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想いが届く時  作者: 茉月
9/16

ナオと矢城

 ナオは自分のベッドの中で、昨夜の雅樹との事を思いだし、少し後悔していた。





「ナオ……。俺……、ナオが欲しい……」


 雅樹の優しい指の動きに、ナオの身体は熱を帯び、雅樹の唇に敏感になって行く。


 ああ……、あたし……、まだ酔ってんの? なんだかすごく気持ちいい。


 ナオの身体も、すでに雅樹を求めていた。

 欲望のまま雅樹に抱かれたナオ……。




 あたし……、まだ雅樹の事、好きかどうかわかんないのに、雅樹に身を任せてしまった……。最後に飲んだ冷酒がいけなかったかなあ~。いやいや、そんな問題じゃないよ。でも、身体は正直だ……。あの時、あたしは完全に淫らな女になってた。お酒強いと思ってたけど、昨日はやっぱり飲み過ぎたのかな。日本酒はやばい。後からジワジワ酔いがくるから……。やだ、またお酒のせいにしてる。あ~、なんて浅はかなやつ。バカだ。あたしは……。


 ナオが勝手に自分を責めてると携帯が鳴った。


 矢城くん?


『はい……』


『あ、ナオさん、起きてました?』


『ん……。あんま寝てない……』


『飲み過ぎですか?』 


 ドキッ!!


『えっ……、そんなんじゃないよ』


『あの、急ですけど、今日、どこかへ行きませんか?』


『どこか?』


『あ……、寝ててもいいですから』


『意味ないじゃん?』


 ナオはあまり気分が乗らなかったが、家にいると雅樹の事を考えてしまいそうだから、出かける事にした。


 1時間後、矢城が迎えに来た丁度その時、母親が夜勤から帰宅した。


 車のドアの前に立っていた矢城の姿を見ると「あら? ナオの新しい彼氏さん?」と声をかけて来た。


「あ! ナオさんのお母さんですか? はじめまして。 矢城と言います。彼氏……になりたい男のひとりです……」


 そこへナオが家から出て来た。


「お帰り~。あれ? ご対面しちゃったの? あたし、ちょっと出かけてくるね」


「気をつけてね。じゃ、矢城くん? 頑張ってね! 行ってらっしゃ~い!」


「は? 何を頑張ってなの?」


「さ、さあ……。なんだろうね……。じゃあ行こうか」


 矢城は車にナオを乗せ、ゆっくりと走り出した。


「急に誘ってすみません。ナオさんに会いたくて仕方なかったんです…」


「あ……、ありがと……」


「どこか、行きたいとこありますか?」


「えっ? あ……、そ、そうね……。矢城くんは? 行きたいとこあるんじゃない?」


「俺は……、ナオさんと一緒なら、公園でも河川敷でも構わないけど」


「矢城くんたら~、例えが地味過ぎだよー」


「で、ですよね。でも、ほんとの事だから。それに、地味だなんて河川敷さんに失礼です」


「う……、じゃあ、河川敷さんに行く? 失礼しちゃったお詫びに」


「お詫びって! オッケーですよ。あ、じゃあ、土手でも歩きます? 今日は外の方が気持ち良さそうですし」


「うん、うん、いいかも」


 矢城は車を走らせ、土手の下の空地に止めた。ナオと上まで上がり、暫く歩いてから、土手の斜面に座った。


「なんかさ、ドラマのワンシーンみたいだね」とナオがはにかむ。


 矢城はその横顔を眺めてから、前に向き直すと「実は、聞きたい事があるんです」と真顔で言って来た。


「なあに?」


「ナオさんの片思いの相手さんとは、どうなったんですか?」


 ドキッ……!


「どうにもなんないよ。ってか、最初からどうにかなる相手じゃなかったから……」


「あきらめたって事?」


「う……ん。あきらめられないけど、あきらめるしかないってゆうかね……」


「そうなんですか……。だからですか? だから雅樹さんと付き合ってるんですか?」


「えっ! 付き合ってないよ! なんで?」


「でも、雅樹さん、彼女と別れたんですよね?」


「ん? 知ってたの?」


「俺が前、好きな女性(ひと)の気を引くにはどうすればいいかって聞いた時、雅樹さんは、彼女をほかの男に取られるようなやつに聞くな! って、苦笑いしてました」


「そ、そっか……」


「それからの雅樹さんは、ナオさんと前より親しげになってるし、よく一緒にいますよね? 昨日もずっと一緒だったんでしょ?」


 ドクンッ!


「昨日?」


 矢城は、少し間を空けてから、ふたりの後をつけてた事を告白する。今までも何度か同じ事をしたと、白状した。だが、いつも途中で引き返し、ずっと追うことは出来なかったと言う。


「すみません……。俺、ほんと情けないヤツですよね…。ナオさんの事好きだから、誰とどこ行くのか気になって仕方なくて。そんな事すれば、余計ナオさんに嫌われるってわかってるのに、じっとしていられなかったんです。でも、昨日のナオさんの楽しそうな顔を見て、俺じゃダメだってわかりました……。あんな笑顔、俺には見せてくれないから……。俺は笑ってるナオさんが大好きだから、その笑顔を見てるだけでほっとするんです」


 ナオは恥ずかしかったが、正直に話してくれた矢城に優しさを感じた。


「ありがとう。ちゃんと話してくれて。……。でもね、あたしは矢城くんに好きになってもらうような人間じゃないよ……。だらしないとこや、だらしないとこや、だらしないとこ……」


「ナオさん!!」


「へへっ、ごめん。矢城くんが真っ直ぐ過ぎるからさー。あたしなんかよりかわいい子、いくらでもいるよ。……。でも、嬉しかったよ。好きって言ってもらえて。もっと中身を磨かなきゃだねー」


「俺、前にも言いましたけど、本気で女性(ひと)に恋したの、ナオさんが初めてなんです。だから、どうしていいかわからず、間違った行動をしてしまったのかも知れません。ほんとにごめんなさい……」


「いいのよ。だってあたし、全く気付いてなかったんだから。尾行されてても気付かないタイプよね。刑事さんも楽勝だわ。フフッ。だから、気にしないで。またやったら、口聞いてあげないけど!」


「ナオさんはいつもそうやって、話を明るくしちゃうんですね。だから好きなんですけど」


 矢城はもう二度と陰気くさい事はしないと約束した。


「ナオさん? お腹空きません? 朝から何も食べてないんでしょ?」


「そうだった……。若干二日酔いの気があったから……」


「やっぱりー。じゃあ、胃に優しい焼肉にしますか?」


「オイッ! これ以上闘わせるんじゃない!」



 ふたりは車に戻り、街中へ戻ろうとしていた。





 急カーブに差し掛かり、スピードを緩めた瞬間、対向車が反対車線にはみ出し、矢城の車と激突。




 ふたりは意識を失った…………。






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