レベル54
五人が光の奔流から解放されると、視界に広がったのは予想を遥かに超えた惨状だった。
街の中心部に伸びる大通りは、瓦礫と砕けた魔法結界の残骸に覆われている。
遠くから立ち上る黒煙、断続的な爆発音、民衆の悲鳴――王都全体が戦場と化していた。
アルフレッドは咄嗟に剣を握り直す。
「奴ら……来ていたのか、セイセス=セイセス……!」
セレナも魔剣を抜き、空気を裂く冷たい視線で街を見渡す。
「市民を巻き込む前に叩くわ。全力で行くよ」
バルトは盾を肩に担ぎ、仲間を守る覚悟を示す。
「皆、身を低くして進むぞ。油断は禁物だ」
クレアは手を胸に当てて祈りの構えを取り、光のバリアを展開する。
「私たちも、ここで力を尽くしましょう」
ミリアは周囲の魔力の乱れを敏感に察知し、
「王都の結界が破壊されつつある……敵は都市の中心を目指している。急がないと!」
五人は互いに頷き、瓦礫の間を縫うように前進する。
途中、数体のセイセス=セイセスの尖兵が現れたが、アルフレッドの魔剣が閃き、セレナの魔剣が空間を裂き、バルトの盾が攻撃を受け止める。
クレアの祈りの光とミリアの魔法が連携し、攻撃の流れを完璧に制御する。
「先へ――!」アルフレッドの声が響き、五人は連携しながら王都中心部へ突き進む。
遠く、王都の中央塔――ギルド本部の方向からは、黒い影の軍勢が蠢く。
その先頭には、結界を破壊しつつ悠然と歩く人物の姿が見えた。
「……あれが、セイセス=セイセスの尖兵長……」
ミリアの声は低く、しかし冷静だ。
「奴を止めなければ、この都市は――」
アルフレッドは剣を掲げ、魔力を渦巻かせる。
「止める! 今度こそ、全力で止めるんだ!」
五人は一斉に加速し、瓦礫と爆炎を駆け抜け、黒影の軍勢へと突入した。
王都ロムルストの空は漆黒の雲に覆われ、雷光のように黒い魔力が街を裂いていた。
広場だけでなく、市街地、王宮前庭、運河沿いの街道――あらゆる場所で影の化生が跳梁し、建物の瓦礫が宙を舞い、民衆は恐怖に叫びながら逃げ惑っていた。
「これは……単なる尖兵の襲撃じゃない!」アルフレッドは魔剣を握りしめ、黒煙を踏み越えて進む。
セレナも魔剣を構え、建物の屋根伝いに跳び回りながら敵の側面を突く。彼女の斬撃が影の化生を切り裂くたび、瓦礫が飛び散る。
バルトは盾を高く掲げ、崩れた街路を進む市民を守りながら、敵の突進を受け止める。
「皆、気をつけろ!建物が崩れるぞ!」クレアが光の壁を繰り出し、爆発する魔力の衝撃から仲間と市民を守る。
ミリアは広場の中心で魔力を渦巻かせ、大規模な範囲攻撃で敵の波を押し返す。
王宮前庭では尖兵長の一人が影の化生を操り、王都の中央門を破壊しようと迫っていた。
アルフレッドは魔剣「位相断絶剣」を振るい、空間を裂く一閃で化生を吹き飛ばす。
セレナは側面から跳び込み、魔剣の連撃で尖兵長の防御を削る。
バルトが盾を振り上げ、突進する影の軍団を受け止め、クレアは祈りで魔力の衝撃を和らげる。
ミリアは魔法陣を広げ、黒煙に紛れた複数の敵をまとめて消し去る。
しかし敵は数を減らすどころか、別の地区から次々と襲来する。運河沿いの街道では、橋を覆う影の群れが市民を飲み込みかけていた。
「セレナ、こっちだ!」「行くぞ、アルフレッド!」バルトの声に合わせ、五人は全速力で運河域へと飛び込む。
魔剣と魔力が光と衝撃を放ち、瓦礫と水しぶきが混ざり合う。クレアの祈りで巻き起こる光の柱が、溺れかけた市民を救い、ミリアの魔力が水面を割って敵を打ち払った。
王都全域で起きる異常な魔力の奔流を背景に、五人は一歩も引かず、仲間と市民を守りながら敵を撃退していく。
「このままでは……王都そのものが崩れる!」アルフレッドの叫びが、雷鳴のように街に響く。
「私たちの力を……総力で叩き込むしかない!」ミリアが集中魔法を放ち、瓦礫と影を同時に吹き飛ばす。
やがて、五人の連携は完璧なものとなり、各地区で敵の進行を阻止し、民衆の避難もほぼ完了した。
王都中央広場に残る影の尖兵長を前に、アルフレッドは魔剣を天に掲げ、セレナが横合いから斬り込む。
バルトが盾で前衛を固め、クレアが祈りを唱え、ミリアが広範囲魔法で圧倒する――
ついに、王都を覆った大規模な襲撃は、五人の力によって食い止められつつあった。
だが、遠くで新たな黒煙が立ち上り、影の群れの増援の気配が漂う。
「まだ……終わってはいない……」アルフレッドは静かに言い、魔剣の光を研ぎ澄ませた。
黒煙が立ち込める王都ロムルストの街中、五人のパーティは影の化生の波と戦いながらも、周囲に目を配っていた。
中央広場の戦線では、王国軍の重装歩兵たちが盾の壁を形成し、投石や槍で影の群れを食い止めている。馬上の騎兵は側面から突撃し、瓦礫の山を跳び越えながら敵を圧倒する。
「王都全域でこれほどの襲撃が……」アルフレッドは暗雲を仰ぎ、魔剣の光で敵の突進を受け止める。
セレナは高台から跳び降り、魔剣の連撃で影を切り裂き、バルトは重装で市民の避難路を守る。クレアの祈りが広範囲の光壁となり、民衆を安全に導いた。
ミリアは中央広場に魔法陣を描き、王国軍の前線を支援しつつ、空中から迫る影も一掃する。
街道沿いでは他の冒険者ギルドの隊も奮戦していた。火炎や氷結魔法で敵の侵攻を食い止める者、重戦士や剣士が盾を重ねて前線を維持する者、弓兵や魔法戦士が高所から援護射撃する者――王都全域が一つの大きな戦場と化していた。
運河沿いの橋では、影の群れが市民を巻き込もうと迫る。そこに王国軍騎兵とギルド隊が駆けつけ、バルトとクレアも合流。セレナの魔剣の一撃で橋上の敵は吹き飛び、ミリアの魔力で水面を震わせて侵入を阻止した。
王宮前庭では、影の尖兵長が王城を目指して進撃していたが、王国の精鋭部隊が盾の列を作り、その進行を食い止める。アルフレッドが魔剣で空間を裂き、セレナが側面から斬り込み、バルトが盾で受け止める。ミリアの魔法とクレアの祈りが重なり、王宮前の防衛線は辛うじて維持される。
だが、街全体に広がる魔力の濁流は、敵が単なる尖兵ではなく、セイセス=セイセスの大規模侵攻であることを示していた。新たな黒煙が次々に立ち上り、増援の影が街角から飛び出す。
「まだ……終わらない……」アルフレッドは歯を食いしばり、魔剣の光を研ぎ澄ませた。
「私たちの力だけじゃなく、皆の力も必要だ!」セレナが叫ぶ。ミリアの魔力が高まり、バルトとクレアも集中を増す。
五人のパーティは王国軍や他の冒険者たちと息を合わせ、王都全域で発生している戦闘を次第に押し返していく。しかし、影の尖兵長たちの背後には、まだ明らかにならないセイセス=セイセスの真の狙いが潜んでいる――。
街全体が黒煙と魔力の濁流に包まれる中、影の尖兵長たちを撃退した王国軍とギルド隊は、一瞬の静寂を得た。しかし、その静寂は長くは続かなかった。
「……来たわね」ミリアが天を見上げ、薄く眉を寄せる。
王都中心部、王宮の近くの空間が歪み、漆黒の霧の中から巨大な人影が現れる。鎌のような武器を携え、全身から異様な魔力が溢れ出すその存在は、セイセス=セイセスの幹部――魔導戦士級の刺客、セイセス・ノクターナだった。
アルフレッドは魔剣を構え、仲間たちに目配せする。
「全員、集中だ。ここで止める!」
バルトが盾を高く掲げ、王国兵と民衆を守りながら前線を維持する。
セレナは跳躍し、空中から魔剣を振るい、敵の奇襲を受け流す。
クレアは広範囲の祈りで味方の傷を癒し、攻撃と防御のバランスを整える。
ミリアは魔法陣を展開し、王都の大通りを守るバリアを形成する。
セイセス・ノクターナは闇の霧を振りまき、街路に影の化生を生み出した。それは五人のパーティだけでなく、王国軍、ギルド隊をも包み込む。だが、アルフレッドの魔剣が霧を切り裂き、セレナの魔剣が影を斬り裂く。バルトとクレアの連携で市民を守りながら進み、ミリアの魔力が濁流を制圧する。
市街地の広場では、王国騎兵と冒険者ギルド隊が一斉に突撃。セイセス・ノクターナは高く跳躍し、闇の刃を振るって応戦するが、アルフレッドが魔剣を旋回させ、斬撃で押し返す。セレナの側面攻撃、ミリアの魔法、バルトの防衛線、クレアの祈りが完全な連携を見せ、敵幹部は次第に形勢を崩していく。
「ここで……止める!」アルフレッドの声に、仲間たちは一斉に力を集中させる。五人の攻撃が合わさり、セイセス・ノクターナの闇の力を一瞬の光で切り裂く。
しかし、幹部の残存魔力が街を揺らし、未だ全ては終わっていないことを告げていた――セイセス=セイセスの真の目的が、王都の完全制圧であることを示すかのように。
王都の大通りは、黒煙と瘴気に包まれていた。瓦礫に覆われた街路、燃えさかる屋根、逃げ惑う民衆の悲鳴――その全てが、セイセス=セイセスの侵攻の爪痕だった。だが、最前線には確固たる防衛線があった。王国軍の騎兵隊、冒険者ギルドの精鋭たち、そしてアルフレッドたち五人のパーティである。
「全員、集中するぞ!」アルフレッドの声に、仲間たちは魔剣や魔法の手を構えた。
目の前には、セイセス・ノクターナが立つ。幹部の魔力が黒い霧となって街を覆い、影の化生が群れを成して襲いかかる。だが、五人は完璧な連携で応戦する。
アルフレッドの魔剣が霧を切り裂き、斬撃の衝撃で影の化生を粉砕する。セレナが空中に跳躍し、旋回しながら魔剣で側面の敵を斬り裂き、攻撃の角度を変えて幹部を追い詰める。
バルトは盾を高く掲げ、瓦礫と霧を押し返しながら民衆と王国兵を守る。クレアの祈りは味方の傷を癒し、防御魔法を強化する。ミリアは魔力を集中させ、都市の大通りに広範な防壁を展開し、敵の広域攻撃を無効化する。
幹部の黒い刃が閃き、街路に影の波を打ち付ける。だが、アルフレッドの魔剣がそれを正確に迎撃し、セレナが側面から斬り込む。バルトとクレアの連携で防御を固めつつ、ミリアの魔法陣が周囲の空間を揺るがす力場となる。
「これで終わらせる!」アルフレッドの声に、五人の力が一点に集まった。
アルフレッドの魔剣が光を帯び、セレナの魔剣と交差し、バルトの盾とクレアの祈り、ミリアの魔法が全て同期する。黒霧が一瞬光に変わり、セイセス・ノクターナはその力に押し込まれた。
幹部は断末魔の咆哮をあげ、影の化生と共に爆散する。王都の上空に漂っていた瘴気も徐々に消え去り、瓦礫の合間に微かな光が差し込む。
アルフレッドは深く息を吐き、魔剣を静かに下ろした。「……これで、王都は守られた」
セレナはアルフレッドの隣で微笑み、バルトは街を見渡して瓦礫の整理を始める。クレアは傷ついた市民に駆け寄り、ミリアは崩れかけた街路を安定させる魔法を展開した。
遠くの空には、戦闘の余波として立ち上る煙だけが残る。しかし、王都ロムルストはまだ生きていた――そして、五人の勇者たちは、その守護者として立ち続けていた。
王都ロムルストの街路はまだ瓦礫に覆われ、修復作業が急ピッチで進められていた。王国軍は都市の防衛線を再編し、冒険者ギルドも現地支部を設置して残存する影の化生の掃討にあたっている。五人のパーティも、アルフレッドを中心に王都魔術院の指揮下で動いていた。
「まずは列石の異常を確認する必要がある」
アルフレッドは瓦礫の中で魔剣を握り直し、ミリア、セレナ、バルト、クレアとともに列石跡地へ向かった。
列石周辺には、戦闘で生じた瘴気の残滓が漂い、黒い霧が地面を這うように広がっている。ミリアは魔力で空間を安定させながら、破損した結界の痕跡を観察した。「結界の魔力が完全に破壊されているわ。痕跡からすると、幹部が意図的に歪めたようね」
セレナは鋭い目で周囲を警戒しつつ魔剣を構える。「こんな歪み、自然に起こるものじゃない。セイセス=セイセスの仕業だわ」
バルトは盾を地面に突き立て、瓦礫を踏みしめながら分析する。「戦闘時の魔力波動も残ってる。これだけの力を使えば、王都全域に瘴気が撒かれたのも納得だ」
クレアは列石の中央に近づき、祈りを捧げる。「被害を受けた民や兵士の魂も、こうして守られるはず。早く異常の核を特定しないと」
アルフレッドは魔剣の刃先を列石の中心に向け、光を放つ。「俺たち五人の力で、異常の核を突き止める。これ以上、セイセス=セイセスの好きにはさせない」
列石の中心に近づくと、魔力の流れが一箇所に集中しているのがわかった。かすかな振動と、黒い光が瞬く。幹部が最後に残した「痕跡」、つまり異常生成の根源がそこにある。
ミリアが呟く。「あの黒光……ただの魔力じゃないわ。何か……意思を持っているみたい」
アルフレッドは剣を握り直し、全員を見渡す。「よし。次はここを封じる。セイセス=セイセスの狙いが何であれ、この列石を止める。それが、王都を守ることになる」
五人は列石の異常に対して連携を開始した。魔剣による斬撃で魔力の結界を断ち、ミリアの魔法で歪んだ空間を安定させ、セレナが側面から闇の残滓を斬り裂く。バルトが盾で強制的に魔力波を押し返し、クレアの祈りが全体を守る光となる。
列石の中心で、かすかな光が爆ぜ、黒光が弾ける。その瞬間、列石の異常は完全に沈静化した。周囲の瘴気は消え、残っていた影の化生も消滅する。
「……これで、とりあえずは安全だ」
アルフレッドは魔剣を地面に突き立て、深く息を吐いた。
セレナは肩の力を抜き、少し笑みを見せる。「ふう、やっと落ち着いたね」
ミリアは列石の魔力残滓を封印しながら、冷静に分析を続ける。「でも、これで終わったわけじゃない。痕跡からすると、セイセス=セイセスの本体はまだ動いている」
バルトが盾を地面に置き、仲間を見渡す。「なら次は……ギルドと王国軍の情報網を頼るしかないな」
クレアは祈りを終え、仲間の元へ歩み寄る。「まずは王都を守り、民を安心させること。それから、セイセス=セイセスの全貌を突き止めましょう」
アルフレッドは列石の中心を見つめ、静かに言った。「……ああ、必ず終わらせる。俺たちの手で」
こうして、王都ロムルストでの列石事件はひとまず沈静化したが、秘密結社セイセス=セイセスの影は、まだ世界のどこかに潜んでいる――五人の冒険者の戦いは、次なる段階へと進むのだった。
王都ロムルストの冒険者ギルド――重厚な木製の梁と石造りの床を持つ作戦室には、戦後の静けさと緊張が混ざり合った空気が漂っていた。窓の外には穏やかな朝の光が差し込み、夜通しの戦いの疲労を映し出している。
アルフレッドは魔剣を背に斜めに構え、疲れた表情を見せつつも、目の奥には鋭い光が残っていた。ミリアは机に手を置き、魔力の残滓を調べながら、まだ微細な異常が残っていないか慎重に確認している。重戦士バルトは鎧の肩当てを外し、膝をついて深く息をつく。魔法戦士セレナは剣を軽く振り、感触を確かめるようにして体をほぐしていた。僧侶クレアは、仲間たちの小さな傷を手当しながら、祈りの声を小さく繰り返している。
作戦室の奥、重厚な扉が開き、ギルド長が入ってきた。彼は机の前に歩み寄り、全員を見渡す。
「よくやってくれた、皆。王都は……なんとか守られた」
その声には安堵が混じるが、同時に戦況の厳しさを伝える重さもあった。「だが油断はできない。セイセス=セイセスはまだ動きを見せている。今回の列石事件は、単なる前哨戦に過ぎないかもしれん」
アルフレッドが剣の柄を握り直す。「了解だ。俺たちは王都を守るために全力を尽くした。だが、彼らの目的はまだ明確ではない」
ミリアは静かに頷く。「列石に残された魔力の痕跡から判断すると、セイセス=セイセスは王都全体を操作の拠点にしようとしていた可能性があります。今回の防衛で完全に阻止できたとは言えません」
バルトが低く唸る。「つまり、奴らはまだ潜んでいる。王都全域を狙う準備を進めているかもしれない、ってことだな」
セレナは鋭い目で地図を見つめる。「西方への進出も視野に入れている可能性がある。ゲルマーシア王国との国境付近でも、列石や古代遺跡を利用して拠点を築こうとするだろう」
クレアは仲間たちを見回し、穏やかに言った。「まずはここで、王都の被害を最小限に抑え、残った列石や魔力の痕跡を整理する必要があります」
ギルド長は作戦室の地図を指差し、王都各所の異常箇所を確認しながら続ける。「幸い、今回の防衛で市民の被害は最小限だ。しかし列石の異常は依然として残っている。アルフレッド、ミリア、バルト、セレナ、クレア――お前たちに再度調査と封印の任務を頼みたい」
アルフレッドは剣の柄を握り、仲間を見渡した。「わかっている。全力でやろう。王都を守るのは俺たちの責任だ」
ミリア、バルト、セレナ、クレアもそれぞれ頷き、戦いの疲労の中でも決意を新たにする。
窓の外、王都の街は静かだ。しかしその静けさの裏で、セイセス=セイセスの影は次の行動を待っている――。
冒険者ギルドの作戦室での打ち合わせを終え、アルフレッド、ミリア、バルト、セレナ、クレアの五人は、王都北方に残る列石の残滓へと向かった。街の雑踏を抜け、古い石畳の道を進むと、やがて夜の戦闘で荒れた大通りが目の前に広がる。瓦礫の山、焦げ跡、消えかけた魔力の残滓――戦いの痕跡は一目で分かった。
「ここまで大規模に結界が乱れるとは……」
ミリアは地面に跪き、残滓の魔力を指先で感じ取りながら呟いた。微かに残る結界の波動が、まるで何者かの意思に呼応して揺れている。
アルフレッドは魔剣の刃を軽く叩きながら、周囲を警戒する。「ただの魔力残滓じゃない。誰かがまだ意図的に触れている痕跡がある」
重戦士バルトは瓦礫の間を歩き、腕で壊れた街灯を押さえながら地形を確認する。「王都北方の列石……戦闘で壊れたとはいえ、結界の乱れがまだ安定していないな。近くに何か残っている可能性がある」
セレナは魔剣を構え、空気を斬るように軽く振る。「私にも微細な魔力の波動が感じられる。列石の残滓に結界が絡みついている……まるで生きているように」
クレアは呪文を唱え、周囲の魔力の流れを可視化する。「この結界の歪み、見えますか? 瘴気のように漂って、古代魔法の残響が混ざっている……」
アルフレッドが顔をしかめる。「……セイセス=セイセスの痕跡だな。こいつら、まだ列石を使って何かしようとしている」
ミリアは地面に触れ、淡く光る魔力の残滓を集める。「封印のためには、この残滓を一つずつ浄化する必要があります。勝手に結界が崩れると、予想外の瘴気が噴き出す危険もある」
バルトは仲間を見渡す。「俺たち五人でやるしかない。アルフレッド、指揮は任せる」
アルフレッドは魔剣を掲げ、決意を込めて言った。「よし、全員準備はいいか? 魔力残滓の浄化と結界の安定、同時に警戒も怠るな」
五人はそれぞれの役割を意識して動き出した。
アルフレッドは魔剣を振り、結界の暴走する魔力を斬り裂きながら安定化させる。
セレナは魔剣を舞わせ、残滓を封じ込めつつ、時折揺れる結界の歪みを補正する。
ミリアは精密な魔力制御で結界の残響を分析し、封印の魔法を繰り返す。
バルトは物理的な障害を押し退けつつ、仲間の安全を確保する。
クレアは祈りと補助魔法で魔力の流れを安定させ、万が一の暴走に備える。
しばらくして、アルフレッドが唸る。「この痕跡……完全には浄化できない。誰かが遠隔で結界を操作している」
ミリアは眉をひそめる。「列石の残滓に残る指紋……これは……セイセス=セイセスの魔導師のものね。ここから王都全体に向けて、さらなる異常を引き起こす可能性がある」
バルトが拳を握る。「……奴ら、まだ王都を次の戦場にするつもりか」
セレナが遠くの街並みを見やり、魔剣の刃先を光らせる。「まずはこの列石の異常を封じる。それが終わったら、王都全域の監視体制を整えよう」
クレアも頷く。「王都民を守るため、できる限りの備えを」
アルフレッドは仲間たちの顔を見渡し、力強く剣を握った。「わかった……行くぞ、全員」
こうして五人は、列石の残滓と結界の異常の核心に向かって調査と封印の作業を進める。街は静かだが、その沈黙の中に、セイセス=セイセスの影がまだ潜んでいることを、彼らは肌で感じていた。
列石の残滓はまるで生きているかのようにうねり、微細な魔力が大気を揺らす。アルフレッドは魔剣を握りしめ、その刃先に自身の魔力を注ぎ込む。刃が光を帯びるたび、乱れた結界の魔力が微かに押し返されるのを感じた。
「セレナ、魔力の波動を俺と同期させろ」
アルフレッドの声に応じて、セレナは魔剣を掲げ、刃に込める魔力を結界の振動と呼応させる。彼女の魔力が空間に走り、微細な波紋を描くと、結界の乱れが一瞬だけ鎮まった。
「今だ、ミリア!」
アルフレッドが合図を送り、ミリアは両手をかざす。掌から放たれる光の糸が、結界の亀裂に絡みつくように伸びる。糸は結界の残響に吸い込まれ、古代魔法の紋様を描きながら、微かに光を帯びる。
「歪みを封じ込めながら、残滓を吸収する……」
ミリアの呟きに、クレアが祈りを捧げ、聖なる光の盾を結界の周囲に展開する。盾は暴走する瘴気を和らげ、仲間たちの作業空間を守るバリアとなった。
バルトは足場の悪い瓦礫の上を安定させながら、倒れかけた石柱を支える。彼の巨躯が物理的な安全を確保することで、アルフレッドとセレナは魔剣の刃を結界に突き刺すように振るえる。
「よし、波動が安定してきた……あと一息だ」
アルフレッドが低く息をつき、魔剣を空中に掲げる。刃先から放たれる魔力の奔流が、結界の亀裂を貫通するように浸透していく。
セレナの魔剣が空間を切り裂くと、結界の残響が微細な音を立てて消え、亀裂が白い光で縁取られる。ミリアがその光を取り込み、魔力の糸で結界全体を包み込む。光が収束するたび、結界の歪みは徐々に消え、瘴気の渦が穏やかになっていった。
クレアは慎重に聖光を注ぎ、微細な残滓を浄化する。光が触れると、地面の亀裂から揺らめいていた瘴気は静かに消え、風に溶けるように消散した。
バルトは最後の確認をしながら呟く。「これで……大丈夫だろう」
アルフレッドは魔剣を下ろし、結界の中心に残る微弱な波動を感じ取りながら頷いた。「……完全には消えきっていない。だが、今は安定している。誰かが遠隔で触れなければ、この列石は暴走しないだろう」
ミリアも肩の力を抜き、仲間たちを見渡す。「ここまでくれば、王都に被害が及ぶ危険は一時的に抑えられる。封印作業、成功ね」
セレナは魔剣の刃を空に掲げ、静かに微笑む。「ふぅ……久しぶりに全力を使った気がする」
クレアは一礼し、仲間たちの安否を確かめる。「皆、無事でよかった……」
アルフレッドは刃を鞘に納め、仲間たちの肩越しに列石の残滓を見つめる。微かに揺れる残響の中で、まだセイセス=セイセスの影が潜んでいる気配を感じながらも、今はただ、王都の安寧を守った達成感が胸に広がった。
列石の封印作業を終えたアルフレッドたちは、王都ロムルストの冒険者ギルド本部に戻っていた。大広間の窓からは、夕陽に染まる王都の街並みが見渡せる。長い戦闘と封印作業で疲弊した身体を、仲間たちは椅子に腰掛け、互いに軽く息を整えていた。
ミリアは手を膝の上で組み、疲労の影を濃くした顔をアルフレッドに向ける。「結界は安定しているようね。でも……この列石だけが問題じゃなさそうね」
アルフレッドは魔剣を脇に置き、窓の外を見つめながら答える。「セイセス=セイセスの影はまだ完全には消えていない。奴らは次の標的を探しているはずだ」
バルトは重く溜息をつき、拳を机に置いた。「王都に被害が及ばなかったのは幸運だ。だが、この国一国だけで彼らを封じ込められるわけではない」
そのとき、ギルドの情報官が慌ただしく部屋に入ってきた。手には魔法通信石が握られており、空気は緊張に包まれる。
「アルフレッド殿、各位! 緊急の報告です。西方、ゲルマーシア王国で異常が発生しました!」
全員の視線が一斉に情報官に向く。アルフレッドはすぐに立ち上がり、仲間の顔を確認する。「詳細を聞かせろ」
情報官は深呼吸して続ける。「王都リョーデルの上空に、黒衣の魔導士ザカリー・グラッドストンが率いる『天空帝都』が出現しました。巨大な浮遊居城です。さらに、帝都から闇の魔物が各地に放たれ、ゲルマーシア全土でセイセス=セイセスの戦力が蜂起しています」
セレナの魔剣がわずかに光を帯びる。「……また、奴らか。王国全土を巻き込む気か」
クレアは手を胸に当て、深刻な表情で呟く。「王国軍と貴族たちも防衛に当たっているけれど、各地で激戦が発生している……このままでは被害は拡大するわ」
バルトはテーブルを叩き、力強く言う。「よし、俺たちも動くぞ。王都リョーデルに援軍を送るか、被害の最も大きい地域へ向かうか――まず状況を把握する必要がある」
ミリアは地図を広げ、魔力で戦況の情報を映し出す。「天空帝都は魔法的な障壁で周囲の通信を遮断しているようです。直接接近できるのは王国軍の精鋭部隊のみ。ですが、放たれた闇の魔物の被害は急速に拡大しています」
アルフレッドは魔剣を握り直し、仲間たちを見渡す。「俺たちがここで止められるかどうかが鍵だ。王都を守り、被害を最小限に抑える。覚悟はいいか?」
「もちろん!」
「行くわよ、みんな!」
「俺もだ!」
「全力で支援する」
五人は立ち上がり、戦のための準備を整える。王都ロムルストの夕陽が、鋭い影を彼らに落とす中、ベラルテ王国の英雄たちは西方の新たな戦場へ向かう決意を固めていた。
だが、その眼前に広がるのは、これまでにない規模の戦乱――ゲルマーシア王国全土での、セイセス=セイセスによる侵攻の脅威であった。
夕闇がベラルテ王国王都ロムルストを包むころ、アルフレッド、ミリア、バルト、セレナ、クレアは王都の外郭を抜け、西方へと延びる幹線道路を進んでいた。道中、馬車や徒歩の冒険者たちが慌ただしく行き交い、王都から出発する避難民の姿も散見された。空は暗雲に覆われ、遠くには雷光が時折走る。
アルフレッドは魔剣を斜めに構え、周囲の気配に神経を研ぎ澄ませる。ミリアは魔力の感知を行い、あたりの魔力の乱れを調べながら、同行者の安全を確認していた。
「不穏な気配が……西方の国境に近づくにつれ、明らかに魔力の乱れが強まっているわ」
ミリアの声に、バルトが唸る。
「奴らの手が、もう国境まで届いているのか……」
セレナは魔剣の柄を握りしめ、足取りを早める。「気を抜くな。少しでも油断すれば、闇の魔物に襲われる」
クレアは祈りの手を胸に当て、穏やかに仲間を見渡す。「全員、心を集中させて。私たちの力で守れる命があるわ」
西方への道は平原と小高い丘が続く穏やかな地形だったが、ところどころ地面が焦げた跡や、異様な瘴気の漂う小さな谷が見えた。アルフレッドたちは、魔物の痕跡と見られる不自然な地脈の乱れに足を止める。
「……ここか。奴らの手先が先行しているな」
アルフレッドは魔剣を高く掲げ、仲間に合図を送る。
その瞬間、霧のような黒い瘴気が丘の向こうから立ち上り、異形の影が形を成して現れた。四肢を異様に曲げ、光を吸い込む黒い鱗のような皮膚を持つ魔物たちだ。魔力の波動が周囲の空気を歪め、地面には亀裂が走る。
「来たわね……」セレナが前に進み、魔剣を振りかざす。刃先から微かな光が迸る。
アルフレッドもすかさず魔剣を構え、前衛で防御と斬撃を同時に繰り出す。「バルト、前を押さえろ。ミリア、範囲魔法で奴らを分断せよ!」
バルトは大盾を掲げ、飛びかかる魔物の群れを受け止める。「ぐっ……この数は――!」
ミリアは杖を使わず、手のひらから直接魔力を放ち、瘴気を押し返す。「《氷霜結界》!!」
氷の結界が魔物たちの進行を一時的に遮り、彼らの動きを鈍らせる。
クレアは祈りを唱え、癒しの光を仲間に届けながら、魔物の動きを封じる。「《聖光の鎖》、束縛せよ!」
アルフレッドは跳躍し、魔剣で一体の魔物を斬り裂く。光と影が入り混じる刹那、魔剣の魔力が周囲に波動となって伝わり、他の魔物たちも後退する。
セレナは軽やかに動き、側面から斬りかかる。「よし、まとめて押し返すわ!」
バルトが盾で前線を固め、アルフレッドとセレナが連携して魔物を次々と切り伏せる。ミリアの魔力の波動が戦場を覆い、クレアの聖光が後方支援として全体を支える。
戦闘は一瞬の緊張と集中の連続で、空気は魔力の渦に震えた。だが、アルフレッドたち五人は互いの動きを把握し、連携を乱さずに戦い抜く。最後に、アルフレッドの魔剣が黒い瘴気の塊を斬り裂き、残存する魔物もミリアの結界とクレアの聖光で浄化された。
戦場には静寂が戻る。西方の平原には、焦げた地面と消え残る瘴気だけが残った。五人は互いに息を整え、再び歩を進める。
「……最初の波はなんとか凌いだわね」
セレナは魔剣を肩にかけ、周囲を警戒する。
「だが、これが序章に過ぎない。王都リョーデルでの戦いは、もっと熾烈になるだろう」
アルフレッドは険しい表情で前を見据える。
ミリアが地図を広げ、次の進路を示す。「王都まではまだ距離がある。魔物の群れがさらに増えている可能性が高いわ」
バルトは重く頷き、盾を肩にかける。「俺たちは、どんな道でも切り開いて進む」
五人は再び西方への道を進み始める。遠くの地平線に、暗黒の浮遊都市――天空帝都の影が微かに揺れて見える。王都リョーデル上空に現れたその姿は、彼らの足をさらに速めさせるには十分だった。
西方への道を進むアルフレッド、ミリア、バルト、セレナ、クレアの五人の前方に、濃い瘴気が立ち込める丘陵地帯が広がった。空を仰ぐと、暗雲の隙間から巨大な浮遊都市――天空帝都が、王都リョーデルの上空に不気味に浮かんでいた。その下には闇の魔力の渦が渦巻き、都市の外郭から闇の魔物たちが次々と降下している。
「これが……ザカリー・グラッドストンの出現した都市か……」
アルフレッドは魔剣を握りしめ、眼前の光景に眉を寄せる。大気は濃い魔力に押し潰されそうで、地面すら揺れているかのように感じられた。
「数が多すぎる……!」
セレナも魔剣を構え、影のように静かに前衛を取る。魔剣の刃先がわずかに光を放ち、瘴気を切り裂く。
「油断するな。王都を守るためには、この第一波を凌がねば!」
バルトは大盾を高く掲げ、前方の開けた平原に降りてくる魔物を押し返す構えを取った。
空から降下してくる魔物たちは、翼の生えた異形の獣、黒い瘴気の塊、鋭利な爪と牙を備えた戦闘体など、多種多様だった。魔力の波動が地面を揺らし、樹木は黒く焦げ、土は裂ける。
「ミリア、範囲攻撃で突破口を作って!」
アルフレッドが叫ぶと、ミリアは手を翳し、魔力を一気に集中させる。掌から放たれた《雷光爆裂》が地面を炸裂させ、魔物の群れを吹き飛ばす。
バルトが盾を前に押し出し、飛びかかる魔物を受け止める。「後退はしない!俺たちの前を通すな!」
クレアは祈りを唱え、聖光の柱を発生させて仲間たちを保護する。「全員、集中して!」
その光が衝撃波を吸収し、魔物の爪が仲間に届く前に消滅する。
セレナは魔剣を振るい、空中から迫る魔物を斬り払う。宙を舞うその姿はまるで光の影のようで、敵の群れを切り裂きながらアルフレッドの背後から援護する。
アルフレッドは魔剣を前方に突き出し、連続斬撃で魔物の頭数を減らす。魔剣の刃が魔力の波動を発し、瘴気の渦を押し返すたびに、仲間たちは息を合わせて前進した。
「王都の城門まではあと数百メートル……!」
バルトが叫ぶ。魔物たちの数は減らないが、前線を押し返す五人の力は、確実に突破口を作りつつあった。
ミリアは再度、掌を広げ、《氷霜結界》を発動。魔物たちの動きを鈍らせると、アルフレッドとセレナは斬撃を集中させ、致命的な一撃を次々と加えた。
クレアが声を上げ、仲間全員に癒しの光を注ぐ。「倒れてはいけない! 王都を守るために!」
戦闘の最中、天空帝都から新たな闇の魔物の群れが飛び降り、五人は互いに位置を取りながら戦い続ける。魔剣と魔法、盾と聖光――それぞれの力が重なり、連携が完全に噛み合ったとき、最初の大群はついに押し返された。
空に漂う瘴気がわずかに晴れ、王都リョーデルの城壁が見えてきた。五人は一息つき、次の波に備えて戦闘態勢を整える。
「……ここから先は、王都の防衛戦になる」
アルフレッドは魔剣を握り直し、仲間の目を見て静かに頷く。
「全力で守ろう。これ以上、被害を出させるわけにはいかない」
セレナの言葉に、五人はそれぞれ覚悟を固めた。遠く上空には、依然として不気味に浮かぶ天空帝都の影が揺れている。
王都リョーデルの城門に近づくと、視界の端に黒煙が立ち上り、瓦礫の山と化した通りを人々が慌ただしく逃げ惑っていた。市場の屋台は倒れ、馬車は横転し、驚きと恐怖に満ちた市民たちの叫びが空気を震わせる。
「逃げろ! 魔物が来るぞ!」
誰かの叫びに続き、民衆が一斉に通りを駆け抜ける。その間を縫うように、王都兵や冒険者たちが秩序を保とうと懸命に動き回るが、混乱は収まらない。
アルフレッドは魔剣を握り直し、戦闘態勢を取る。「バルト、民間人を守るルートを確保しろ!」
バルトは重戦士らしく盾を広げ、逃げる群衆を魔物の突進から守りながら後退する。「分かった、みんな、俺の後ろに隠れろ!」
ミリアは呪文を唱え、光の結界を作り出す。結界は一時的な安全地帯となり、群衆はその中を通って城門へと避難することができた。
「アルフレッド、あの群れの中に子どもが!」
セレナが指を指す先には、泣き叫ぶ少女が迷子になり、魔物の群れに吸い寄せられそうになっていた。アルフレッドは一瞬で距離を詰め、魔剣を振るって影の魔物を切り裂き、少女を抱き上げた。
クレアは仲間たちの周囲を回り、傷ついた民を癒す。「怖がらないで、ここは安全よ。皆、城門まで急ぎましょう!」
だが、天空帝都から降下してくる魔物の群れは止まらず、王都の通りは次第に戦場と化す。火の手が上がり、建物が崩れ、逃げ惑う人々の悲鳴が混ざり合って、街は混沌の渦に呑み込まれつつあった。
「このままでは……!」
アルフレッドは魔剣を空に突き上げ、魔力を解き放つ。剣から発せられた閃光が周囲の魔物を一掃し、民衆の逃走ルートを確保する。
セレナも魔剣を構え、飛びかかる魔物を切り裂きながら群衆の避難を助ける。バルトは盾を構え、後方から迫る魔物を押し返し続ける。ミリアはさらに強力な範囲魔法で魔物を凍結させ、クレアは治癒と聖光で安全地帯を広げる。
混沌の中、王都リョーデルの城門まであとわずか。だが空には依然として天空帝都の影が揺らぎ、次の攻撃が迫っている。
アルフレッドは魔剣を握り直し、仲間を見渡す。「まだ終わりじゃない。皆、ここから先は守り抜くぞ!」
五人は互いに目を合わせ、決意を新たに前進した。王都の混乱と恐怖は、まだ序章に過ぎなかった。
王都リョーデルは、もはや闇の軍勢に制圧されていた。燃え上がる建物の間を、煙と悲鳴が渦巻く。瓦礫の下からかすかに聞こえる声に、アルフレッドは思わず肩を震わせた。
「……これが、王都か……」
魔剣を握る手に力が入る。目の前には、避難してきた国王や王族の一団が、身を寄せ合いながらも絶望の色を隠せず立っていた。護衛兵たちも多くが倒れ、残った者たちは混乱の中で命からがら耐えていた。
ミリアはその光景を目にし、唇を噛んだ。「アルフレッド……もう、ここに留まる意味はないわ。民も王族も、安全な場所へ――」
バルトは重戦士らしい大きな盾を抱え、街路の残骸を見渡す。「撤退しかないな……力尽くで守ろうにも、この数では……」
セレナは魔剣を構えたまま、視線を天空に向ける。黒衣の魔導士ザカリー・グラッドストンが操る巨大な浮遊城――天空帝都が、王都上空に不気味な影を落としていた。その下部に開いた巨大な開口部から、灼熱の光が一点に集中して輝き、まるで世界を引き裂くかのような圧倒的な力を孕んでいた。
「――来る!」クレアの声に続き、衝撃波が街全体を襲った。瓦礫が舞い、人々は倒れ伏し、悲鳴があたりに反響する。アルフレッドたちも盾や結界で耐えるが、その力の前では押し戻されるばかりだ。
天空帝都の破壊光線が、王都の中心部を貫く。王宮の屋根は吹き飛び、石柱は粉砕され、辺りに雷鳴のような轟音が響き渡る。民衆は恐怖に打ちひしがれ、空を仰ぐしかなかった。
アルフレッドは民と王族を率い、崩れゆく王都の街路を必死に進む。「行くぞ、皆! このままでは全員が――」
ミリアが魔法で瞬間移動の準備を整え、バルトが後方から迫る魔物を押し返す。セレナは魔剣で敵を切り裂き、クレアは民を抱えて安全な場所へ誘導する。
破壊の光が背後で街を焼き尽くす中、彼らは王族と民を連れ、王都の廃墟を脱出した。瓦礫と炎に包まれた街は、もはやかつての威容を示すことはなく、天空帝都の影は絶望の象徴として彼らの上に立ちはだかっていた。
空に浮かぶ巨大な闇の城を見上げ、アルフレッドは歯を食いしばった。「――ここから、反撃の一歩を始める……!」
民と王族を安全圏まで導きながら、五人の仲間たちは、次なる戦場――ゲルマーシア全土で繰り広げられる戦いの序章を感じ取っていた。




