赤と青の国:8
やはり長くなりました。
一部残虐(個人的認識)シーンがありますので苦手な方はお気を付け下さい。
毎回、投稿する前にチェックしてOKだと思っても投稿後に再チェックすると間違いが見つかるのは何故?余裕がある時は投稿後にも時間をおいてチェックできるんだけど…
到着から数日、赤の国にも少し慣れ守護の儀を翌日に迎えた朝、気温はそれほど高くなくとも目に入る光景の為か暑さを感じ邪魔だなぁ~と鬱陶しくなっている自分の髪を摘み上げる
髪が随分伸びたので髪留めが切実に欲しい。長いのは手入れも面倒だからと切ろうとすると森の皆に止められ一度も切ることなく現在に至る。腰近くまで伸びた銀色の髪は玉を筆頭にヤイヤイもしくはワイワイ皆で手入れしてくれているので枝毛や切れ毛一本なくサラサラ艶々でとても手触りも良く綺麗だ
細くて長い髪はすぐに絡まるし紐で一つにまとめようとしてもサラサラ過ぎて解けてしまい纏まってくれない。苦肉の策でターバンのように布を巻いて凌いでいるがココでは見た目的に給食当番のように見えるので人前で使おうとも思えない。行動範囲が森の中なので草木や枝に引っかかり放題で風で舞う細かいチリもくっつき放題で大変だったりするが、どれほど訴えても短髪は許してくれない。
昔はくせ毛で湿度の高い雨時には暴発しているかのように見苦しく面倒だったからストレートの髪に憧れたけれどストレートはストレートで大変なんだと手入れを自分でしていなくても日々実感する
というか自分で手入れしてもダメ出しされるし最近では自己流手入れは禁止されていたりする
絡まった部分を切ろうとしたのが見つかったのが運のつき
邪魔でどうしようもない時は琥珀に髪に絡まってもらってアップ状態にしている。まぁ~これでも良いかなぁ~とか思っちゃうんだけど琥珀が髪に絡まっているだけなので頭はぐちゃぐちゃで、その後のお手入れに物凄く手間暇かかり長時間動けなくなるので最終手段だ
守護の儀が終われば外出も自由だからバレッタみたいな髪留めが無いか武具と一緒に探してみよう。無ければ大まかな造りは覚えているし鍛冶師にでも依頼してみようっと
心躍らせウキウキとアレコレ考えながら紅さんや黎さん蘇芳さんを巻き込みお買い物ツアーの予定を楽しく計画し平和で長閑な一日を過ごした
10センチ位の高さから2メートルほどの高さまで炎の高さは様々
しかし突然複数の炎が高く舞い上がり何かを捕え包み込んだ
深夜悲痛な叫びで目が覚めた。正確には聞こえたように感じただけで発生源は玉。伝わってくる強い怒り?違う!?深い辛さを伴った哀しみ!!
「玉?」
こんなに胸を締め付けられるような焦げ付くような強い感情を感じたことは今までになかった。常に感じるのは緩い喜びや楽しいといったものだったのにマイナス、それも身を切られるような痛みを伴う辛さを感じるほどの強い思いは今までにない
肉体をもたない玉は持たないが為により一層辛いのでは?
そんなことを思っていると玉の視覚でリアルタイムの映像が視えた
声にならない叫び声の様な呻き声と苦しみ悶える様に揺れる炎に包まれた人と思しき影
大きな炎の揺らめきの中、足以外の全身で苦しみを訴えるかのように、うごめくも覆うように炎が動き逃れられない。漂う異臭をも感じながらも末端から徐々に炭化し崩れ落ち最後には塵となり巻き上がる風に取り込まれ全てが焼失する姿を最後まで見続けることとなった。
否、目を瞑っていても視界を遮る事は出来ず見続けることとなってしまっただけだった
「た…たま?」
あまりの出来事に映画を見ているような現実感を伴わない状況に思考がストップし、うわごとの様に玉へ呼びかけるが反応すら感じられない
側にいると感じられるのに反応が無い
そう
自分の側には玉がいる
でも先ほどの火の側には玉はいなかった
いなかったのに視えた
驚き過ぎると言葉は出ず思考も止まるのだと初めて知った
衝撃的事象は全ての時間を停止させたように感じた
どれだけそうしていたのか、いつの間にかそばに紅さんと黎さんが両側から手を握ってじっと気遣わしそうに見つめている
「こ…うさん?れい…さん?」
何故いるのだろう?
どうしてそんな目で見ているのだろう?
あれ…?
上半身を起こしたままの状態で掛け布の上が濡れており、それは今もポツリポツリと水滴が落ち濡れ続けている。ポツリポツリと蛇口の壊れた水道のように水滴が止めどなく落ちてくる
水?
温かい…
涙?
ボクの涙?
ボクの涙!?
紅さん黎さんだけでなく玉と琥珀はピッタリくっついて離れるものかといわんばかりに張り付いている。いつもは温かい光に包まれている玉なのに、まるで切れかけの電球の様な弱っているように見えるのは気のせい?
「環…大丈夫か?」
声を潜めてそっと下から見上げ目の奥までも心の奥まで見逃さないように見つめ声をかけてくれる紅さん
「私たちがいるのですから大丈夫ですよ。何も心配することはありません」
絶対的な味方だから安心しなさいと優しく微笑んでくれる黎さん
二人の優しいさに先ほどまでとは違った意味で涙がこぼれる
温かい思い
優しい気遣いが力をくれる
今だ自分の感情に翻弄されながらも、どうにか自分を保てそうだと少し心が落ち着いてきた。
伝えなければ…
最初に思った事はソレ
「あのね…さっき…ね。人が…たぶん人だと思うんだけど炎の中で燃えてなくなったのが見えたの」
玉と視覚を同調させることができることは転移の時に説明している。まさか見えない場所へ障害物があるかもしれない危険があるかもしれない場所へ転移することになるのではと危惧された時に話している
「玉がとっても辛いって哀しいって…ボク何も、本当に何にも出来なくって…うっっっ」
本当に不甲斐無い限りで玉にお世話になりっぱなしで何の恩返しもできない無力過ぎる子供でしかない事実。きっと玉の辛さの一部も理解できていないんだと思うと情けなくって自分に対して腹立たしくって心はグチャグチャに荒れ止めどなく涙が溢れる。燃えているのを見ているだけで助けることもできず呆然としてしまった。
転移できるのは行ったことのある場所だけなので見えた場所は訪れた事もなく分からない場所なのだから仕方なかったなんて言い訳だ。生きていれば助けることもできたはずなのに何もしようとせず見殺してしまった。
文字通り『見殺し』にした
ただ見ているだけで何もしなかった
いい年した大人の経験をもつ記憶があるにもかかわらず何の行動へも移せなかった。確かに消防へ通報できるようなシステムはこちらにはないけれど火守様へ伝えるなりなんなりできたはずなのに見たものの壮絶さに現実感もなくただただショックを受けて思考停止してしまった。
おまけに最初に心配したのは玉のことだけで次が自分の不甲斐無さだったなんて少し冷静になった自分で気づいた愚かな自分に絶望した
どこへ行ってもどこまで行っても生まれ変わってどれほどの努力を重ねても所詮は役立たずのまま。努力が報われるなんておとぎ話だと知っていたのに…
前世では呼び名の様に『役立たず!さっさと来い』と呼ばれていたっけ…
どんなに頑張っても所詮中身は変わらないのだから同じまま
どうやっても過去の自分のまま成長することもできないのかと深く深く底なし沼に囚われたかのようにズブリズブリと意識が沈んでいくのを感じながらも抗わなかった
いや抗えなかった…
『環』
『環や』
『たまき』
『タマキちゃん』
『タマキ』
『タマちゃん』
何も見えない聞こえない知らない感じない
何も考えたくないなのに…
聞こえる優しく呼ぶコエ。
こえ、
声。
だれ?
もうボクは…
どんなに大切にしてくれても愛してくれても何も返せないんだもの見捨てられ切り捨てられて当然の存在なんだ前みたいに…
大好きだから迷惑をかけたくないから、かかわらないで
ボクといると不幸になるから…
『環の思いがとても嬉しい。辛い思いをして欲しい訳ではないから気に病まないで大好きな環。ずっと一緒だよ』
包み込むように響く優しいたくさんの声と想い
どれほどの時間が経っていたのか気付けば外はうっすらと明るくなっていた。
暖かな思いに誘われるように、す~っと意識が上昇し周囲を見渡せば色とりどりの玉と抱締めるかのようにしがみ付いている琥珀と玉と琥珀により触れる事が叶わなくなっていた紅さんと黎さんは佇んで見守ってくれていた。
「あれ?ボク??」
と…途中から記憶がない!?えっ?えっっ??
「大丈夫そうですね環」
少し離れた場所から黎さんが優しく笑いかけてくれている。あれ?さっきも同じ様なことなかった?
「そっちへ行ってもいいか環?」
同じく少し離れている黎さんの横から苦笑しながら許可を求める紅さん。何で許可?
「え~っと、はい。大丈夫?ですよ??」
そっと姿勢を低くし目を合わせながら
「覚えていますか?目覚めてからのことを」
目覚めてからって今じゃなくって…?
「あ…あのよく分からないんだけど目覚めてからって?」
う~ん分からないけど何かあった?
謎だらけだ
「覚えていならその方が良いんだろう。どこか痛いところとか辛いところとかないか?無いならまだ早いし添い寝してやるからもう少し寝ろ」
確かに大きなベットだから3人でも余裕で眠れるし確かにまだ眠いけど何故に添い寝?
ふふっ嬉しいかもぉ~
バッ
一気に上掛けをめくってウエルカムです!
「どうぉ~ぞうぉ~」
川の字で寝るのかな?
ドキドキッ
えへへ玉と琥珀はボクの顔の横にくっついていることが多いし闇守様のモフモフ布団や紅さんや黎さん単体はあっても複数はなかったよビバ初体験!!
できたら両側からの二人(匹?)モフモフが良いかも!?
でもベットのサイズ的に難しいよね。
う~ん
「どうした環?添い寝はダメか?良いのか??」
「無理にとは言いませんので希望を教えて下さいね」
近くまで来てくれた二人をよそに悩みだしたボクに希望を聞いてくれる。ここは正直に希望を述べてしまおう
「あのね。二人のモフモフで寝たいんだけどベットに入らないなぁ~って」
「あぁ~そんなことですか。小さくもなれますから大丈夫ですよ」
ニコニコ微笑ましそうに言われちゃった
欲望に正直で正解だった!
「環は本当に守護獣姿が好きだなぁ~人は皆怖がるもんなんだがなぁ~」
こちらは苦笑しつつも嬉しそう。だって本体は獣姿でしょ?どっちでも同じかもだけどモフモフは最強なのですよ。
「さて添い寝サイズでしたね」
「そうだな環の希望を叶えてやろう」
きゃ~!!
普通の犬猫より大きいけど1メートルほどのサイズって抱き枕に最適
「モフモフ。ふふふ~きゅぅぅぅ~」
両腕の腕枕で抱締めて両側にお顔スリスリ二度寝です。
きゅ~
萌死ぬ!
ふはぁ~
幸せぇ~
癒しがいっぱいぃ~
夢の世界だぁ~
「眠ったか?」
「大丈夫のようです。ぐっすり眠っています」
それにしても驚いた。深夜突然精霊達が騒ぎ出した。今までに経験したことの無い波動のようなものを感じ急ぎ環の元へ訪れればベットの上で上半身だけ起こし焦点の合わない目でぼーっとどこかを見ながらただただ涙を流していた。
いくら呼びかけても返事がなく、二人で両側から片方の手を握り声をかけ続けていると一瞬だけ意識がこちらに向いて二三言しゃべった後はまたふっと意識が途切れ身動きしなくなった。
呼びかけ続けていたが精霊達と妖精が取り囲みオレ達を引き離しにかかった。特に害意も感じなかったので少し離れ見守っていたが精霊からの意識もほとんど伝わってこないし何が起こっているのかサッパリ分からなかった。
ただ部屋の外がバタバタと慌ただしくなり漏れ聞こえる声から炎により死者が出たようだった。目撃証言のみで死体はなく確認もできない状況の上証言者が深酒していたので幻覚かもしれない、といったあやふやな情報のようだった。
朝になれば行方不明者が居ないか調査するようで火守様も蘇芳も精霊達へと問いかけていたようだが詳しくは判明しなかった。というより問いかけに対し無反応。守護獣ですら精霊との意思疎通は不可能なので明確な情報を得る事も出来ないが何となくは伝わってくるはずで無反応などはありえなかった。
そもそも精霊達と意思疎通ができるなんて環くらいなもんだが死者についてとなると幼い子供に確認して貰うには非情だろう
いや、もしかすると知っているのかもしれない。幼い子供には衝撃的過ぎてこのような状態になっているのかもしれないと黎夜へ推測を伝えれば同じように考えていたようだ。
「可哀そうに…」
頭へ優しく鼻先を擦り付け慈しむ。本来こんなことをするようなヤツではなかったんだがオレもコイツのことは言えない。思わず反対側からオレもと匂いつけの様に親愛の情を示し鼻先をすりつける。本来の姿である獣姿を特に好んでくれることが嬉しくて稽古にかこつけて会いに行っている感もある。
やはり本性を厭われるのは理解はしていても人には受け入れられないのだと残念にも思っていた
どんな姿をしていても受け入れられるのは思いのほか嬉しく感じた。
そう「嬉しく」「感じた」んだ次代である存在であるオレが今迄からは考えられない感情を与えられた。環自身が異端だからか?いや異端という自覚はないようだから元々の性根なのか育った環境によるものなのか理由がどうあれ好ましい限りだ。おそらく黎夜も同じだろう。
「せめて今は幸せな夢でも見ながらゆっくり休め」




