下編
「お客様、すみませんが…スープバー飲まれてましたよね?」
「あ、あぁ…」
コミュ症と思われるかもしれないがただ単に人と話すのが苦手なだけの俺は口ごもりながら頷く。
「当店、セットに付いているのはサラダバーとライスバーのみとなっております」
常連の俺がついこの間の半年前に来た時は確かにセットに付いてた筈だ。
だがこれは困った。
正直言うと手持ちが無いのだ。
「す、すみませ…」
「お客様、以前も同じことされてましたよね?」
「いや、あの…」
まずい、これはピンチだ。
その瞬間俺の目は店内を泳ぐ…
まるで漢字テストで壁の何処かにその漢字が書かれてないか探すように店内を巡った目が起死回生のそれに辿り着いた。
『平日ランチタイム特典!セットにスープとドリンクバーが無料で付きます』
これだ!
確か昼ぐらいに俺は店内に入った筈だ!
しかもこれなら砂糖盛り沢山のブラックコーヒーも無料と言うことになる!
「付いてるやん…」
「お客様?」
「付いてるやんこれ!ランチタイムはスープとドリンク無料で付くって書いてるやん!」
俺は態度を一転して怒鳴るように告げる!
水を得た魚の様に弱気な態度は消え去りドヤ顔で店員にポスターを指差して告げた!
「はぁ…お客様…」
「な、何だよ…」
俺の返答に対して店員は後ろの壁を指差す。
いや、店員は時計を指差しているのだ。
そして、俺は借りてきた猫のように大人しくなる…
そう、現在時刻は14時半。
その横には『ランチタイム11:45~13:00』と書かれていたのだ。
まるで見下すような態度で胸を張る店員に拳に力が入る。
この真剣ゼミで鍛えた拳を振るうのは赤ペン先生に禁止されているが、このままでは俺の怒りは有頂天になってしまう。
だが問題は支払い金額が足りないって事だ。
俺は食い逃げをしに来たのではない、飯は美味かったので正当な対価は支払いたいのだ。
(ん?)
そこで俺は気付いた、気付いてしまったのだ。
そう、カウンターに置いたままの伝票に記載されていたのだ。
『12:59』
再び俺はパセリを食べたポパイモードになる!
「間に合ってるやん…」
「お客様?」
「間に合ってるやんこ!!伝票に時間書いてあるやん!頼んだ時ギリギリセーフやん!」
「っ?!」
「どないなってんねんこの店は?!」
「お、お客様どうなさいましたか?」
「ん?あんた店長か?いやなぁ…」
こうして俺は店長に一連の流れを伝え謝罪と共に次来たときに使える割引クーポンを受け取り帰路に付いたのであった。
その時の俺はまだ気付いてなかった。
手にしたクーポンの使用期限が来月末までと言うことに…
完
まぁなんだ…
適当に思い付きで書いただけなので深い突っ込みは無しの方向で…おやすみ!(笑)




