表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢は世界で一番あたたかい糸を紡ぐ  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/40

第37話:答えをくれた人たち ― 救いの言葉

王宮からの呼び出しは、簡潔だった。


理由も、用件も書かれていない。

ただ、「至急」とだけ記された紙。


その文字を見た瞬間、

アメリアの胸の奥が、きゅっと縮んだ。


(……来た、のかな)


足音が、やけに大きく聞こえる。

長い廊下。高い天井。

白い壁に反射する光が、どこか冷たい。


――前世の記憶が、一瞬よぎる。


華やかな舞踏会。

集まる貴族たち。

向けられる視線。

そして、断罪の言葉。


アメリアは、無意識に手を握りしめていた。


(大丈夫……まだ、何も言われてない)


そう言い聞かせても、心は落ち着かない。

扉の前で立ち止まり、深く息を吸う。


静かに、扉が開いた。



そこにいたのは――

剣を持たない、アルベルト王子。

そして、その隣に立つ、ミラベル。


誰も、壇上にはいない。

裁くための席も、糾弾するための列もない。


ただ、二人が、まっすぐにこちらを見ていた。


「アメリア」


ミラベルが、先に口を開く。

いつもの、親友としての声。


「あなたは――悪役じゃない」


その言葉は、あまりにも迷いがなかった。


否定でも、慰めでもない。

事実を告げるような、断言。


アメリアは、言葉を失う。


続けて、アルベルトが一歩前に出る。


「あなたは、この国を静かに救った人だ」


理由は語られない。

功績も、数字も、証拠も並べられない。


ただ、それだけ。


アメリアの中で、何かが――崩れた。



ぽろり、と。


気づく前に、涙が落ちていた。


「……っ」


声を出そうとしても、喉が詰まる。

否定しようとした言葉も、反論も、浮かばない。


これまで――

感謝を求めなかった。

評価を期待しなかった。

名前を呼ばれなくても、続けてきた。


それが、初めて。


「言葉」として、返ってきた。


アメリア

「……そんなふうに、言われるの……初めてです」


声は震え、涙が止まらない。

ミラベルが、そっと近づき、何も言わずに寄り添う。


アルベルトは、それ以上、何も付け加えなかった。

説得もしない。

未来も語らない。


ただ、答えだけを置いていく。



しばらくして、涙が落ち着いた頃。


アメリアは、ふと静かになる。


胸の奥に、温かいものが残っている。

確かに、救われた感覚があった。


けれど――


アメリア(心)

(みんなは、救ってくれた)


(でも……“未来”までは、決めてくれない)


それは、当たり前のことだった。

誰かが代わりに生きることはできない。

誰かが代わりに、結末を選ぶこともできない。


恐怖は、まだそこにある。

完全には消えていない。


けれど。


答えは、確かに受け取った。


アメリアは、ゆっくりと顔を上げる。


――他者は、答えをくれた。

――次に選ぶのは、自分自身だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ