神樹の森:8
おはようございます。黒い尻尾を首に巻きつけ金色の尻尾を抱き締めている目覚めたばかりの環です。只今絶賛混乱中。
「じぃ~じ?ココめぇ~?」
モフモフ天国から一転清々しい寝起きもビックリで金の国か黒の国へ行くかとお爺ちゃんに聞かれました。お爺ちゃんの側に居ちゃダメなの?お爺ちゃんと離れたくない!若干涙目はご容赦ください。幼いだけに感情を抑えられないみたいで、いつかは人の社会へ行かなければならないとは思ってましたが今からだとは思わなかった。もうしばらくはお爺ちゃん達と楽しく暮らしたいです。
お爺ちゃんの蔦がボクを抱き上げようとします。尻尾を放してお爺ちゃんの蔦へ抱きついて離れたくないのだと全身でイヤイヤを伝えます。もう少し大きくなるまでココに居たい。もちろん将来のムスコ無双の目標は変わっていないけど、もう少しココに居たい。離れたくない。
「泣かんでえぇ~聞いただけじゃ。ココに居たいなら居たいだけおれ。じぃーじもその方が嬉しい。しかしな環、お前さんは人の子じゃ。いつまでもココでは暮らせん。それは判るか?」
優しくあやされながら言い聞かされます。お爺ちゃんの言う事は理解できるし、いつかはそうなるだろうと予想はしていたけど、でもそれでもボクの心が今はここに居たいのだと訴えるんです。
「じぃ~じがいい。じぃ~じちゅき。ここちゅき。じぃ~じぃ~…うっうううわぁ~ん」
とうとう涙腺決壊。玉と琥珀も手伝ってくれてお爺ちゃんにしがみ付きます。自分でもわんわん涙が止められない。
モフモフよりお爺ちゃんがいい。ずっと相手をしてくれて悪い事をしたら何がいけなかったのか赤子である自分に丁寧に説明して叱ってくれる。前世の適当に相手して放置とは大違いの一対一で会話し大切にされている今がとても好き。他の妖精さん達も同じでいつも気にかけ優しくしてくれダメな時はダメだと叱ってくれる。
これが家族かなって森の皆が家族なんだと感じてて独り立ちには早過ぎで心の準備も何もない。もう少し大きくなって自分の事が自分で出来て他の人と会話できるようになるまでは見守ってて欲しい。
「えっぐ、う~う~、えっぐえっぐ…」
お爺ちゃんにしがみ付いて離れないぞと言いたげに眉間にしわを寄せて唸ってます。大粒の涙は止まったけど完全には止まらない。対するお爺ちゃんは大泣きしてイヤイヤするのが嬉しいみたいでデレデレしながらも引きつけを起こす寸前まで感情を爆発させたボクが少しでも楽な体勢になれるように自身の蔦で調整している。
「じじぃ~冥利に尽きますじゃ。ふぉっふぉっふぉ。環やじぃ~じも環が大好きじゃぞ。もう少し大きくなるまでは居たいだけココに居ればえぇ~大きくなったら自分から外へ行きたくもなるじゃろうて」
ゆらゆら、ゆらぁ~り、ゆらぁ~りお爺ちゃんにあやされます。本当にお爺ちゃんとまだまだ一緒に居て良いの?落ち着いてきたボクに言い聞かせるように優しく語りかけるお爺ちゃん。いつまでも続けることが出来ない今の生活を理解しつつも別れの時が来ない事を望んでいるのだと話してくれる。
「悪かったな。これほど嫌がるとは思わなかった。早熟にみえてもまだまだ赤子だな」
「仕方ありませんね。闇守様へも今は引き離せないとお伝えいたします。ですが3歳の守護の儀には必ず黒の国へ来て頂きます。闇守様が守護を与えたいとのことですので」
「あぁ~うちの金の国にもな。3歳の守護の儀の守護を光守様も与えたいと仰られていた。特殊な色を纏うなら守護は多い方が良いだろうとのことだ」
今しばらくは森へ預けるが3歳には闇と光の守護を得る為に人の世へ連れて行くことが決定した。実は他の国の守護獣からも守護を与えたいとの連絡を受けているが幼子に無理をさせてもいけないからと次の5歳か7歳の守護の儀にでもと連絡を受けているとお爺ちゃんが教えてくれた。
本来は3歳5歳7歳のどの歳かに住まう地の守護獣に一度受ければ良いだけの守護の儀を全ての年齢で全ての属性の守護を受ける事がいつの間にか決まっていた。それぞれの国でボクの取り扱いについて注目されていて各年齢時に二カ国で守護の儀を受ける事となった。
あり得ない色彩を纏う人の子。吉凶どちらかを示す存在なのか否か。存在自体を疑問視されているが精霊達により守られているので悪い者ではないだろう現在観察中とされている。一度は直接会ってから判断を下す。もし悪しき存在であれば国の為にも多くのこの地に住まう者達の為にも排除しなくてはならない。それが守護獣としての役割。
神山からの守護されている地から人は出られない。外の世界では脆弱な人は生きられない。その為守護内での安全確保が重要な勤めとなる。守護の強化と守護内の安全確保が守護獣の役目。代替わりはあれど役目は変わらない。
紅さんと黎さんが守護獣の役目と共に決定事項を教えてくれた。