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最初の巻 宇宙と戦争と招聘令状!?①

遊びながら楽しく書いていきたいです。

目標は戦闘シーンを思いっきり書くこと。

主人公、暴れます。(予定)


 ――時は、生物たちが進化を遂げ、広大な宇宙に飛び出していって千年余り。

 宇宙はそれ自体を舞台にした、歴史的に類を見ない戦争が繰り広げられる時代となった。

 複数の星々を抱えた星系同士が覇権を巡って争う時代である。宇宙に進出後、進化を遂げた人類は、生物進化--宇宙進出の起点となった主星を含む星系、通称”中央星系”と、遥か宇宙の果てに移民たちが築き上げた文明で発展した”辺疆星系”に基盤を据え、それぞれの星系に属する星々に住まい、発展を遂げることとなった。また、中央星系には主星という宇宙全ての生物の聖地としての星を抱えており、中央星系の政府は宇宙における中心という地位を明確に打ち立てた。

 これに異を唱えたのが移民たちの集う辺疆星系である。宇宙に進出し、文明の発展を遂げたのは辺疆星系の功績であるとして、聖地を含む中央星系を軸とした政府に対し、宣戦を布告。これがきっかけで世界最悪の大戦の幕は開けた。以降、両者の宇宙での戦は激しさを増している。


 そんな宇宙の片隅の、中央星系の辺境惑星である惑星ホルス。

 彼女の物語はここから始まった。


***


 ――中央星系、ホルス惑星。それは中央星系において最も主星から遠く、辺境の星とされる惑星の一つである。

 惑星のほとんどは砂漠に覆われており、宇宙から見れば褐色の大地に見える。しかし、褐色と対照的な緑の広がりが見えるのもこの星の特徴だった。

 この森林地方はラップランドと呼ばれ、水と木々に満ちたそこはホルスの人々の自然崇拝における聖なる地として大切にされていた。惑星ホルスの首都からは、広大な砂漠を越えなければならないため、巡礼者は数少ないものの訪れがあるという、いわば果ての楽園ともいえる。


 ……その、ラップランドの森奥深く。

 木々の間、草の根をかき分けるようにして素早く駆け抜ける。音は立てない。息も殺して最小限の草の揺れる音だけを頼りに追随する。遠く、その影をとらえることができる程度の距離を置いて、フローラは急激に速度を殺して地に伏せた。それと同時に猟銃を低く構える。

 心臓が激しく動くが、呼吸は変えない。汗がこめかみを伝って手の甲に落ちる。だが、動くのはいけない。獲物を逃がさないためだ。

 森は深い。木々に覆われた天蓋のせいで、薄暗いこの地はひんやりと湿った空気に覆われていた。人の侵入を拒むかのような背の高い草が地に広がる。フローラはその中に埋没するように寝転がって、猟銃を構えていた。もう少しだ。追いかけてきたはずの足音が消えれば、安否を確かめつつも、きっと出て来る。

 ……長い耳が、かすかに揺れて見える。出てきたようだが、焦ってはだめだ。握りしめた猟銃の引き金が汗で滑りそうになるのをこらえて、その出番を待つ。湿ったような地面が胸に沁みる。

 獲物――兎は、そろ、そろ、と一歩ずつ踏み出してこちらを向いている。さっき音を立てて追いかけてきた、その主がいないかどうか、確かめているのだ。ここで決して、音を出してはいけない。


 ――空気に同化したような自分を想像するんだ。

 父の声を思い出す。フローラの呼吸は限りなく浅くなった。

 ――そうすれば、照準は自然と定まるからね。

 意識せずとも、自然と銃口は兎の方を向いた。

 兎が左の方を向いて意識をそらす、その瞬間。

 フローラは思い切り引き金を引いた。

 破裂するような銃声音と共に、兎は地に倒れ伏したのだった。


***


 森を抜けてしばらく。木々の暗さが後を引くこの近隣にフローラの家はある。木造の小さな小屋だが父娘で暮らす分には十分な広さである。

 だった、というのは、半年ほど前、父が森の奥で倒れてそのまま息を引き取ってしまったからだ。自慢の父だったが、心臓の発作が度々起きるようになっていたのに、森に入ったことが原因だった。この辺境惑星と呼ばれるような星では、確かに医療技術も聖地と呼ばれる主星には到底追いつかない。しかし、それでもこの星の首都で治療を受けるよう、フローラは説得をしたのだが、あの頑固親父。


 それでも一人での暮らしにはもう慣れた。森も近く、元々父親が不在の間は一人で過ごすことも多かったフローラだ。森から離れた小さな町には知り合いや友人もいるが、それでも頻繁というほどの頻度で顔を合わせることもない。

 今日も夕飯の支度が億劫だから、もう寝てしまおうか。しかし兎を解体するのが先か。などと呑気に考えながら家に戻ると、そこには人影があった。

「アリア! 来ていたの」

 黒髪の長いお下げを揺らして振り向いた少女は、年の頃は十六、七、の褐色の肌に勝気な釣り目が似合う。要はフローラの友人でもあり、幼馴染でもあるアリアだった。彼女は森林に巡礼に訪れるものを歓迎する森付近の小さな町の宿屋の娘だった。

 アリアは容姿にそぐわない、かわいらしいレースに縁どられたワンピースを翻してこちらに向かって走り寄る。

「たーいへん! 大変よ! フローラ! 一大事!」

「はいはい、一大事一大事。フローラにかかれば何でも一大事になるからね」

 アリアの一大事は月に一度ほどは起こる。フローラは肩から獲物をぶら下げていた棒を下ろしてやんわり笑った。

「またそんなへにゃ顔で笑って!」

「へにゃ顔って何、へにゃ顔って」

「その、のらりくらりと面倒くさいことを流そうとする碌でもない顔よ」

「ひどいなぁ」

 フローラはまた同じ顔で笑った。面倒くさい。

「言ってろバカ者! 主星軍からフローラに手紙が来てるのよ!」

 うるぁ!と頭突きでぶつかってきたアリアの頭は、ちょうどフローラの肩ぐらいの高さだった。


「いたた、ほら、落ち着いて」

 思わずかわいくて撫でてしまう。

 しかし主星軍とは恐れ入る。はて、主星軍とはなんぞや。フローラは目を細めて首を傾げた。

 主星軍とは宇宙広しといえど一つしか知らない。聖地主星に属する軍事組織――それが主星軍だ。


「……って主星軍ん!?」

「驚きすぎでしょ!目を剥かない!」


 とにもかくにも、開封してみることになったのだった。


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