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薩摩の龍  作者: 龍水
1/6

誕生

 時は幕末。いや、後に幕末と呼ばれる時代に差し掛かったところだろうか。


 浦賀に黒船が来航し、そして去っていった。

日本は、米国に開国を迫られ、下田・函館の二港を開港することにあいなった。


 後にいう、鎖国の終幕である。


この鎖国の終幕より、日本は混乱期、後にいう幕末の時代が幕をあける。





※※※※※※※※


 それから、十年ほど遡った頃・・・・


 ある薩摩の武士の家に、一人の女の子が誕生した。


末に生まれた姫だということで、その誕生はそれはそれは血縁を問わず歓迎された。


その女子の一族は大変喜んで、三日三晩の宴を行った。


生まれた赤子は、代わる代わるいろいろな腕に抱かれ、それでいて、泣くことも なく幸せそうに静かに眠っているのだった。


そんな、赤子を見て、周りの者は幸せそうに笑い合いその子の将来を語り合うのだった。


その三日、その屋敷にはとても夜遅くまで明かりが灯り、笑い声が耐えず聞こえていたのだった。


その声を聞き、近所からもお祝いを告げる人々が多いにやってきて、更に笑い声が響きあった。





幸せがまるで、いつまでもいつまでも、続くような気が一家からは漂っていた。


それは、薩摩の国には珍しい白い雪の多い、寒い冬の日のことであった。






※※※※※※※※


やがて両親や兄の大きな愛情を受けて、その赤子はすくすくと健やかに育っていった。


ときには、悪戯をし、叱られて泣いてしまったり、転んですり傷をつくったりもした。


武術を学ぶことを好み、女子として、はしたないと罵詈雑言を吐かれたこともある。


けれども、どんなことがあったとしても、彼女は決してめげずに、笑顔を絶やさなかった。


月日は人々が思うよりずっと早く流れ、小さな赤子は少しおませな少女になり、少女は芯のある少し色気のある女になっていった。


彼女の周りはすこし変わることはあれども、毎日つつがなく、彼女は目一杯の幸せな日々を送っていた。












※※※※※※※※※



しかし、その幸せは、誰もが永遠に続くと信じていた幸せは、ある日突然、儚く消え去った。。

 

 

 その日から、彼女は激しい時代の渦へと、心に深い闇を持って、自ら飛び込み、巻き込まれて行くのである。


彼女の消息を知るものは 、薩摩には、もう一人もいない。



ただ薩摩人が知るのは、彼女とその家族の優しい笑顔と、真摯で真っ直ぐな瞳だけである。









時は幕末。

薩摩の地から後の豪傑たちが旅立とうとしていた。

その豪傑達よりも一足早く薩摩をたった、女傑。

名を神崎龍。

その細い背中に背負ったものを下ろしたと共に、表舞台から姿を消した、一人の女の話である。










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