「鏡よ鏡」でブチギレる女王の話。
鏡の最後の言葉は「ネット上でだけ」イキってる人物みたいなイメージ。
あるファンタジーな世界に、魔法を使って国を支配した邪悪な女王がいました。
女王は魔法の鏡を作り、征服した世界のすべてを見通すという力を鏡に与えました。
その鏡を使って反逆者を探り当てようという魂胆でしたが、すでに女王に反旗をひるがえそうという者もいなくなり、女王は退屈しておりました。
「鏡よ鏡。この世で一番強い者は?」
『もちろん女王です』
そんなやりとりをしているうちに女王は、べつの質問をしたくなりました。
「鏡よ鏡。この世でもっとも美しい者は?」
その質問を投げかけると、鏡は一瞬の沈黙のあと、鏡を曇らせました。
「どうしました? 鏡よ、答えなさい」
すると鏡の中のもやが集まり、人の姿を形づくりました。
しかしその姿はもやのままで、男か女かも判断できません。
『この世でもっとも美しいのは──』
鏡は間をおくと、つぎのように答えました。
『すくなくとも、あんたじゃないことは確かだな』
「なんですって」
女王は一瞬で顔を真っ赤にし、声を落として怒りの声を発しました。
『おいおい、まさか自分が美しいなんて思ってんじゃないだろうな? 勘弁してくれよ。おまえみたいな支配欲と独占欲にまみれた魔女なんぞが、いくら化粧を厚くしたって美しくなるわけね──だろ。
鏡を見たことがね──のか? ああ?』
思わず女王は鏡に向かって拳をたたきつけ、鏡を割ってしまいました。
口汚く罵った鏡は砕けて床に散らばり、二度と言葉を発することはなくなったのです。