ギルドでの再会と初挑戦
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ルークがギルドで初依頼(ゴブリン討伐など)に挑戦するシーンとなります。
朝早くからギルドで初めてのソロ依頼を受けるルーク。偶然勇者パーティーと遭遇しお互い微妙な雰囲気に。
ぎこちない会話のあと、それぞれ別の依頼を受け別れることに。補足情報:とても重要な設定です。この世界で魔法を複数同時発動できるのは唯一主人公のみです。しかし、召喚術がメジャーな世界なので魔法の同時使用なんて常識はありません。今は主人公を含め誰もそのことに気づいていません。
朝日が街の石畳を照らし、冒険者ギルドの扉が開く音が響く。ルークは少し緊張した面持ちで、ギルドの受付ホールに足を踏み入れた。ぼろマントと擦り切れた荷袋、腰に下げた安物の短剣。荷物持ちだった頃の装備そのままの姿だが、胸には昨夜の決意が宿っている。
ホールは朝早くから賑わっていた。鎧を鳴らす戦士、召喚獣を連れた魔法使い、依頼の報酬を計算する商人風の冒険者たち。壁の掲示板には、羊皮紙に書かれた依頼書がずらりと並んでいる。ルークは深呼吸し、掲示板に向かった。
「よし、初めてのソロ依頼だ……簡単なやつから始めよう」
ルークは掲示板を眺め、低ランクの依頼を探す。薬草採取、荷物運び、ゴブリン討伐。ゴブリン討伐は危険だが、報酬が銅貨10枚と悪くない。昨夜の魔法訓練を思い出し、ルークは決めた。
「ゴブリンなら、俺の魔法でなんとかなるはず」
依頼書を手に受付に向かおうとした瞬間、ギルドの入り口が騒がしくなった。見ると、銀の鎧を輝かせる勇者アルヴィンと、彼を囲むパーティーメンバーが入ってきた。エレナの赤いローブが朝日に映え、炎のフェニックスが彼女の肩で優雅に羽を広げる。ガルドは巨大な戦斧を肩に担ぎ、豪快に笑いながら誰かと話している。聖女のユニコーンが、穏やかな光を放ちながらアルヴィンの後ろを歩く。
ルークの心臓がドキッと跳ねた。
「うわ、なんでこんなタイミングで……」
彼は咄嗟に掲示板の影に身を隠そうとしたが、遅かった。アルヴィンの青い瞳が、ルークを捉えた。
「ルーク?」
アルヴィンの声は穏やかだが、驚きが混じっている。彼が一歩近づくと、エレナとガルドもルークに気づいた。
エレナが眉を上げ、鼻で小さく笑う。
「あら、荷物持ち。まだ冒険者やってたの? やめた方がいいんじゃない? 危ないわよ?」
彼女の声には、いつもの棘がある。
ガルドはルークを一瞥し、興味なさそうに肩をすくめる。
「お前、ソロでやる気か? まあ、頑張れよ。死ななきゃいいな」
ルークは喉に詰まるものを感じながら、なんとか言葉を絞り出した。
「お、おはよう、アルヴィン……エレナ、ガルド」
彼はおどおどしながらも、背筋を伸ばす。
「俺、ソロで冒険者やってみることにしたんだ。今日は、初めての依頼を受けに来た」
アルヴィンの表情が柔らかくなる。
「そうか。ルーク、君がまだ諦めずに続けているなんて……少し驚いたよ」
彼は一瞬、言葉を選ぶように間を置き、「どんな依頼だ?」と尋ねた。
ルークは手に持った依頼書を見せる。
「ゴブリン討伐。森の外れに巣を作ってるらしい。低ランクだけど、俺にはちょうどいいかなって」
エレナが吹き出す。
「ゴブリン? ハハ、荷物持ちらしい選択ね。まあ、召喚術もないあなたにはそれくらいが限界でしょ。気をつけなさいよ、死んじゃったらアルヴィンが悲しむわ」
その言葉に、ルークの胸がチクッと痛む。でも、昨夜の決意を思い出し、平静を装う。
「うん、気をつけるよ。ありがとう、エレナ」
アルヴィンがエレナを軽くたしなめるように言う。
「エレナ、ルークは自分の道を選んだんだ。応援してあげよう」
彼はルークに向き直り、静かに続ける。
「ルーク、ゴブリンとはいえ、油断は禁物だ。もし何かあったら、ギルドに相談するんだぞ」
「う、うん、わかった。ありがとう、アルヴィン」
ルークは小さく頭を下げる。アルヴィンの優しさが、胸に温かくも重く響く。昔、彼を助けた時の記憶が、ルークの頭をよぎる。あの時も、アルヴィンはこんな風に俺を気遣ってくれた。
ガルドが話を切り上げるように言う。
「おい、勇者様、俺たちの依頼の確認しねえと時間ねえぞ。今日は『沼地のワイバーン討伐』だろ? さっさと準備しようぜ」
アルヴィンが頷く。
「ああ、すぐに行く」
彼はルークに最後に一瞥をくれ、「頑張れよ、ルーク」と小さく微笑んだ。
「うん、アルヴィンたちも……魔王討伐、頑張って」
ルークはぎこちなく答える。エレナが「ふん、余計なお世話」と呟き、ガルドが「じゃあな」と手を振る。勇者パーティーは受付の奥へ進み、ルークは一人、掲示板の前に取り残された。
微妙な空気が胸に残る。ルークは深呼吸し、気持ちを切り替える。
「よし、俺の戦いはこれからだ。ゴブリン討伐、絶対成功させるぞ」
森での初戦
ルークは受付でゴブリン討伐の依頼を正式に受け、街を出て森の外れに向かった。依頼書によると、森の小道脇にゴブリンの巣があり、商人の荷馬車が襲われているという。数は3~5匹程度。ルークの魔法なら、なんとか対応できるはずだ。
森に足を踏み入れると、木々の間から湿った土の匂いが漂う。ルークは短剣を握り、慎重に進む。昨夜の訓練を思い出し、魔法の組み合わせを頭でシミュレーションする。
「重力で動きを止め、火や雷で攻撃。空間で身を守り、無属性で魔法を防ぐ。いけるはず」
小道の先で、ガサガサと茂みが揺れた。ルークは身構え、掌を前にかざす。緑色の肌を持つゴブリンが3匹、棍棒を手に姿を現した。鋭い牙を剥き、キーキーと鳴きながら近づいてくる。
「よし、落ち着け……」
ルークは心の中で呟く。ゴブリンが一斉に突進してきた瞬間、彼は魔法を発動した。
「重力よ、押さえつけろ!」
ルークの掌から不可視の力が放たれ、ゴブリンの動きが一瞬鈍る。まるで足元に重い鎖が絡んだかのように、ゴブリンたちがよろめく。
「今だ! 火よ、燃えろ!」
ルークは火の魔法を放つ。小さな火の玉がゴブリンの毛皮に命中し、焦げた匂いが広がる。ゴブリンが悲鳴を上げ、棍棒を振り回すが、動きが遅い。
ここで、ルークは無意識に次の魔法を重ねた。
「雷よ、走れ!」
指先からバチッと火花が飛び、ゴブリンの一匹がビクンと震えて倒れる。ルークは気づいていなかったが、彼は重力と火、そして雷の魔法をほぼ同時に発動していた。
残りのゴブリンが怒り狂い、棍棒を振り上げて突進する。ルークは咄嗟に叫ぶ。
「空間よ、ずらせ!」
ゴブリンの棍棒が空を切り、攻撃がルークの横に逸れた。空間魔法で、棍棒の軌道を歪めたのだ。
「よし、最後! 風よ、切り裂け!」
風の刃がゴブリンをかすめ、浅い傷をつける。威力は低いが、ゴブリンは怯み、動きが止まる。ルークは最後に火の魔法を放ち、ゴブリンを仕留めた。
息を切らしながら、ルークは倒れたゴブリンを見下ろす。
「やった……俺、ソロで勝った!」
胸が高鳴る。召喚獣なしで、俺の魔法だけでゴブリンを倒した。初めての勝利だ
帰還と新たな気づき
ルークはゴブリンの耳(討伐の証)を切り取り、ギルドに戻った。受付で報酬の銅貨10枚を受け取り、疲れた体で宿に戻る。部屋のベッドに倒れ込みながら、戦闘を振り返る。
「重力で止めて、火と雷で攻撃して、空間で回避……うまくいったな」
ルークは満足げに呟く。だが、彼はまだ気づいていない。自分が複数の魔法を同時に使ったこと。それは、この世界の誰も成し得ない偉業だった。
蝋燭の灯火が揺れる中、ルークはノートに今日の戦いの記録を書き込む。
「次はもっと強い敵に挑戦してみよう。俺の魔法、もっと磨けば、絶対にやれる」
窓の外、夜の街が静かに眠る。ルークの冒険は、始まったばかりだった。