黒の国:2
おぉ~フェロモン美女!扉の奥には綺麗な女性がクッションに背を預け寝そべり微笑みを浮かべオイデオイデとボクを呼んでる。長い黒髪に金色の瞳、かなり深めに入ったスリットからしなやかな太腿を惜しげもなく露わにし香り立つような色気が凄い。守護獣に寿命の概念は無いから本当の年齢も判らないけど20代後半くらいに見える。こちらをしっかりロックオンしているその眼差しは獲物を見る捕食者のソレに似てる?
とりあえず美女のお呼びとあれば無双を目指すボクの行動は一つ!
「はぁ~い」
両手をあげて笑顔でお返事しながらトテトテ一直線に美女に近付けばムクリと起き上がり一気に距離を詰めギュッとボクを(捕獲?)抱きしめた。
「む…うぅ~」
かなりの怪力にビックリ。抱きしめられて着やせするタイプだと判明。胸のボリュームがかなりあって苦しいけど柔らかくて気持ちいいし良い匂いがする。胸の柔らかさからも肉体年齢は二十代後半から三十代前半かな?
前世の小さいながらも胸保持者なボクが思うにお胸様の硬さはある程度年齢と比例する。十代はまだまだ青く硬い二十代は青みが取れ自分好みの硬さに熟成させる事ができ三十代は程良く硬さも取れ四十代は全体的に丸みを帯び柔らかに五十代からは全てを受け止める包容力を持った柔らかさになる。
そんなことを思い出しつつ目を白黒させながらも素敵なお胸様を堪能してたら黎さんの助けが入ってガッチリロックされていた体を持ち上げてくれた。森では味わえない体感なので何気にお胸様との別れが惜しい。
「闇守様。環が驚いていますので控え目でお願いします。挨拶もできていないではありませんか」
慣れているのか黎さんは呆れつつも注意する。そうだ挨拶してない。黎さんに持ち上げられた体を下してもらい闇守様へお辞儀をしてご挨拶
「はじめまちて環でしゅ。ちばらくおちぇわになりましゅ(初めまして環です。しばらくお世話になります)」
頭をあげて闇守様を見れば膝立ち状態で胸の前で両手を握りしめ眼をキラキラさせてボクを見ていた。この表情知ってる。よく萌えてる友達がしてた表情だ。なんだろうこの親近感懐かしい。懐かしさを感じてふにゃって笑ったらまた抱きしめられた。
「きゃーなんて可愛いの!しばらくではなくてずっと一緒に暮らしましょう」
やっぱり萌えてた。でもボクもお爺ちゃんも寂しくなっちゃうから帰ります。まだまだお子様なので美女より家族です。
「ですから闇守様。無暗矢鱈に抱締めないで下さい。環が丁寧な挨拶をしてくれているのに何をやっているのですか貴方は…環すみません。この方これでも一応守護獣で闇守様なんです。ココに居たら抱締められたまま休むことも出来ないでしょうから部屋へは私が案内しますね」
「まぁ~何を言っているの黎夜。環ちゃんは私と一緒に休むのよ。お食事もお風呂も就寝もず~っと一緒よ!ねぇ~」
ボクに同意を求められても…何気に大変な事になってるぞ。見た目きつめの怖い感じがするけど美女と一緒は嬉しいが闇守様のお仕事は大丈夫か?
「はぁ~予想はしていましたが闇守様の我儘には困りものですね。お務めもございますから環とずっと一緒は難しいかと思いますよ。環がそれで良いのであれば私も付き添いますが環どうですか?嫌なら嫌と正直に答えて下さって大丈夫ですよ。本来は別にお部屋も用意しておりますから一人が良ければそちらへ案内します」
初めての場所だし一人はやっぱり少し不安なので黎さんも一緒なのは嬉しい。闇守様もパワフルだけど怖そうに見えて気さくな感じだし一緒に過ごすのも楽しそう。一人はきっと寂しいよね。
「いっちょでおねがいちましゅ(一緒でお願いします)」
そんなこんなで夕食をとって闇守様とお風呂に入ってって丸洗いされちゃったよ。男でも幼児だし女性とお風呂を入っても大丈夫ってか男が女風呂に入れるのは何歳までだろう?
森では野性味あふれる温泉には入ってたけど神殿のお風呂は室内にあって大きくて彫刻とかすごかった。お風呂に入って疲れが一気に押し寄せたのか途中からの記憶もないまま眠ってしまった。
目覚めればモフモフ柔らかな黒い毛並みに包まれていた。
「環、おはようございます。眼が覚めましたか?昨夜はずいぶん疲れていたようですが気分はどうですか?」
黒い毛並みは黎さんのお腹だった。昨夜は風呂場で眠ってしまい水けを拭いて寝巻を着せて闇守様に抱締められて眠っていたけど朝のお勤めの為黎さんが交代して今に至るらしい。全然記憶にないけど玉の記憶でも間違いなく寝落ちしていた。体力付けたつもりでも森の外での多くの初体験で思った以上に疲れていたみたい。
「おはようござゃいましゅ(おはようございます)」
寝巻から用意された服に着替えたら服は黒猫の着ぐるみで目の部分まで覆われていた。髪や瞳を見せないようにってことかな?猫の目の部分は青いガラスのようになっていて黎さんそっくり。長い尻尾を引きずるのはご愛嬌。
きっと闇守様が準備した服だなって判る。着替えた姿を見た黎さんも笑っているから間違いない。小さい子に着ぐるみ着せたくなる気持ちはすっごくわかる。短い足でポテポテ歩く姿はとっても可愛くて癒されるよね。目まで覆われているので周囲が見え難いけど実は視界がきかなくても玉と繋がっているので眼を使わなくても見える。内緒だけどね。
いっそ森以外では目が見えない振りして眼を瞑って髪を染めたら周囲に溶け込めて良いかもしれない。
朝食の準備が整ったからと黎さんが食堂へ連れて行ってくれた。守護獣に食事は必要ないけど一人の食事は寂しいだろうからって付き合ってくれながら闇守様の朝のお勤めについて教えてくれた。
「守護獣は朝昼晩と1日3回神殿奥の宝珠に祈りを捧げて神山の守護の強化をおこないます。朝食は共にできませんでしたがお昼は一緒に取ろうと闇守様が仰っていましたよ」
気持ち良さそうに寝ていたので特に体調を崩してとかでもなく熱も無かったので起こさずに疲れたのかもしれないと、そのまま寝かせて様子を見てたんだって。
守護獣は神山で授かる珠から勝手に育つのでボクを預かる為に色々勉強してくれたみたいだ。今のところ神殿に仕える人達に姿を見せていないけど側近に位置する人達にはボクの存在を以前から伝えていて説明もされているらしいから大丈夫かな?
「さて昼食までの時間に神殿を案内しましょう。守護の儀は5日後を予定しています。守護の儀が終わったら神殿の外も案内しますね」
黎さんが今後の予定を軽く説明してくれる。守護の儀が終われば身分証ができるので外での行動もしやすくなる。迷子になってもお守りで場所の特定も出来るので守護の儀が終わってから外を案内することにしたそうだ。
「よろちくおねがいちましゅ(よろしくお願いします)」
食後のお散歩がてら神殿を案内してもらったけど神殿なので見学できる場所は少なくあっという間に終了。図書館の本は借りれるそうなのでお勧め本を借りて部屋で読むことにした。森に本は無いし何事も経験経験。
玉がいるので読み書きに支障もなく難しい言葉もデーターベースで調べられるのでサクサク読みすすむ。黎さんにもお仕事があるだろうから大人しくお部屋で読書してますと伝えたら昼食に呼びに来るので何かあれば呼び鈴を鳴らしてくださいと小さなベルを置いてい仕事へ出かけた。
借りた本は六芒星の形をしたこの地の始まりの物語。古い昔ある時から人の生きられない世界となった。人の生きられる場所として神山が守護を張り神山から遠い地には守護獣が神殿にて守護を強化することにより安心して生活できる地ができた。
神山は人々の祈りに応えて生まれた山。外の国で生きる種族もいるけれど神山の守る地は各々精霊の属性に偏りがあるので外の国の種族は長時間滞在できないらしい。
大きくなって強くなったらこの地の6ヶ国だけでなく外の国までムスコ無双の旅に出ることになるのかなぁ~?
玉の視覚では霧が薄っすら広がって視覚が悪いなといった程度しかわからないけど人は守護の外へ出たら数分で死に至るって何で?多くの種族が存在するなら守護の外でも生きられる方法を見つけられると思うんだけど難しいのかな?
いつか見つかると良いな。