表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/36

閑話1:闇守様の独り言

そろそろ森に着いた頃かしら?ここへ来た当初は森を出て初めてということもあってか森には無い色々な人や物に興味をみせたけどすぐに興味も無くしてしまったみたい。


幼子は好奇心旺盛で何かに強く執着することが多いと聞いていたのだけど、あの子は全く執着をみせなかった。


子供によっては人見知りをするとも聞いていたのに育った環境が特殊だったからか相手が精霊でも妖精でも守護獣でも人でも分け隔てなく態度は全く変わらい。


守護獣を前にすると人は本能的に怯え見えない壁を作るのだけど壁を作るどころか特に忌避される獣姿にはとても大喜びで懐いてくれたわ。大人でも普通は怖がって近寄らないものなのに嬉しい誤算だったわ。


できればこの国へ留め置きたかった精霊にとても愛でられし子、精霊の愛し子。守護獣会議でも議題として挙がっていた環の処遇。翁や次代である黎夜、紅輝から受けていた報告内容にどれほど驚いた事か。


精霊を手足のように使い森の妖精の依頼で森の環境を整え治療までこなした幼子。実際に会ってみれば本人を取り囲む精霊は見た事が無い程の高い密集度だった。


接してみれば純朴な性格で纏う色彩は異端とされる色彩でも入浴時に調べた体は至って普通の男の子だった。


治癒魔法を使う時に間近で見て判った事だけどアレは守護獣の単独属性魔法とも妖精の使役や精霊遣いのお願いとも全く違い全属性を体の一部と化しておこなわれた魔法。


私が重症者に与えようとしていた闇属性の安らかな死も、あの子が拒絶したことで闇の精霊達が私の手元を離れあの子の願いを叶えるべく死から眠りへ効果を変えた。既に発せられた魔法を後から上書きしてしまったのだと平静を装いながらも驚愕したわ。あの子は私が死から眠りへと魔法を変えたと思っていたようだけど私は何もしていない。精霊達の未知なる可能性に気付かされた瞬間だった。


幼い子供の国外への誘拐。子供達について調べれば誘拐される子供は守護の儀前の精霊遣いの素質ありの子供ばかり。


守護の外では力ある者だけしか生きられず強靭な肉体と高い能力による長命や近親婚による出生率の低下と人口減少が問題となっているらしい。守護獣は守護地を基本離れられないので確認する手段もないので精霊から伝わる不確かな情報だけが頼り。


最近各国で特に多発する子供の誘拐事件も恐らくは近親婚を防ぎ人口減少を改善する為のものだろうと会議でも話されている。精霊遣いの素質に幼い子供の順応力があれば外でも生きられるのではないかとの予想は見当違いな推測ではないと思うわ。


守護獣の務めは神山からの守護の強化と守護内の安全確保。守護外へは力が及ばず連れ去られるのを未然に防ぐことも難しい。


外では生きられない人が生活できる環境を整える力しかなく外で生きられるだけの強力な守護を与える力は無い。保って数分、これは守護の儀で付与された守護の力というより本人の能力によるところが大きいみたい。また神山からの守護も守護獣の強化も実は代を重ねるごとに弱まっている。


環に守護の要でもある宝珠に触れて貰ったのも守護の力を強化できるのではないかとの会議での推測を元にこころみた。可能性は低かったけど宝珠は少ないとはいえ力を取り戻し再び光を帯びた。


私の先代の守護獣時代よりも光は弱かったものの、それでも私の代になって光すら帯びなくなっていたよりは改善された。他の守護獣達も先代までの光は自分達の代で光が失せたと言っていた。


守護獣は次代へと引継いだ後には宝珠と同化して全ての役目を終える。生命体ではなく精神体に近い存在で生死といった概念は無く宝珠と同化することにより次代への記憶と力の継承をおこなう。


次代への引継は存在することに飽き存在意義が保てず希薄になる事により発生する。性別が交互になったり性格が違うのも在位期間を長く保つための工夫といえた。


変わり映えしない長い時を平和に重ねる為の秘訣のようなもの。そんな私達の前に現れた不思議な存在。刺激のない生活から一変させた存在。環の存在も行動も驚きの連続ね。


突然本人が希望し料理を始めた。3歳児に何が出来るのかと見守れば多々失敗するも精霊達の助けを借り食に頓着しない守護獣である私でも次を求めるような品を次々作りだした。


寝食を必要としない守護獣は人の生活に溶け込みやすくまた理解しやすいように人と同じ事が出来るようになっている。ただ欲は無いので自発的に求める事は無い。


そんな存在の守護獣に求められるような品を作り出す環。本人は現実逃避の暇潰し的に作業しているだけのようだったけどお裾分けを貰った人も作り方の教えを請うていた程の魅力ある料理。


そう、現実逃避で暇潰し。本人的には隠していたようだけど幼く根が正直なだけに全く隠し切れていない郷里への思い。


気付かない振りをして留め置きたかったけど黎夜が環のそんな様子に耐えられなかったようで翁の元へと送ると言い出した。


誰に対しても一線を引き深くかかわる事をしない黎夜が親身になり世話をする。次代とはいえ守護獣である黎夜に執着心は無いはずなのに環には自分からかかわろうとする。


物腰柔らかで優しく繊細に見えるけど本当は冷淡で大雑把な性質。守護獣としての役割の為に演じているだけで本質は人とのかかわりを極力拒絶している。今も環以外に対しては変わらないわ。


黎夜本人はそんな自分に気付いているのかしら?変質をもたらす可能性を秘めた環。できれば皆が楽しく幸せになる未来を祈っているわ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ