第55話
元々雑乱だった収納部屋は秋山長雪の努力で整然となり、物はまだいっぱいだが、目に見えてさっぱりとしていて、以前よりも広く、狭くてつらい感じがなくなった。
秋山長雪は隅に積まれた雑物を指さして言った。「来て、見て、これは私がさっき片付けた雑物だ。チェックして、残したいものがあれば、不要なものは処理するよ。」
「こんなにたくさん？」薄葉夕夏は隅に山のように積まれた雑物にびっくりした。
「これだけじゃないよ、まだ完全に片付けてないんだよ！」
雑物と言っても、ほとんどは薄葉夕夏の両親が残した古い物だ。
座るとガタガタ音を立てる木の椅子、錆びた鉄の鍋、引き出しが閉まらない小さなキャビネット、摩耗の激しい棚…… 全部口を利かない時間の見守り人で、小さな家族が作られたこと、しゃべり合っている日常、戻れない時間を見守っていた。
使えない物を片付けないと場所を取るだけだ。
薄葉夕夏は懐かしそうにキャビネットの彫刻を撫で、目を閉じた。「これらの古い家具は不要だ、とにかく使えないんだ。」
「うん、じゃあ、後で中古買取りの阿桂おじさんを呼んで、持って行かせるよ。あ、彼は転職してないかな？」
「呼んでおけばいいよ、店はまだ角の昔の場所だ。」
阿桂おじさんはこの一帯の中古買取りの王様だ。薄葉夕夏の家族が住宅地に引っ越してくる前から、彼は中古買取りの業界に没頭している。彼は一日中散らかして、ぼろぼろの服を着ているけど、実は本格的な一世一代の金持ちだ。
「他の置いてある家具は、あなたが使うなら残して、使わないなら阿桂おじさんに一緒に持って行かせるよ。」
「オーケー！オーケー！」秋山長雪は親指と人差し指の先を合わせて、ok のジェスチャーをして、急にしゃがんで、隅に目立たない紙箱を抱き上げた。「あああ！そうだ、この箱はあなたの古い物みたいだ。私はざっと見たけど、手紙や雑誌が入って、あなたはまだ欲しい？」
「くれて。」紙箱を受け取って、薄葉夕夏は自分でいつこんな箱を収納したか覚えていない。彼女は紙箱を部屋に持っていき、すぐに開かないで、キッチンに戻って桃のクッキーを作り始めた。
前のバッチで作った桃のクッキーはすでに完全に冷めて、指で軽くつまんでも砕ける。
彼女は気をつけて一つ持って、流し台まで行って大いに食べ始めた。一口食べると、砕けた桃のクッキーの屑が手に落ちる。手を洗わずに、最後の一口を飲み込んで、手の中の屑をなめて、ポテトチップスを食べ終わって指をなめるように、一番儀式感のある終わりだ。
今回作る桃のクッキーは薄葉夕夏はもう少し作る予定だ。顧おじさんと季おじさんにパッケージしてあげる分を除いて、残りは全部店に置いて、オープンの特典として客にあげる。
一回目は初めて、二回目は慣れて、桃のクッキーを作るのは前回よりももっと手慣れて、あっという間に大きな生地を用意して、均等に小さな塊に分けて、二つのローストシートに並べた。
オーバーの桃のクッキーは焼き続けて、ベーキングの香りが絶えず漂って、だんだんとキッチンから周りに広がった。
収納部屋を片付けている秋山長雪は鼻をすすると、懐かしい香りをかいた。きっと桃のクッキーが焼き終わった。
食べることが一番大事だから、彼女は手に片付けていた仕事を投げて、「サッサッ」と階を降りて、最速でキッチンに駆け込んだ。「早く一つくれ！」
「窓際に置いたのは食べられるんだ。」薄葉夕夏は頭を上げないで答えた。
秋山長雪は二歩で、窓際に移動して、テーブルの上の鉄の網に整然と桃のクッキーが並んで、黒ごまが飾りになって、金褐色で亀裂があって、彼女の記憶の中の桃のクッキーの姿だ。
一口食べたら、彼女は大きな感嘆を漏らした。「わあ！！この味！！間違いない！」
「私が子供の時に食べた味とまったく同じだ。」彼女は振り返って、真剣に薄葉夕夏を見た。「夕夏、あなたは本当に料理の才能があるよ。」
「本当？」薄葉夕夏は自分では何も感じない。本当に才能があれば、すぐに違う料理を作れるはずだ。彼女はアイデアがなく、真似するしかできない。
「明日、私の両親が桃のクッキーを食べたら、とても嬉しいよ！」
薄葉夕夏が知っているところで、このお嬢様はとても気が強く、本当に怒ったら、一週間も仲直りしない。
彼女は無意識のように、実は試しに言った：「それはいいじゃないですか？彼らは喜んで怒りが消えて、あなたは順を追って家に帰れますよ。」
「そんなのだめだ！」秋山長雪は口をはやく、言ってしまってから、言ったことが間違っていることに気づいて、すぐ補った：「えっ... 私は、そんなことはありえないって言って、私の父は恨みっこなんだ... 彼は少なくとも三ヶ月怒って、落ち着くまで、とにかく簡単に私を許さないんだよ、あなたは私の意味を分かる？」
弁解は隠すことで、隠すことは嘘をつくことで、しかも彼女の弁解は貧弱だ。
薄葉夕夏は知らないふりをして、協力的に頭を振った：「わかります。」
「ドイン」、「ドイン」。
ベルの音が上手く合って、秋山長雪は急に跳び上がった：「阿桂おじさんが中古品を取りに来たんだ、私がドアを開く！」言い終わって、飛ぶように逃げた。
ドアの外は阿桂おじさんが弟子を連れて雑物を取りに来た。久しぶりに秋山長雪を見て、感慨深くて、興奮して、しばらくあいさつして、本題に入った。
薄葉夕夏は出て阿桂おじさんと彼の弟子に挨拶して、またキッチンに戻って桃のクッキーを作り始めて、何人かが階を上がるのを任せた。階を上がったり下がったりする騒ぎが終わって、彼女はパッケージした桃のクッキーを持ってドアに行った。
「阿桂おじさん、仕事は終わりました？お疲れ様でした。」
「疲れない疲れない、ちょうどあなたを探して、これは中古品を売ったお金だ、しっかり預けて。」阿桂おじさんは言いながら、ポケットから札束を取り出した。
「うん、あなたは聞いたでしょう、私の家の福気は明日再開します、あなたは昔から私の家で食べるのが好きだったから、今回再開して、あなたに私の腕前を味わってもらいます。」
さっき中古品を運んでいる時、秋山長雪はすぐに阿桂おじさんと彼の弟子に福気が再開することを伝えた。阿桂おじさんは口先だけで、心の中は消費するつもりがなく、今薄葉夕夏がまた言って、彼の顔にはイライラした表情が出て、でも口先だけで承諾した：「もちろん、暇があったら、絶対に応援に来ます！」
「じゃあ、ありがとうございます。これは私がさっき作った桃のクッキーだ、あなたが味わって、あなたの口に合うかどうか。明日オープンの初日に特別なイベントがあって、消費する客に桃のクッキーを無料でプレゼントします。」
阿桂おじさんの弟子の正樹は食べるのが好きな年齢だ、明らかに師匠より店のイベントに興味があった：「本当？明日プレゼントがもらえる？じゃあ、私も騒ぎに行く。」
「本当だ。」
阿桂おじさんはひそかに正樹の服を引っ張って、無意識に彼を睨んで、余計なことを言わないように合図した。振り返って、顔はやはり優しい表情だ：「いいいい、帰ってきっとよく味わうよ、私たちは先に行くよ、店にまだたくさん仕事がある。」
「じゃあ、気をつけて、さようなら。」
疾走する車の中。
阿桂おじさんは食べ物を聞いて馬鹿に笑う弟子を厳しく睨んだ：「さっきなんでそんなに早く承諾したんだ？」
「何？」正樹は意味が分からず、自分は何か愚かなことをして師匠を怒らせたのか？
「君は一日中食べることばかり考えて、一体どうしたんだ？言ってやるけど、明日騒ぎに行くなら、私を巻き込まないで、私は行かないんだ。」
正樹のまっすぐな脳がようやく理解した。元々師匠が言っていたのは福気が新しくオープンすることだ。
「どうしてですか、師匠？あなたは福気がこの一帯で有名な中華料理店だって言ったけど、ちょうど私はネットで好きなアンカーが中華料理を食べるのを見て、すごく口が渇いたんだ。明日一緒に食べに行こうよ、プレゼントももらえるし、いいですよ！」
「ふん。」阿桂おじさんは鼻で笑って、軽蔑して：「以前の福気なら、君が言わなくても私は行くけど、今は... やめよう！」
「師匠、これはあなたが偏見を持っているんです。新しい店主が店を開くということは料理のレベルが合格だということですよ。でなければ、彼女は悪く言われるのを怖くないんですか？私の言うには、明日味を試しに行きましょう。味が悪ければ、次は行かなければいいんですよ！私は彼女が送ったお菓子がいいと思いますよ、師匠、早く味を試して！」
「私は食べない、この袋を君にあげる、自分で食べろ。」阿桂おじさんは二つの袋の桃のクッキーを正樹のかばんに突っ込んで、その後手を叩いて、まるで触った桃のクッキーが汚い物だったかのように。
「へへ、じゃあ、遠慮しません！」正樹は一袋で足りないと心配していたけど、巧くも：「師匠、後でお菓子を私にあげて後悔しないでくださいよ！」
「安心して、小さな女の子が作った物は君のように口が悪い人だけが食べるんだ。」
「じゃあ、明日の昼、福気で食べに行きます、師匠、本当に一緒に行かないんですか？」
「行かない行かない！明日はラーメンを食べる！」阿桂おじさんはイライラして手を振った：「泣いて相談するなよ。」
「そんなことはありません！」
阿桂おじさんと正樹の会話を薄葉夕夏は知らない。彼女は秋山長雪と福気に何か新しい料理を加えるかを考えている。
「私は思うんですけど、野菜ご飯を加えるなら、昔ながらのビビンバも加えましょうか？それに、マラボンとネギ油入り麺も加えます。あっさりした味もあれば、濃い味もありますし、スープもたくさん作って、ご飯や麺に合います。」
「いいですよ！これらの料理はあなたが熟知して、作りやすいんです。」秋山長雪はメニューを変えることを支持して、彼女は福気のメニューを薄葉夕夏が得意な料理に全部替えたい：「ただ二つのご飯ですけど、もう一つの麺を加えましたら？完璧になりますよ。マラボンの客は麺かご飯を主食に選べます。」
「私もそう思いますけど、どんな麺が早く出せるんですか？」
これは本当に難しい問題だ。中国の麺の種類があまりに豊富で、一瞬で決めるのは本当に難しい。
「スープ麺を加えますか？乾いた麺も湿った麺も、客は好きな方を注文できます。」
「スープ麺......」薄葉夕夏はしばらく考えて頭を振った：「スープ麺はスープを煮るんですけど、私はまだ研究しなければ、勝手にメニューに加えるのはダメです。」
「じゃあ、混ぜ麺ですか。ホットドライ麺、ジャージャー麺、油そば、エンドウ豆ジャージャー麺、ポテトマッシュ混ぜ麺... あまりに多くて、選ぶのが難しい！」秋山長雪は落ち込んで頭を抱えた。
「ポテトマッシュ混ぜ麺？（土豆泥拌面）」
これは何の新しい料理か？薄葉夕夏は聞いたことがない。
「あ、最近中国で流行ってる食べ方です。ネットでとても人気があります。ポテトをつぶして、肉のジャージャーに混ぜて、麺と混ぜます。前に大人気のマーセライ混ぜ麺と似ていて、べったりした食感です。」秋山長雪は言いながら携帯を取り出して、ポテトマッシュ混ぜ麺のビデオを見つけて再生した。
「見て、見て、麺にポテトマッシュがついて、私もすごく口が渇いた！」
真っ白な麺に黄褐色のポテトマッシュ肉のジャージャーがついて、食べ物の生放送の大げさな表情と豊かな言葉の解説で、本当にとても誘惑される。
いくつかの作り方のビデオを見て、薄葉夕夏はすぐに決めた：「じゃあ、ポテトマッシュ混ぜ麺にしましょう！昼に一度作って試します。」
