一枚の写真
ルミは机の中から一枚の写真を取り出し俺たちの前に差し出した。
その写真はセピア色に変色し、ところどころ皺が寄っていた。
ジャックは食い入るようにその写真を見た。
二人の少女が写っている。
「これは…」ジャックはルミの方に目を向けた。
「私です。たぶん、三、四歳のころだと思います」
「尖がり帽子をかぶり、黒いマントを着飾った子供…が二人」ジャックは呟いた。
「あの化け物と同じスタイルだ。これはどういうことなんだ?」エースはルミに尋ねた。
「これはハロウィンの時、私が仮装したところを親が撮ったものだと思います」
「隣に写っている同じ服装の少女は誰?」ジャックは尋ねた。
「実はその写真は私を映したものです。私一人だけを…」
「何を言っている?二人写っているじゃないか!妹か姉じゃないのか」エースは畳みかけた。
「私は一人っ子です」
「じゃあ、親戚の子供か近所の子供だろう。お前さんが覚えていないだけだ」
「いいえ、よくその写真を見てください。どこかおかしいと思いませんか?」
「おかしい?…ただの古ぼけた写真じゃないか」エースは手に持った写真を机に投げ出した。
ジャックは無造作に投げ出された写真を改めて見直した。
「エース。ルミさんの言う通りこの写真はおかしい」
「ジャックまで何を言ってる、この写真のどこがおかしい」
「よく写真を見てみろ。この写真は被写体一人を中心に映した構図だ。右側に写るもう一人は、肩が写真の枠からはみ出している」
「素人が写した写真だからだろう。何の問題もない」
「いや、それだけじゃない。右側に写っている女の子だけがピンボケに写っている。同じ距離でピントを合わしているのに、右側の子供だけがボケている」
「だから、カメラを初めて持った奴が撮ったんだ。それだけの事だ」
「それだけでは説明できない]ジャックは呟いた。
「この写真は天気のいい公園で写したものだ。陰影がはっきり写っている」
「だから何だ?」
「右側の子供の足元をよく見てみろ」
エースはめんどくさそうに写真を眺めた。
「右側の子供だけ…影が写っていない」




