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どうも大家です、最近の悩みは住人が死なないこと  作者: 小城穂


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202号室

「あれ、どうにかなりません?」

「なぜ俺が」

「そんな殺生な……」


 二階の廊下。

 柵を両手で握りしめ、必死に隠れようと無駄な努力をしてる少女は、若干震えながら青ざめている。

 あれ、と刺した先にいるのは田籠だ。

 正確には、田籠の周りをふよふよ漂う呪いだが、別にどちらでもいいだろう、そこまで違いはないし。


「出なくていいのか?」

「あれの近くを通れって!?」

「嫌ならいいが、遅刻するんじゃないか?」

「……それもやむなし!」

「そうか、がんばれ」

「冷たいっ」


 202号室に住む富野(とみの)、高校生。

 どうやら田籠のところの呪いが見えていて、そして大層恐ろしいらしい。

 その為、毎週家出る時間が被るときはこうして、震えながら二階からおっかなびっくり覗いてる。

 警戒して隠れてるつもりなんだろうけど、田籠にもその呪いにもバレてるし、今はもう何してんだろって疑問に思われることもなくなった。

 あれは封印がまだ生きてるから、人間に危害は加えないんだけど、説明しても怖いものは怖いって言ってるので好きにしたらいいと思う。


 富野は田籠が背負ってる呪いが見えてるように、ちょっと色んなものが見えるタイプだ。

 今は怯えているが、一応見えるだけでなく対処もできる。

 所謂退魔師、エクソシスト、陰陽師、呼び方は色々あるがそういう化物退治を専門としている部類の人間。

 そういう家系、正確には分家筋だそう。

 とはいえ、家系的には今はもうほぼ力はないらしく、富野の力は先祖返り的な面が強いのだそう。

 それなりに才能があり、そして専門に知識や技術を学んでもいるので、富野の実力はそれなりにある。


「このままだと留年になるんですけど!?」

「自己責任」

「ひどいっ」


 傷付いたような顔をしている富野は、今日も明るく元気で感情豊かだ、もう少し陰鬱としてても俺としては全然いいんだけど。


 入居は田籠の方が早かったので、ここに住んですぐの頃は毎日101号室を警戒していたようだが、その頃に比べればいくらか慣れているようだ。

 それならもっと別のところに引っ越せって感じだけど、金銭的な事情でちょっと難しいらしい。


 詳しくは知らないが、祖父の代に本家にちょっとした負債があるらしく、その返済に奔走しているのだそう。

 生活費を切り詰めながら、本家から仲介された人外関係の仕事をこなし、学校にも通ってる苦学生な富野には是非とも頑張って欲しい。

 そして、いつでも不幸な殉死を遂げてくれて構わないから。


 正直、祖父から数えて三代かけてもまだ生活が苦しいような負債、返せるとは思えないから踏み倒す方法考えた方がいいと思うが。

 富野は霊力だかそこら辺の才能があったから、霊能関連の仕事を引き受けて現在返済速度は上がったそうだけど。

 そもそも返し切らせる気があるのか、そこからちょっも疑問だし。

 けど俺的には問題ないから言わないでおこう。


 さて、ではなぜ富野は俺が見えてる前提で話しているのかというと、ちょっとしたミスが原因だった。

 入居してすぐに、あやかし退治的なことをしてたのは知っていた、そしてたまに眺めてた。

 正直人間と争ってるんなら、どっちが勝っても俺的にありだけど、人外となると話は別だ、人間側には普通に負けて欲しい。

 なのでちょっと離れた位置から富野の負けを願い、あやかし側を応援してたのだ。

 人外に殺された場合は、死んですぐ魂回収しないとそのまま喰われたり持ってかれたりするし。


 そんなある日、ばっちりと目が合った。

 否別に、隠れてて見つかったとかそういうのではない、本当にちょっとしたうっかりだ。

 富野に敵わないと逃げた一匹が、なぜか身の程知らずにも俺に向かってきたので、ちょっとイラついて蹴り飛ばしちゃって。

 マァ、当然ながら富野に存在がバレた、ついでに同業の部類だと勘違いされた。

 全然違うが、面倒なので否定はしてない。


 そした、なんか知らないけど、俺に助けを求めたりするようになった。

 面倒なのでやめて欲しい、俺はお前が死んでもいい、というか死んでくれた方がいいと思ってるし。

 潜在的には敵だぞ、直接殺したりできないから何もやってないだけで。


 別に、俺を見た記憶とかを消すくらい簡単だけど。

 でもそうだな、記憶を消すのは、もう少し様子見してからでもいいか。

 一回くらいは横江と行動させてみたいし、その為にはある程度信頼されてるらしい今の距離感は悪くないだろう。

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