第一話・ストーリー 1
「……。」
今日、夢を観た。 悪夢を、悪魔の―予言を。
今まではキーワード。
今日は、ストーリー。
あぁ…もう、最っ悪。
これは、私が悪夢を観た時の口癖になった。
「おはよう…。」
居間には朝食を作っている母、目玉焼きとトーストとコーヒーを相手にしている兄貴の清、ワタワタと着替える父。 「あら、おはよう。」母は笑顔で応えてくれて、父は
「おはよう。」
いつもと変わらない気さくな笑顔で応えてくれた。
清は
「おはよう。」
って無愛想な顔で応えた。
「また今日も悪夢見ちゃったよ〜。」
私は家族に悪夢を悪魔の予言だなんて言ったりしていない。
そして、友達にも。
「最近ずっと言ってるなぁ。何か、嫌な事でも考えながら寝てるんじゃないか?」
父は優しい顔で言ってくれるから、心が温まる。
「別に嫌な事考えてないんだけどねぇ〜。」
頭をかきながらとりあえず笑ってみせた。
父には、心配を掛けさせたくないから。
「はい、朝ごはん。今日は早起きしたから食べてけるんでしょう?」
テーブルに清と同じものが置かれた。
「うん。」
目の前に置かれたトーストにジャムを塗り、ゆっくりと食べ始める。 (今日の夢は…ちょっと大きめのテディベア。青色の、目の大きなテディベア。その子は私の前まで歩いて来て、私は私の仲間を探しています。見つけて下さい。見つけて下さったら、私は、貴女の願いを叶えますって言ってた。仲間って…どう見つけろってさ…。)そんな事を考えながら部屋に戻って制服に着替えた時、私じゃない私が呟いた。
「青いテディベア。青は幸運とされている。」
私じゃない私の呟きなのに、私がいつも言葉にする。私じゃない私は、私だから。
「よし、オッケー。」
鏡の前に立って服装をチェックして、簡単に紙をとかして階段を駆け下りる。
「いってきまぁ〜す。」
鞄とお弁当を持って家を出ると、いつもはいない人影。
「よぉっ。」
秋山悠。
私の彼氏。
そいつは笑顔でこっちに手を振ってる。
「どうしたの?いっつも遅刻ギリギリに学校に来るあんたが…。」
「ちょっと話があってさぁ…。」ほんの少し悠の目付きが変わった気がして、ぞくりと、背中から身体中に寒気が広がった。
「話、って…?」
何だか怖くて、言葉の一つ一つに力が入ってしまう。
「んーとさぁ…お前さぁ…」
いつもの様に頭をかいていたその表情は優しかった。そう思った刹那、悠の目が私を睨む様なきつい目付きになって
「悪魔の予言、観てるだろ。」
「え…?」
家族にも、友達にも話ていない悪魔の予言。
もちろん悠にも話していなかった。なのに、何で―? 「遊園地の時、お前警察呼びに行っただろう?その時、悪魔と話しただろ。」
「はぁぁ、馬鹿だねぇ、私って。いつわかったの?」
「お前は…そうか、なるほど。」
何―?どういう…事…?
私は…何かを知っているから悠に私じゃない私で話した。
一体、どうして―?
「長くなる。とりあえずこの話は聞かれたくない。場所を変えよう。」
そう言うと悠は私の手をとり歩き出した。