第一章 The Will of the Sword
わたしの手に握られた、この剣。聖剣『ピュア・ウォーター』には意志がある。
言葉はもちろん通じない。その考えを確かめる術を、わたしは持たない。
だけど、明確な意志があって、人知れぬ目的を果たそうとして、この剣は存在している。それだけは、絶対に確実だ。
何故ならば、始まりから、ずっとそうだった。
4年前、サカマシュ王国の侵攻によって故郷を追われ、トゥーラダバンの森を彷徨い歩き、
陽だまりの中でピュア・ウォーターを見つけた。
伝承によると、世が荒れて多くの血が流される時、その血を洗い清めるために、天が人の世へと送るのだという。
陽光に照らされ静かな輝きを放つ刀身が、わたしの心を捉えた。
言い伝えに聞く剣が目の前にあるという、確証めいたものがあった。
柄を手にして剣を拾い上げた時、サカマシュ王国の支配から民を救い出すことが、わたしの天啓だと直観した。
サカマシュは、国土拡大のため、隣接する国々を次々と支配下に収め、勢力を拡大していた。
わたしの祖国クドゥンも戦いに敗れ、サカマシュの軍門に下ったが、国を守りきれなかったのは騎士団長であったわたしの責任だった。
落ち延びて、恥と絶望にさいなまれて死を選ぼうと思っていたわたしを、剣の意志が包んだ。
それは、優しさや温かさではなく、冷たく鉄のように鋭い意志で、わたしに生きて、サカマシュの支配を終わらせることを望んでいるように感じられた。
そうしてわたしは、ピュア・ウォーターを手に、故郷クドゥンへと戻った。
騎士団の生き残りから聞いたのは、サカマシュは敗れた国々の民であっても、能力のある者は地位を与えて登用するという話だった。
わたしが忠誠を誓ったクドゥン国王ナバラドラム2世は既にサカマシュの手にかかり、この世にはいない。
わたしはすぐさま、サカマシュ王国の首都サペントラムへと出向き、かつてクドゥンの騎士団長であったことを告げると、近衛兵団の大尉の地位を与えられた。
そして、それ以来、表向きは近衛兵団として王への忠誠を違いながら、サカマシュに支配された人々を解放する機会をうかがっているのである。




