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魔狼の咆哮と小さな違和感

AIへの指示>>

ルークが次の依頼(例:魔狼討伐)に挑戦し、魔法の同時発動に気づき始めるシーン。

ただし同時発動の気づきに関しては小さな違和感程度で確証を得ようと考えるよりも前の段階である

朝の光が宿屋「月影の灯」の窓から差し込む中、ルークはベッドから跳ね起きた。ゴブリン討伐の成功で得た銅貨10枚を握りしめ、胸には新たな挑戦への意欲が燃えている。

「よし、今日もギルドで依頼を受けて、もっと魔法を試してみるぞ!」

彼は荷袋を肩にかけ、短剣を腰に差して宿を出た。ゴブリン戦で自信をつけたルークは、次は少し難易度の高い依頼に挑戦しようと決めていた。街の石畳を踏みながら、昨夜の魔法訓練を思い出す。重力で敵を封じ、火や雷で攻撃し、空間で身を守る。あの戦術を磨けば、もっと強い敵にも勝てるはずだ。

冒険者ギルドに到着すると、掲示板には新たな依頼が貼られている。ルークは中ランクの依頼に目を向ける。

「魔狼討伐……報酬は銅貨30枚、か」

魔狼はゴブリンより素早く、鋭い牙と爪を持つ魔物だ。単体でも手強いが、群れで行動することもある。ルークは一瞬迷ったが、拳を握りしめる。

「これなら、俺の魔法で戦える。やってみる!」

受付で依頼を登録し、ルークは森の奥深く、魔狼の生息地へと向かった。



魔狼との戦い:新たな挑戦

森の奥は、ゴブリンの巣窟よりも暗く、湿った空気が肌にまとわりつく。木々の間を抜ける風が、かすかに唸るような音を立てる。ルークは短剣を握り、慎重に進んだ。ゴブリン戦での成功が自信を与えてくれたが、魔狼の素早さは脅威だ。

「落ち着け……魔法のコンボをうまく使えば、勝てる」

突然、茂みがガサッと揺れ、低い唸り声が響く。ルークが身構えた瞬間、灰色の毛皮に覆われた魔狼が姿を現した。目は赤く輝き、鋭い牙が朝日に光る。数は二匹。予想より少ないが、動きはゴブリンとは比べ物にならないほど素早い。

「くそ、速え!」

ルークは掌を前にかざし、魔法を発動する。

「重力よ、押さえつけろ!」

不可視の力が魔狼を押し潰し、一匹の動きがわずかに鈍る。だが、もう一匹は重力の範囲を抜け、ルークに飛びかかる。

「空間よ、ずらせ!」

ルークの叫びに、魔狼の爪が空を切り、攻撃が横に逸れる。空間魔法で軌道を歪めたのだ。

「よし、今だ! 火よ、燃えろ!」

小さな火の玉が魔狼の毛皮に命中し、焦げた匂いが広がる。魔狼が怯む隙に、ルークは次の魔法を放つ。「雷よ、走れ!」

バチッと火花が散り、魔狼がビクンと震えてよろめく。

ここで、ルークは無意識に複数の魔法を重ねていた。重力で一匹を封じ、空間で攻撃を回避し、火と雷で同時に追撃。ゴブリン戦でも似た感覚があったが、ルークはまだその異常さに気づいていない。ただ、戦闘の流れの中で、ほのかな違和感が胸に引っかかった。

「なんか……魔法がいつもよりスムーズに繋がってる気がする?」ルークは一瞬、首を傾げる。だが、魔狼の咆哮が思考を遮る。重力から解放された一匹が、怒り狂って突進してきた。

「まずい!」

ルークは咄嗟に叫ぶ。

「風よ、吹け! 土よ、動け!」

風の突風が魔狼の目をくらませ、同時に地面から土の塊が浮かび、魔狼の足元に叩きつけられる。土は脆く、大きなダメージにはならなかったが、魔狼の突進を一瞬止める。

「今だ! 重力よ! 雷よ!」

ルークは再び魔法を重ねる。重力で魔狼を地面に押し付け、雷で麻痺させる。動きが止まった魔狼に、火の魔法を連発。焦げた毛皮の匂いと共に、魔狼が悲鳴を上げて倒れた。

残りの一匹も、同じ戦術で仕留める。重力と時間で動きを封じ、空間で攻撃を回避し、火と雷でトドメ。戦闘は数分で終わったが、ルークは息を切らし、額に汗を浮かべていた。

「ハァ……ハァ……勝った、俺、魔狼に勝った!」

ルークは倒れた魔狼を見下ろし、拳を握る。ゴブリンより遥かに強い敵を、召喚獣なしで倒した。胸が熱くなり、自信が湧き上がる。



小さな違和感

ルークは魔狼の牙を討伐の証として切り取り、荷袋にしまう。空間魔法で荷物を収納すれば楽だが、魔力の消耗を抑えるため、今回は普通に持ち帰ることにした。森を抜け、街への道を歩きながら、ルークは戦闘を振り返る。

「重力で止めて、空間で回避して、火と雷で攻撃……うまくいったな。でも、なんか変な感じがしたんだよな」

ルークは眉を寄せる。戦闘中、魔法がまるで一つの流れのように繋がった瞬間があった。重力をかけながら雷を撃ち、火を放ちながら風を操る。まるで、複数の魔法が同時に動いているような感覚。

「いや、まさか。魔法って、一つずつしか使えないもんな」

ルークは首を振る。この世界では、魔法は一度に一つしか発動できないのが常識だ。召喚術が主流の今、誰もそんなことに疑問を持たない。ルークも、魔法学校でそう教わった。だが、胸の奥に小さな違和感が残る。

「でも、もし……もし、複数の魔法を一緒に使えたら?」

ルークは立ち止まり、空を見上げる。陽属性と陰属性の組み合わせが、もっとスムーズに、もっと強く発動したら、どんな戦い方ができるだろう?

「いや、考えすぎか。まだそんなレベルじゃないよな」

ルークは笑って頭を掻く。確証はない。ただ、違和感を覚えただけだ。それでも、彼はノートにこの感覚を書き留めようと決めた。

「宿に戻ったら、試してみよう。魔法を重ねてみるの、なんか面白そう」



ギルドへの帰還

ギルドに戻り、ルークは魔狼の牙を提出して報酬の銅貨30枚を受け取った。受付の女性が、少し驚いたように言う。

「魔狼をソロで討伐? あなた、召喚獣を使ってないのに、すごいわね」

「は、はは、ありがとう」

ルークはおどおどしながら笑う。ギルドの冒険者たちが、チラチラと彼を見る。召喚術なしで魔狼を倒したという噂が、すでに少しずつ広がり始めていた。

宿に戻る道すがら、ルークは銅貨の入った袋を握りしめる。

「これで、しばらくは生活できる。次はもっと難しい依頼に挑戦してみようかな」

蝋燭の灯火が待つ宿屋の部屋で、ルークは新たな魔法の訓練を始める準備をしていた。胸の違和感はまだ小さなものだが、それが彼の運命を変える鍵になるとは、誰も――ルーク自身すら――まだ知らなかった。



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