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想いが届く時  作者: 茉月
2/16

就職

 雅樹が言うには、ひとりの女の子がいきなり辞めてしまい、人手が足りないと言う事だった。


「あたしに出来る仕事なの?」


「PCは使えるでしょ?」


「ん〜、得意じゃないけど……」


「なら、何とかなるでしょ」


「何? その無責任な発言」


「誰だって最初は初心者だろ? 美坂ならやれるよ。それに、俺がいるからいじめられることもないだろうし」


「雅樹くんにいじめられたりして……」


「それはあり得る!」



 雅樹は、また連絡すると言って、帰って行った。


 ナオは次の日だけバイトに行き、店長に辞める意志を告げた。


「俺のせい? 思った通り、美坂ちゃんは純情だったんだなぁ。何も辞めなくてもいいんじゃない? 楽しみがなくなっちゃうよ」


 ナオは、楽しみってなんだよ! と思いながら、その事には触れず、とにかくもう来ません、とだけ伝えて帰宅した。


 大人げないとは思ったが、店長の視線には耐えられそうもなかった。



 次の日の夜、雅樹から連絡が入った。

 バイトのメドがついたら一度会社に来てみないか? と言う話だった。


『メドはついたよ。昨日辞めて来たから』


『マジで!? 意外と行動力あるんだな。じゃあ明日の朝迎えに行くから準備しておけよ』


『えっ、明日? 急過ぎだよ!』


『1日でも早い方がいいんだよ。思い立ったらなんとやらでさ』


『だけど、仕事だよ? ちょいと旅行でもってわけじゃないんだし……。あたしにだって、心の準備ってもんがあるんだからね』


『そんなん、考えるだけ時間の無駄さ。それに、俺が見込んだんだから躊躇することないじゃないか』

 

『別に躊躇してるわけじゃないけど……。履歴書とかいいの?』


『いらねーよ。そんなもん。俺の紹介だぜ! みんな信用してくれてるんだから、大丈夫さ』


『ええ……、そんなんで良いわけ? 面接とかさ~』 


『安心しろって! 美坂なら一発OKだよ。それに、高校ん時だって、そこそこ勉強出来たじゃん! 美坂ならやれば出来るって』


『う〜、プレッシャー……』


『平気、平気。みんなには、頭悪いけど、勉強は出来ますし、かわいいやつなんで面倒みてやってください。って言ってあるからさ』


『雅樹ぃーー!!』



 それから、ふたりは、名前を呼び捨てにしながら、話すようになっていた。



 翌日、ナオは雅樹と一緒に出社した。



 ―アサカワ印刷―


 ナオは雅樹に紹介され、簡単な挨拶を済ませた。


 阿佐川社長、飯野部長を含め、社員は10名ほどで成り立っていた。

 事務の植田さんは30歳で主婦のため、定時キッカリで上がり、残業は一切しないと言う。終わらなかった伝票整理は、全て飯野部長が処理しているらしい。その飯野部長が言って来た。


「美坂さん、僕は一応部長となってますけど、名刺上だけなので、名前で呼んでもらっていいですからね。みんなそうですから。美坂さんは若いから、ナオちゃんでいいかな? そんな軽い雰囲気な会社なんで、よろしくね」


「こちらこそ迷惑かけるかも知れませんが、よろしくお願いします!」


「まあ、雅樹がいるから心強いとは思うけど」


「はい……。そうだといいんですけどね」


「オイ!」雅樹が突っ込む。


 みんないい人っぽくて安心した。ナオはさほど緊張せずに初日を終えたのだった。




「雰囲気的には悪くないだろ?」


 帰りの車の中で雅樹が聞いて来た。


「うん。みんなやる気がある人達ばかりだし、嫌な人は居なさそう。でも、植田さんってちょっと苦手かも……。素っ気ないって言うか、何回も教えないわよオーラが立ってる感じ」


「アハハ。教えないわよオーラって! 確かにちょっと取っ付きにくいよな〜。プライベートに関しちゃ、ほとんど話さない人だからさ」


「そうなんだ〜。気疲れしそう……」


「もし、植田さんに聞きづらい事あったら、こっそり飯野さんに聞くといいよ。あの人なら何でも教えてくれるからさ。仕事以外の事でも教えてくれちゃうぜ」


 雅樹は意味深な笑いをした。


「何それ? 危険人物なの?」


「さあて。どーかなぁ〜? ナオ自身で探るといいぜ。今後のお楽しみって事でさ。んじゃ、また明日な!」


「ちょっと、お楽しみってなんだよ! ムカつく!」


「あっ、明日からどうする? 電車で来る? それとも車買う?」


「ええ、もうBMW購入済みだから、それで乗り込むわ」


「ほほ〜、もっとエコ車にすりゃあ良かったのに」


「そうね。じゃぁ、電車で運んでもらう事にするわ」


 ふたりはジョークを飛ばし合いながら別れた。








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