表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どうも大家です、最近の悩みは住人が死なないこと  作者: 小城穂


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/9

102号室

 俺は今病院に来ている、見舞いだ。

 住人の一人が入院することになったらしいので、ちょっと様子を見に来た。


 うちのアパートに怪我人なんて、もう毎日のように出ているが、それでも病院に行ってしっかり治療をする人間は少ない。

 今の時代の人間は基本、何かあれば病院に行くと思っていたんだが、どうやらそうでもないらしい。

 理由は単なる病院嫌いから、真っ当な医者に見せるのは憚られる怪我だからってまである。

 医者に見せられない怪我とは、銃創でも出来てんのかね、それか人間には付けられない傷とか。


 そんな事はいいとして、今回入院したその住人、102号室の川本はうちでは珍しい医療機関のお世話になる人間だ。

 世間で見れば多数派なのに、ちょっと場所と視点を変えると少数派になる、愉快だな。


 川本は東洋人によくある黒い髪と目、二十代の一般的に見て端正な顔立ちの男だ。

 若い男らしく無謀で後先考えない行動がみられ、ある程度の欲望と凶暴さも持ち合わせている。

 友人を部屋に呼んで騒いだり、色んな女部屋に連れ込んだり、毎日楽しく生きているらしい。

 ちょっと女にだらしないところがあるからかよく浮気したなって詰め寄られてたりしてる、後はひたすら謝られてたり。

 それを部屋の前でやるから凄い、一切の躊躇なく泣きわめく人間を蹴って退かして、そのままドア閉めるし。


 前に嵌め外し過ぎたのか、人間を寸胴鍋で薬品に漬けて、溶かして排水溝から溶かしたこともある、骨砕いて海に撒いてた。

 その骨食った魚をまた人間が食べることになる、生物はそうやって循環しているんだろうね。


 個人的には一人二人殺したところでどうでもいいし、むしろどんどんやれって感じだけど。

 人間にとって殺人は犯罪だったはず、いいのだろうか、警察組織に捕まらないように多少は手を貸してやろう。


 そんな川本は今朝、一緒に住んでる彼女(金づる)に刺されて病院に運ばれた。

 その彼女は川本を刺して満足したのか、そのまま自分の首掻っ切って死んだが、川本は普通にそのまま救急車呼んで病院に運ばれていった。

 俺は俺で、まずは死んだ彼女の魂を回収してから自体の収集を図った。

 具体的にはちょっと警察の思考を弄って捜査を早々に打ち切らせ、今回の事件はもう終了ってことにした。


 これ以上警察に居座られるのは困るって住人が何人もいるからさ、うちのアパートの住人は警察見ると、うわっ警察だ!って反応する奴が多いのだ、仕方ないね。


「あれっ大家さん、どしたの?」

「お見舞い」

「おぉ、ありがとね」


 ニコニコと、愛想よく軽い感じの川本はとても元気そうだ。

 俺が持ってきた鉢植え見てちょっとびっくりしてるけど、明るく爽やかに笑っていて、とにかくとっても元気そうだ。


「体調はどんな感じ?」

「結構深く刺さったけど、なんか臓器には傷一つ付いてないらしい」

「へぇ、幸運」

「だよな! なんか直ぐ退院できるらしいし、ツイてる」


 否、うん、もうちょっとこう、刺された人間らしい反応して欲しいんだけど。

 例えば暗い顔したり、痛みに呻くとかさ、自分を刺した相手を恨むとか。

 この男別に強がってるわけじゃないんだよ、本気で一切気にしてない、多分もう次の金づるの事とか考えてる。


 切り替えが早いな、流石だ。

 マァ自力で救急車呼ぶような手慣れた奴だからな。

 流石このアパートに入居して二年、既に六回命狙われただけある。

 何で死んでないんだろうこいつ、死んでおけよホント。


 仕方ないので、今日はこの後病院内を見て回ることにした。

 手術室とか、後は高齢者や重病患者の病室って、ベッドに死人が寝てることがあるからさ。

 霊安室は流石に、もう他の死神に回収されてることが多いけど。

 それでも、魂が残ってたりするから損はないかと思い、見に行くことにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ