壺
横江視点
ちょっとホラー風味?
横江はちょっと大き目は木箱を抱えながら、自宅である203号室の部屋の扉を開けた。
手に持ってる箱が大きいので、頑張って片手で持ち上げて扉を開いた。
横江に、扉を開ける為に邪魔な荷物を一回地面に置く、という考えはないのだ。
部屋に入って、横江はいそいそと木箱の蓋を開け、中のものを取り出す。
「花瓶かな?」
箱の中に歯、厳重に何重にも重ねて包装された花瓶、ではなく壺らしきものが入っていた。
明らかに曰くがありそうな壺だ、札とか張ってるし。
けれど横江は一切気にせず、雑に札と梱包を剥がしていく。
「綺麗な花瓶だ!」
包装の中から、白い壺が出てきた。
掲げてみると何やらカラコロと軽い音が鳴ったので、小石でも入ってるのかと思ったが、横江は特に気にせず机の上に置いてみた。
「花瓶なら花を飾るべきか」
口が狭く底が広い、胴がふくらんだ形状の、壺である。
壺なので勿論、花を活けることもできるが、その壺は花を活けるにしては小さかった。
後いつまでも花瓶と間違えてやるのは可哀そうだから、さっさと壺だと認識してやるべきだろう。
けれど、横江には壺と花瓶の区別はつかないので、今後もこの壺は花瓶と呼ばれ続けることになる。
それが原因かは分からないが、その日から横江は妙に調子が悪かった。
というか運が悪かった。
躓いた拍子に階段から転がり落ちたり、喧嘩に巻き込まれて押された拍子に頭ぶつけたり。
行き成りトラックが突っ込んできたり、上から鉄骨が落ちてきたり、通り魔が刺殺しにかかってきたり。
本人は一切その事実を理解してないが、異常なほどぴんぴんしてるが、一応は結構命の危機に瀕していた。
なんだかもう運が悪いだけじゃ終わらなさそうだけど、でも本人は最近ツイてないなとしか思ってない。
そういえば、ちょっと怪しい壺を貰ったとか、その壺飾ってから運が悪いとか、白かった壺が最近ちょっと赤黒いとか。
そういう事実は認識しているけど、じゃぁそれが自分の運勢と関係あるとは思っていないというか、発想が出てこないというか。
横江には、因果関係、というものが理解できてなかった。
因みに、その壺を渡したのは横江がうっかりして潰しちゃったバイト先の元同僚だ。
当たり前だが、そんな呪いが付いてそうな壺を横江に渡した元同僚は横江の事が嫌いだった。
ちょっと気になる人の男性関係について大声で喚くし、その所為でその人バイト辞めちゃったし、ついでにバイト先も潰れたし。
これが可愛い女の子とかだったら、そいつも木箱の代わりにスマホを手に、横江と個人的な連絡先を交換し、今後も関係を持ってあわよくばって思ったかも知れない。
けれども残念、横江は見た目だけなら爽やかで人当たりのよさそうな好青年で、中身は頭の螺子が足りてないあっぱらぱーだった。
マァ可愛い女の子でも、頭の螺子が足りないある事実は変わらないけど。
でも美少女と野郎だったら、美少女の方が色々許したくなるのは世の男の真理な訳なので。
彼女にするのはちょっとアレでも、美少女なら仲良くしてるだけでちょっと気分が良くなるし。
そんな訳で、特別可愛くもない野郎の横江に、嫌がらせをしてやろうと偶然見かけた、怪しい露店に売られていた怪しい壺を適当な木箱に詰めて贈ったのだ。
さてそれから、どんどん日常生活に危険なコトがおこるし、寝苦しいし、なんだか夢見も悪い横江。
ただし、それらを全て最近調子悪いなってくらいにしか感じて無い横江。
危機感っていうのは理解できていないんだろうな。
そんな横江はそういえばちょっと前に貰った花瓶に、花を飾ろうとしていた、というのを花屋の前を通った時に思い出して、ちょっと寄ってユリの花を買った。
もちろん花束の形で買った。
他の花をお勧めされたが、百合を買うっていう意識しかなかったので、他の花を買う選択肢はなかった。
そして家に持って帰って、花を飾ろうと思っていた花瓶が小さくそのままだと一本の茎すら入りきらないことに気付いた。
見比べなくとも明らかに大きさが足りないが、そんな事を考えたことが無かったので横江は大変驚いた。
そして、仕方ないので一本だけ抜いて茎を切り、花瓶に活けた。
そしたらどういうわけか、その日からピタッと不運な出来事が収まった。
驚きな事実だが、横江は特別な何かが起こっていると理解できなかったので原因を追究することもなかった。
因みに花瓶ではなく壺である、と教えてくれるような奴はいなかったので、横江の中ではいつまでもその壺は花瓶である。




