始まりの悪夢 2
ミニマム遊園地は名前の通りとても小さな遊園地だった。
遊具はジェットコースター、お化け屋敷、メリーゴーランド、観覧車。
それだけと、アイスクリームを売っている店、お土産屋さん、自動販売機。
それくらい。
私はやっぱり待ち合わせよりだいぶ早く着いたから、いつもバックに忍ばせてるカメラを取り出してミニマム遊園地の遊具を撮る。 カメラは私のちょっとした趣味になっていた。 誕生日に親からもらったカメラ。機械がちょっと苦手な私には、このカメラは簡単な操作だけで良くて、楽だった。 「ふぅ、これくらいでいいかな。」
ミニマム遊園地は休みの日にもあまり人が来ない。 だから、人混みが嫌いな私には憩いの場だった。 撮影した景色を見ようとぎこちない手付きでカメラをいじっていると、砂利を踏む音がして、振り返るとそこには秋山悠が居た。 「いよぅ。お前が先に来てるって…何か天変地異の前触れか?」
悠は、上は黒いジャケット、下はまだ少し濃さが残る紺のジーパン。黒いスニーカーの靴ひもはきつく結ばれていた。
「私だって早めに来る時くらいあるんですー。」
べっ、と舌を出して窓口で入園券―これを買えばその日遊び放題―。 ミニマム遊園地、遊具は少ない。だからあまり人は来ない。なのに、何でか今日は少しだけ人が多いように思えた。 「あっれまぁ、今日は貸し切りじゃないんだなぁ…。」
頭を掻きながら悠はのんびりと言った。 そういえば、前来た時には私達二人しかいなかった。あの時は楽しかったなぁ…なんてぼんやり考えてると急に頭を小突かれた。 「阿呆面してたけど大丈夫か?」
「阿呆面なんかしてないもん。ただ…何かこんなに人がいると…何か寂しくて…」
ミニマム遊園地は私達二人だけの憩いの場だと、勘違いしてた。恥ずかしくて、寂しくて、うつ向いていると 「ばぁぁか。この遊園地は俺達んだよ。今ここに居る奴等は、俺等の場所が潰れないように来てるだけだよ。」
悠は、時々私の心を見透かしたみたいに言う。 だけど、それが嬉しかったりする。
「うんっ、そうだよねっ。ここにいる人達み〜んな私達のしもべだもんね。」
笑ってやった。 そしたら悠はちょっとだけ笑って 「しもべまではいかない。」って言って、歩き出した。