始まりの悪夢 1
あぁ〜あ…くだらない。
これは私の目覚めてすぐに言う言葉。
だけど、もちろん毎日毎日言ってる訳じゃない。 悪夢を、悪魔の予言を観た日だけ。
私の夢は現実じみていて、いつかその夢は現実となる。
今日もまた、夢を観た。 普通の人とは違う、 悪魔の予言を―。 リリリリリリリ…。 目覚まし時計の閑静な音が静かな朝に一日の始まりを知らせる。
「ちっ、また悪魔かよ…。
」ベッドから這うようにして出て、時計に手をかける。
「今日の夢は怖かったなぁ…はぁぁー…。」
誰も居ない自室で一人で呟いてみはするものの、心と身体にまとわりつく“何か”からは逃れられるはずもなく、 私は床に転がっていた服をひっつかむと、居間へ向かう為階段を降りる。 「おはよ。」
今日は土曜日、もちろん学校は休み。両親は仕事でいなかった。四人掛けの椅子の一つは埋まっていた。
兄の国木 清。 一ヵ月前短く刈り上げたはずの髪はしかし少し長くなっていてボサボサだった。手には新聞、テーブルにはコーヒーと食パン。 「お前は何時を朝の対象にしてるんだ?」
始まった。朝から嫌味だよ。時計の針は八時二十一分を指していた。 「何さ、まだ八時半じゃん。」
パサッ。
「お前の彼氏はもうお目覚めらしいぞ。」 新聞をテーブルに置いて清が居間を出ていこうとする。
「えっ、ちょっ、どういう事!?」
「電話、さっきはいってた」
「何で早く言ってくれないのさぁー!!!」
清は何も言わずに居間から出ていったけど、今はそれどころじゃない。アイツが携帯じゃなくて自宅の電話に掛けてきた意味が一刻も早く知りたくて、電話をひっつかんで、ボタンをダッシュで押す。 トゥルルルル… 「はい、もしもし?」
「悠?秋山悠?」
「何でいっつもフルネームかな…はい、秋山悠ですよ?」
「さっき電話くれた?」
「あぁ、したよ。」
電話の向こうでは何故か半笑いの悠の声が聞こえてきた。 「どうしたの?何かあった?」
「いやぁ、なんとなく気分を換えて家電に掛けさせてもらいましたぁ。はははっ。」
「はぁ…?」
「要するに、特に用はなかったんだけどな。」
「あっ、そう。」
くだらなさ過ぎて力が抜けてきた。
「あ、今日暇?」
「暇だけど?」
「遊園地行かない?」
「遊園地?ミニマム遊園地?」
ミニマム遊園地とは私の家から三十分で着く遊園地。今日の悪夢は時計と悲鳴と警察がキーワードの夢だった。時計は遅刻か何かだろうし、悲鳴はまた悠の悪戯に対しての私のだろう。警察は…わかんないけど。
「良いよ、行ったげる。」
悪魔の予言はさっきの通りあんな感じで終わるだろうし、その時は、そう簡単に考えていたんだ―。テーブルに置き去りにされた食パンを頬張って、コーヒーを喉に流し込んで、自分の部屋から持って来ていた服を着込んで部屋に戻ってバックやら携帯やらを持って出掛けようとドアノブに手を掛けて思い出した。
「兄貴ー!」
同じく2階にある清の部屋に向かって少し声を張り上げて言うも、返事がない。 「んのやろぅ、シカトか?」
ズンズンと清の部屋の前まで行く。ドアを数回ノック。やっぱり返事はない。腹立つ。
「入るよー。」
案の定清は寝ていた。 私には嫌味言ったくせに、机に突っ伏して寝てやがる。
キュポッ。キュッ、キュッ、キュキュキュ…。 (よし、完璧。) 机に油性ペンを置いて私はそそくさと部屋を後にする。帰って来たら顔半分汚い悪戯書きで怒る清が居る。考えるだけで怖くなって思わず両手で自分を包む。 けれど、怖い分面白い…。吹き出しそうになりながら家を出る。 秋の冷たい風が身体を包む、その時思い出した。夢にはまだ続きがあった。 人造人間?と…涙。 何だろう?
まぁ、何でもいっか。 ブーツのカツカツという音と共に、私はミニマム遊園地に向かう。
待ち合わせ時間は十時。 携帯の液晶画面は九時十分を表示していた。 ゆっくり歩いても、時間は余る。けど、それがいい。人を待っているのは嫌い。だけど、今日は違った。
“私”は夢をしっかりと覚えていなくてキーワードだけしか…という感じですが…のちのちは(「 ̄ー ̄)