漆の世界①
漆の世界――カミサマの話――???にて
予想外だ。いや……想定外と言うべきか。
既に次元の扉は管理下にあったはず。にも関わらず、今回、特異点が現れた。
「魔族」と名乗ったイレギュラー。全体として見れば、この世界での実力は中の上から上の下。魔法や魔術を用い、身体能力自体も低くはなかったとはいえ、厳選された世界の守護者には及ぶべくもない。
しかし……そう、しかしだ。奴らを率いたあの「魔王」という存在。やつの実力だけは完全に桁違いだった。一時は「極光の勇者」をも完全に圧倒し……おそらくあのまま自由にさせ続ければ、攻撃を受けていた街だけと言わず、世界構成そのものを脅かす動きをしていただろう。
今回、迅速に無力化できたのは幸いであったが、いかんせん予測にないイレギュラーだ。油断はできない。先ほどの戦闘データを一刻も早く分析し、世界の守護者たちの強化に当たらねばなるまい。
だが、それにしてもあの能力は魅力的だ。やつが「魔王」の力を取り戻すことが可能であるならば、是非とも目的のために利用したい。使える駒となり得るかはまだわからんが……手元に置いておいて悪いこともない。やつ自身が魔王として再臨できずとも、いっそあの力だけでも抽出できれば良い。
破壊神と魔王。奴らの能力を克服した暁には、我の計画は更なる進展を迎えることになるだろう。
ふむ。そう考えると実に面白い。『血を求める女神』も随分と活きの良い生贄を連れてきたものだ。トントン拍子で進む中、たまには不確定要素があるのも悪くない。




