始まりの悪夢 4
あの後私達は無駄に走り続けていた。
だけど、普通の遊園地だったら逃げられなかったんじゃない、とか、あの遊園地は従業員皆馬鹿だからマニュアルの紙とか読んでないんだろうとか、警察はうっとおしい、とか走りながら話した。 言いたいだけ言って、家が近くなる頃には二人共クタクタだった。 「たっ…だいまぁー…。」
玄関に足を踏み入れた時、脳裏に何かがよぎった。 …人造人間…。 (最後から二つ目のキーワード…。) その時、いきなりハリセンで叩かれた。パーン!っていい音立てて…。 「いってぇ〜…。」
「いってぇじゃねえ。お前、いい加減に殺すぞ?」
顔を上げるとそこには清の姿があった、顔半分悪戯書きで顔が汚くなっている。
「お前のせいでこの様だ。母さんに笑われた。あなた人造人間みたいよって。だいたいお前はなぁ…」
(…あぁ…人造人間…、清の事か…。
) まだブツブツと文句を言っている清を横目に私は自分の部屋に戻った。こちとらもう、クタクタなんだよぉ…。 部屋に足を踏み入れてすぐにバックとジャンパーを放り投げてベッドに仰向けに倒れ込んで、深くため息を吐く。「悪魔なんて…悪夢なんて…信じない…。」
今日遊園地で私は、悪魔と話した。けど、それは私じゃない。私じゃない私が悪魔と話したんだ。 悪魔と私が会話をしたなんて、認めない。 いくらか寝て、目が覚めると、また脳裏に何かがよぎった。 「んなの…っ、ホントに…なんなのさ!」
見えない相手と私じゃない私に憤りを感じ、叫んでしまった。
そしたら、一気に涙が流れ落ちてきた。 (あ、そう、最後のキーワードの涙、ね。) その内にだんだんと馬鹿馬鹿しくなってきて、そしたら、私じゃない私が目を醒ました。 「そろそろ交代しようよ。私は、やらなくちゃならない事があるんだ。」
私じゃない私は、そう言って、心のどこからかすぅっと湧いてきて、私という人格に覆い被さってきた。 「交代はさすがに可愛想だから、半分こ。よろしくぅ。それと、勘違いしないでほしいのは、私達は人格であって人格じゃない。まぁ詳しく事は後々。だから、二重格とかでもないから。それじゃ、よろしく。」
そう言って私じゃない私はそれから何も言わなくなった。 そして、頬を伝う涙も、いつの間にか乾いていた。