃねえか」


 自分の命で人の人生を一つ。決して安くはないが、それで運ちゃんが救えるなら安いものだ。

 そう言い切って微笑むと、神様は言いにくそうに口をもごもごさせる。


「どうしたんだ」

「えっと、あの運ちゃん無免許だよ?トラック盗品だし、借金しててアル中で奥さんにDV振るってて子供虐待死させて余罪いろいろあって、この後警察の調査を振り切って逃げ切るぜーってヘラヘラ笑ってるんだけど、本当にそれでいいの……?私のミスで貴方を轢いたとはいえ『このおじさんは人を轢く運命にあった』ってことでもあって、このおじさんやり直された世界でも絶対だれか轢くよ……?もちろんこれからも」

「すまん、訂正する。俺の代わりにそのおっさんを今すぐ地獄に堕としてくれ」


 世の中、本当の本当にどうしようもない奴もいるものである。

 なかなかどうして、みんな幸せな世の中というのは作れないものだ。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 途中までいい話だと思ってたのにw [一言] 異世界転生テンプレだけど、何をどう間違えたらトラックで事故死になるんだろう。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ