表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/10

第四話 本物の“愛”って、こんなに見つからないものなのか

 紹介会の夜、宮殿の大広間は宴で沸き返っていた。


 ワインの香り、音楽の調べ、色とりどりの料理。俺の隣にはラミナが優雅に座り、並びにはツンデレ猫耳のルナ、年上サキュバスのミレーヌ、妹系妖精のナリがにぎやかに話しながら寄り添っている。


 「王としての威厳もだいぶ板についたわね」

 「透様、今日もとっても素敵よ♡」

 「ねー! あとでお兄ちゃんのお部屋いってもいい?」


 彼女たちは俺を笑わせようとしてくれる。会話を合わせて、甘えたり、褒めたり、俺を“満たして”くれる。


 ……そう。俺がかつて、現実世界で渇望してやまなかったものを。


 (でも、なんだろうな)


 満たされてるはずの胸の内に、妙な“乾き”がある。


 たとえば、俺が明日「金なんていらない」と言ったら。

 「王様なんて辞める」と言ったら。

 「チートの力なんてなくても生きていきたい」と言ったら。


 ……それでも、彼女たちは俺のそばにいてくれるだろうか?


 「透様?お顔が……疲れていらっしゃるようです」


 ラミナが小声で囁く。白くて細い指先が、俺の手にそっと触れた。


 「今日はお休みになられても……お疲れではありませんか?」


 優しい、気遣いの言葉。完璧な笑顔。


 でも、その言葉の裏にある“感情”が、どこかで薄っぺらく感じられてしまう。


 俺は無理やり笑って答える。


 「大丈夫だ、ラミナ。気にしないで」


 (こんなに優しいのに……どうして、俺は疑ってしまうんだ?)


 自分で作った世界なのに、自分で招いた理想の女性たちなのに。


 「透様ー! ワインおかわりはー?」


 猫耳のルナがグラスを掲げる。


 「私が注ぎますわ」

 「いえ、私が!」

 「ん~、じゃあ私がキスしながら注いじゃうっ!」


 ハーレムは騒がしく、にぎやかで、幸せに包まれていた。


 なのに、俺は――


 (“孤独”って、こういうことか?)


 騒がしさの中で、自分だけが取り残されていく感覚に襲われた。





 夜が更け、宴が終わり、部屋に戻ると。


 俺は一人、広すぎるベッドの上で天井を見つめていた。


 隣にラミナはいない。今日は「王様の安らぎの時間を尊重して」と、彼女のほうから下がってくれた。


 その配慮もまた、完璧すぎて――


 (……俺の事、本当に心配してくれてるのは誰なんだろうな)


 ふと浮かんだのは、あの少女だった。


 転生したばかりの草原で、最初に声をかけてくれた、地味で、平凡で、冴えない女の子。


 あのとき、あの子だけは、何の下心もなく、俺に「大丈夫ですか?」と手を差し伸べてくれた。


 俺は、その手を――払いのけた。


 (……なんで、今になって気になってるんだ?)


 寝返りを打ち、目を閉じようとする。けれど、まぶたの裏に浮かぶのは、豪華な美女たちではなかった。


 地味で素朴で、でも――あのときだけは確かに、“誰か”として見てくれていた気がする、あの娘のまなざし。


 (もしかして、俺が……一番、欲しかったものって……)


 胸の奥の“乾き”が、答えを告げるのを、俺はまだ、恐れていた。


 俺はまだ、このハーレムの中で、自分が“愛されている”のかどうかすら、分かっていなかった。


 でも、気づいてしまった。


 ――この楽園は、俺が作った「ごっこ遊び」にすぎないのかもしれないと。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ