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守るために必要なもの 作者:五条 雄二
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 自分がこれだけ無力だと感じたのは初めてだった。
 ここまで育ててくれた両親はもういない。最後まで「お兄ちゃん」と呼んでくれた妹もいない。
 血に染められた手のひらを見つめながら思う。
 なんで守れなかったのかと。最後まで守られたばっかりだったなと。
 頬に垂れる水が涙なのか、雨なのか分からない。それでも雨は降り、悲しさも後悔も止むことはない。

 「悔やんでも悔やみきれないか?」

 その中、話しかけてくる男がいた。

 「守りたかったか?」

 雨でも聞こえるように近づきなら言う。

 「その傷はとても痛いか?」

 まだ血が流れている傷に触れる。

 「強くはなりたくないか?」

 声を落としながら言う。

 「――悔しいよ。守りたかったよ。痛いよ、強くなりたいよ!」

 出せるだけの声を出してやる。

 「なんでこんな弱いんだ……。こんなんじゃ何にも守れない、事実何も守れなかった! クソ、クソォォォ!!」

 父の背中が、母の顔が、妹の声が無力感を強くさせる。

 「なら強くなればいい」

 男は帽子をとり、白髪を雨にぬらす。

 「俺は、久慈 恭雅。恭雅で構わない」

 そして手を差し出す。

 「強くなりたければ来るんだ。俺が鍛えてやる」

 差し出された手は白く、弱そうに見えた。しかし声に込められていた力は本物で、何か安心させてくれるものがあった。

 「俺は……、雅人、稲越 雅人だ」

 すでに傷はふさがっており、血は流れていなかった。
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