少女の正体
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今から五年前。
ルミが中学一年の頃。
ルミの目の前にはいつもの黒いマントをまとった少女がいる。まるでルミと瓜二つの背格好と顔かたちだ。
マントの少女は優しい笑みを浮かべルミに囁く。
「ルミちゃん。私に任せて。ルミちゃんを虐める悪い奴らは私の敵。二度と虐めができないようにしてあげる」
「ほんとに?そんなことができるの?」
マントの少女はユックリ頷き、「ルミちゃんのためなら何でもできるわ。でもね…」
「でも、なに?」
「ただ、その願い事を叶えるためにはルミちゃんの大切な者が消えるかもしれない」
「大切な物?」
「うん、そうだよ。それさえ覚悟ができれば、必ず願い事は叶うよ」
「大切なものって、…何が消えるの?」
「さあ、リボンのついたカバンかな?真新しい尖った鉛筆かな?学校の教科書かな?それともあのまずい学校の給食だったりして…私にもわからない。でも大切な『もの』がなくなるの」
「そんなのならまた買えるから大丈夫」
「ホントにいいの?」そう念を押しながら、黒いマントの少女の瞳が赤く輝いた。
ルミは二つ返事で頷いた。
……
「その頃まだその少女が悪魔とは気づかず、友達感覚で付き合っていたんです」
「でもその願い事が叶った時、初めてその子の正体が分かりました」