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レベル28

 アルフレッドたちは邪竜ヴォルグリスとの激闘、奈落の王子の討伐を経て、さらなる成長を遂げた。彼らの実力は確かに中級冒険者の域を超えつつあったが、それに伴い、依頼の難易度も上がりつつあった。


新たな依頼『灰の都の亡霊』

【依頼内容】

ゼイドーアン王国南部の「灰の都」と呼ばれる廃墟で、近年、亡霊や魔物の目撃情報が相次いでいる。

かつてこの都市は、王国随一の商業都市として繁栄していたが、数百年前、原因不明の災厄によって滅び、廃墟となった。

最近になり、「都市の中心部から奇妙な魔力の波動が観測された」と魔術師団からの報告があり、調査のために冒険者を派遣することが決定した。


【目的】


灰の都に潜む脅威の正体を調査する

魔力の波動の発生源を特定し、必要であれば討伐・封印を行う

【難易度】

Bランク(中級冒険者向け)


【報酬】

1500ゴールド+王国特製の魔道具


「……灰の都か」


 アルフレッドはギルドの掲示板に貼られた依頼書を眺め、腕を組んだ。


「この廃墟、前から噂になってたわよね」


 ミリアが補足する。「王国でも未だに詳しい調査ができていないとか」


「幽霊とかそういう類の話は、あんまり気が進まねぇな……」


 バルトが腕を組みながら唸る。「斧でぶん殴れねぇ相手なら、やりづらいぜ」


「そういう相手なら、私たち魔法使いの出番ね」セレナが微笑しながら剣の柄に手を添えた。「それに、ただの亡霊騒ぎじゃなくて、何か裏がある気がするわ」


「確かに」クレアが頷く。「魔術師団が観測したという魔力の波動……何か異質な力が関わっているのなら、私の聖魔法が役に立つかもしれません」


「なら決まりだな」アルフレッドが仲間たちを見渡し、口を開く。「調査も討伐も、俺たちがやる。『灰の都の亡霊』の真相を突き止めよう」


 一同は頷き、ギルド受付へと向かった。



 ゼイドーアン王国の南部、王都セルゼリッカから馬車で三日ほど進んだ先に、「灰の都」と呼ばれる廃墟が広がっていた。


 朽ち果てた建物、崩れた城壁、瓦礫の山が連なるその景色は、かつてここが栄華を誇っていた都市だったとは信じがたいほどに荒れ果てていた。


「……嫌な感じね」


 セレナが辺りを見回しながら低く呟く。


「空気が重いな」


 アルフレッドも剣を握りしめ、慎重に前進する。


「霧が濃くなってきた……」


 ミリアが目を細める。「ここまで視界が悪いのは、自然の霧とは考えにくいわ」


「魔力の影響か?」


 バルトが戦斧を構えたまま周囲を警戒する。


「……魔物の気配がします」


 クレアが聖印を握りしめた次の瞬間。


 ガァアアアアアア!!!


 突如として霧の中から不気味な影が現れた。人間の形をしているが、その目は虚ろに光り、体は黒い煙のように揺らめいていた。


「……亡霊の類か!」


 アルフレッドが素早く剣を抜く。


「私に任せて!」


 クレアが聖なる光を放つと、亡霊の影が一瞬震えた。


 だが、完全には消滅しない。


「おい、効いてねぇぞ!」


 バルトが叫び、戦斧を振り下ろすが、亡霊は霧と同化するように攻撃をかわす。


「やっぱりただの霊じゃない……!」


 ミリアが警戒しながら呪文を詠唱する。「霊ではなく、"何か"に操られている……!」


「どうする?」


 セレナが戦闘態勢を取りながらアルフレッドに問いかけた。


「封印の核を見つけるしかない!」


 アルフレッドが判断を下す。「この都市を覆う魔力の源を探して、そこを叩く!」


「了解!」


 仲間たちは各々の役割を果たしながら、灰の都の奥へと進んでいった。



 アルフレッドたちは亡霊たちを振り切りながら、灰の都の中心部へと向かっていた。霧が濃くなり、廃墟の中に不気味な影が蠢いているのが見える。建物の崩れた壁の隙間から、光のない瞳を持つ存在がじっとこちらを見つめていた。


「……この亡霊、何かに引き寄せられているようだな」アルフレッドが低く呟く。


「確かに」ミリアが慎重に霧の中を観察しながら言う。「明確な敵意というよりは……何かの力に縛られているような感じがするわ」


「操られてるってことか?」バルトが戦斧を握りしめ、壁に浮かぶ影を睨んだ。「なら、そいつの主を見つけりゃいい」


「ええ、魔力の流れを感じます。中心部に何かがあるはず」クレアが静かに祈りを捧げ、聖なる光を小さく灯す。


「なら、そこへ向かうしかないわね」セレナが剣を抜き、先頭に立つ。


 慎重に進んでいくと、目の前に朽ち果てた門が現れた。かつては城門のような役割を果たしていたのだろう。両側の石柱には、何かの呪文が刻まれているが、時の流れによってその多くが崩れ去っている。


「ここが、灰の都の中心部か……?」アルフレッドが門の向こうを見据えた。


 その瞬間。ドゴォォォンッ! 地面が揺れ、背後の霧の中から巨大な影が現れた。


「何だ……!?」バルトが驚愕しながら振り返る。


 霧が裂け、姿を現したのは巨人の亡霊だった。



 その巨人は、かつてこの都市を守護していた騎士のなれの果てなのかもしれない。朽ち果てた鎧を纏い、両手には巨大な剣を握っていた。だが、その目には生気がなく、ただ無慈悲にこちらを見下ろしている。


「……この亡霊、他のものとは違う!」ミリアが警告を発した。


「来るぞ!」アルフレッドが魔剣を構える。


 ズン……! ズン……! 巨人の足音が響くたびに地面が揺れ、瓦礫が崩れ落ちていく。そして、次の瞬間。ブォンッ!! 巨人が剣を横薙ぎに振るった。



 

「くっ!」アルフレッドたちは飛び退き、間一髪で回避する。だが、その衝撃で周囲の瓦礫が吹き飛び、視界がさらに悪くなった。


「こいつ……並の亡霊じゃねぇぞ!」 バルトが戦斧を構えながら叫ぶ。「どうする、アルフレッド!」


「まずは動きを封じる! クレア、頼む!」


「はい!」クレアが祈りを捧げ、聖なる光を集める。「神聖の鎖よ、闇を縛れ!」


 光の鎖が巨人の身体に絡みつく。しかし。「なっ……!?」巨人は鎖を力任せに引きちぎった。「駄目……!? 霊体じゃない!?」クレアが驚愕する。


「物理的な攻撃が効くか試す!」アルフレッドが剣を構え、突進する。「くらえぇっ!!」ギィィィィンッ!! アルフレッドの剣が巨人の鎧に弾かれ、火花を散らす。 「……硬い!」アルフレッドが舌打ちする。


「なら、魔法で!」ミリアがすかさず詠唱を始めた。「フレイム・スピア!!」ドォンッ!! 炎の槍が巨人の肩に直撃し、黒煙が巻き上がる。だが、巨人は怯まない。「効果はあるけど……決定打にはならない……!」


「なら、俺が動きを止める!」バルトが斧を振り上げ、巨人の膝に向かって全力で叩き込む。ガァァンッ!!! 鈍い音が響き、巨人の膝が一瞬だけ沈んだ。


「今よ、セレナ! アルフレッド!」ミリアが叫ぶ。


「了解!」セレナとアルフレッドが瞬時に駆け出し、巨人の背後に回り込む。「この一撃で……崩れ落ちなさい!!」剣に魔力を込め、巨人の背中へと渾身の一撃を放つ。


 ズバァァッ!!! 光の刃が巨人の身体を斬り裂き、ついに動きが止まった。


「決まった……!?」


 ガァァァァァ……!! 巨人は絶叫を上げながら崩れ落ち、闇の霧となって消えた。


 静寂が訪れる。


「……やったか?」バルトが荒い息をつきながら呟く。


「ええ、なんとかね」ミリアが冷や汗を拭った。


「けど、これは序章に過ぎないわ」セレナが瓦礫の奥を指差す。「ほら、奥に光が……」一行は警戒を解かずに、慎重にその光へと歩み寄る。


 巨人の亡霊を退けた先には、地下へと続く階段があった。その奥からは、確かに魔力の波動が漂っている。


「……ここが、本当の核心部ってことか」アルフレッドが低く呟く。


「ええ。ここに、灰の都が滅びた真の理由が眠っているはずよ」ミリアが頷く。


「それと同時に、この依頼の本当の敵が待ち構えている……か」アルフレッドは呟く。


 一同は、再び武器を構え、慎重に地下への階段を下り始めた。そこで待ち受けているものはまだ誰も知らない。



 アルフレッドたちは、崩れかけた階段を慎重に降りていった。


 階段の下には、地下神殿のような空間が広がっていた。壁や天井には、かつては荘厳な装飾が施されていたと思われる彫刻があるが、そのほとんどが朽ち果て、無残な姿を晒している。


 薄暗い空間の中央には、巨大な石碑が立っていた。その表面には、古代の文字が刻まれているが、長い年月の影響でほとんどが読み取れない。


「ここが……灰の都の核心部、か」


 アルフレッドが剣を握りしめながら言う。


「嫌な気配がするわね」


 セレナが警戒しながら、周囲を見渡した。


「この空間、ただの遺跡じゃない。結界のようなものが張られている……」


 ミリアが慎重に魔力を探る。


 その言葉の通り、この空間にはただならぬ気配が漂っていた。まるで何かを封じ込めるために造られたかのように、魔力の波動が重く、冷たく渦巻いている。


「これは……封印の祭壇ね」


 クレアが神聖な印を手にかざし、淡い光を灯す。「長い間、何かを封じていた。でも……もう崩れかけているわ」


「封印が崩れた……つまり、その中に何かがいたってことか?」


 バルトが眉をひそめる。


「ええ。でも……まだ完全に解かれたわけじゃない」


 クレアの言葉が終わると同時に、石碑の前に敷かれた床が突然震え始めた。



「気をつけて!何か来る!」


 アルフレッドがすぐに剣を構えた。


 そして、次の瞬間。


 バキィィィィン!!


 封印の石碑が砕け、黒い魔力が噴き出した。


「くっ……!?」


 濃密な闇が周囲に広がり、視界を奪っていく。


 その中心に、一つの影が現れた。


「ようやく来たか、冒険者どもよ」


 低く響く声が遺跡内に満ちる。


 暗闇の中から姿を現したのは、一人の男だった。


 黒衣を纏い、顔には仮面をつけている。その手には、邪悪な魔力を纏う杖が握られていた。


「……お前は誰だ?」


 アルフレッドが剣を向ける。


「フフ……名乗るほどの者ではない。だが、お前たちが私の目的を阻むというのなら」


 男が杖を掲げると、遺跡の奥に眠る魔力が一気に活性化した。


 ズズズズズ……!!


 床から漆黒の瘴気が噴き出し、そこから無数の影の魔物が生み出されていく。


「……やっぱり、ただの遺跡調査じゃ済まなかったみたいね」


 セレナが剣を構える。


「やるしかねえな……!」


 バルトが戦斧を握りしめた。


「気をつけて! 普通の魔物じゃない!」


 ミリアが魔力を高めながら叫ぶ。


「ええ、でも」


 クレアが静かに祈りを捧げる。


「……私たちなら、乗り越えられる!」


 その言葉を合図に、アルフレッドたちは闇の魔物との戦いへと身を投じた。



 影の魔物たちは、亡霊のように形を変えながら襲いかかってくる。


「まずは数を減らす! ミリア!」


「了解! 炎よ、我が命じるままに、フレイム・インフェルノ!」


 ミリアが杖を振るうと、巨大な炎が巻き上がり、影の群れを一掃する。


 しかし。


「……駄目、燃えても形を保っている!」


 影の魔物たちは炎をものともせず、再び形を作り直していた。


「普通の攻撃じゃ倒しきれない……!」


「なら、力で押し切る!」


 バルトが戦斧を振り下ろし、影の魔物を薙ぎ払う。


 だが、影は液体のように姿を変え、攻撃を受け流した。


「……やはり、物理攻撃も効かないのか」


 アルフレッドが冷静に剣を握り直す。


「なら、魔力の核を狙うしかない!」


「核……?」


 セレナが影の中を注意深く観察すると。


「……見えたわ! 影の中心に、僅かに光る核がある!」


「なるほど、そこを狙えば……!」


 アルフレッドが剣に力を込めた。


「ライトニング・ブレード!!」


 雷の魔力を宿した剣を振るい、影の核を一閃する。


 ザンッ!!


 影の魔物は一瞬にして消滅した。


「やった……! これなら!」


「なら、一気に決める!」


 バルト、セレナ、ミリア、クレア、それぞれが魔力を高め、影の核を狙い撃つ。


「フレイム・アロー!」


「ディバイン・ライト!」


「ライトニング・スラッシュ!」


「破ァァァァァ!!!」


 炎と光、雷の魔法が絡み合い、影の魔物たちを貫いていく。


 そして。


「……終わったか?」


 アルフレッドが周囲を見渡した。


 すべての影が消え、遺跡に静寂が戻った。



「……やるな」


 黒衣の男は、影の軍勢が全滅したのを見届けると、微笑を浮かべた。


「だが、私はまだ目的を果たしていない」


 男が杖を振るうと、再び空間が歪み始める。


「くっ、まだ何か仕掛ける気か!」


「……いや」


 ミリアが男の魔力を感知し、目を細めた。


「こいつ、ここを捨てるつもりよ!」


「……なるほど、時間稼ぎか」


 アルフレッドが舌打ちする。


「また会おう、冒険者どもよ」


 男は闇に溶けるように消えていった。


 残されたのは、崩れかけた封印の祭壇と、未だ解明されていない灰の都の真実だった。


「……逃げられたか」


 セレナが剣を収める。


「でも、何か企んでいるのは間違いない」


 クレアが祭壇を見つめる。


「今は、この封印を修復するのが先決ね」


「……そうだな」


 アルフレッドが頷いた。


 黒衣の男の目的は何なのか?


 灰の都の封印に隠された真実とは?


 アルフレッドたちは、新たな謎を抱えながら、次なる手掛かりを求めていくのだった。



 アルフレッドたちは崩れかけた封印の祭壇を囲みながら、慎重に状況を整理していた。黒衣の男は去り、影の魔物も撃退したものの、まだ安心できる状態ではなかった。


「この封印、完全に崩壊しているわけじゃない……けど、時間の問題ね」


 ミリアが指で封印の文字をなぞりながら言う。


「崩壊しきる前に修復しないと、さらなる魔物が溢れ出る可能性がある」


 クレアが祈りの印を結び、聖なる力を込めながら封印を見つめる。


「修復できるのか?」


 バルトが斧を肩に担ぎながら尋ねる。


「完全には無理。でも、一時的に封じ込めることはできるわ」


 クレアは静かに言うと、聖印を掲げ、修復の儀式を始めた。


「神聖なる加護よ、かつてここに結ばれし封印の意志を呼び覚まし、再び力を宿せ……!」


 クレアの声に呼応するように、封印の石碑が青白く輝き始めた。その光に導かれるように、ミリアが魔法陣の構造を読み取り、足りない魔力の補充を行う。


「クレアの神聖魔法だけじゃ足りない……魔術的な力を繋げるわ!」


 ミリアが魔力を解放し、封印陣にさらなるエネルギーを注ぎ込む。


 その瞬間、封印の亀裂がゆっくりと収束し始めた。


「……よし、これで暫くは持ちそうだ」


 セレナが剣を納める。


「長くは保たないかもしれないけど、時間は稼げる」


 クレアがほっとした表情を浮かべる。


「だが、問題は黒衣の男の目的だ」


 アルフレッドが真剣な表情で呟いた。


 封印の修復が終わった今、次にすべきことはこの遺跡のさらなる調査だった。黒衣の男が何を探し、何を狙っていたのか。それを解き明かす必要がある。



 ミリアが改めて石碑を調べ始める。


「見て、ここの刻印……おそらく、この遺跡の本来の役割が記されてる」


 石碑に刻まれた古代語は、部分的に風化していたが、ミリアの知識をもってすればある程度の解読は可能だった。


「ここにはかつて、異界と繋がる『門』があった。そして、この封印は、その門が開かれぬよう施されたもの」


「門……まさか、黒衣の男の狙いはその門を開くことなのか?」


 アルフレッドが険しい表情をする。


「その可能性は高いわ」


 ミリアは考え込むように石碑を見つめる。


「もしそうなら……奴らはまだ次の段階に進もうとしている」


 セレナが静かに剣の柄を握る。


「この遺跡にあった封印は一つだけとは限らない……別の場所にある封印も狙っている可能性があるな」


 バルトが推測する。


「だとしたら、急がないと」


 クレアが真剣な顔で言う。


 ここでの戦いは終わったが、黒衣の男の計画はまだ進行中だった。



 アルフレッドたちは封印の修復を終えた後、急ぎ王都セルゼリッカへと帰還することを決めた。


 帰還の道中、彼らはギルドを通じて王国の魔術師団に報告を送った。


 黒衣の男の存在、封印の修復、そして異界の門の可能性。これらの情報を王国の上層部に伝えることが何よりも重要だった。


「王都に戻ったら、一度ギルドで正式に報告しよう」


 アルフレッドが言う。


「それと、魔術師団とも連携を取った方がいいわね。これ以上封印が狙われる前に手を打たないと」


 ミリアが頷く。


「まったく……仕事が終わったってのに、休む暇もねぇな」


 バルトがため息をつきながらも、不敵に笑った。


「でも、私たちにしかできないことだから」


 クレアが微笑む。


「……王都に戻っても、次の戦いが待ってるってことね」


 セレナが呟く。


 こうして、一行はゼイドーアン王国へと帰還し、新たな脅威に備えることとなる。



 王都に戻ったアルフレッドたちは、まず冒険者ギルドへと向かい、今回の探索結果を報告した。


「なるほど……封印が破られかけていた、か」


 ギルドマスターのレオハルトが深く頷く。


「そして、黒衣の男の存在か。異界の門の話といい、これは王国にとっても無視できない問題だな」


「はい。まだ彼らの目的が明確ではありませんが、確実に次の封印を狙っていると思われます」


 ミリアが真剣な表情で言う。


「そうか……よし、お前たちには次の依頼を任せたい」


 レオハルトが新たな依頼書を取り出し、アルフレッドたちの前に差し出した。


【依頼名】次なる封印の調査

【依頼内容】

ゼイドーアン王国領内に、もう一つ封印が存在するとの情報が入った。黒衣の男たちが次に狙う可能性が高いため、速やかに調査し、必要ならば防衛を行え。

【難易度】Bランク

【報酬】1500ゴールド+特別装備の支給


「封印の調査か……やるしかないな」


 アルフレッドが依頼書を受け取る。


「さすがに、報酬も良くなってきたな」


 バルトが報酬額を見て笑う。


「今回の件を考えれば、当然よ。それに、装備の支給もあるみたいね」


 セレナが依頼書を見つめる。


「特別装備……魔法武具かしら?」


 クレアが期待するように言う。


「おそらくな。詳細は後で確認するとしよう」


 ミリアが冷静に頷いた。


 こうして、アルフレッドたちは次なる封印の調査へと向かうことを決意する。


 異界の門を巡る戦いは、まだ終わらない。


 新たなる戦いが、ここから始まる。



 ゼイドーアン王国の冒険者ギルドで新たな依頼を受けたアルフレッドたちは、王国に伝わる「第二の封印」について詳しい情報を得るため、ギルドマスターのレオハルトと共に作戦会議を行った。


「では、まずこの地図を見てくれ」


 レオハルトが広げた地図には、王国北部の山岳地帯にある《封印の地》と記された場所が示されていた。


「この場所にはかつて『虚空の門』と呼ばれる異界との接続点が存在したとされている。魔術師団によって封印され、以後長年忘れ去られていたが……最近になって、妙な動きが観測された」


 レオハルトは真剣な表情で語る。


「黒衣の男たち……セイセス=セイセスが狙っているってことか」


 アルフレッドが眉をひそめる。


「何とも言えんが。王国の斥候たちがこの地域で不審な集団の活動を目撃した。奴らが封印を解くために何らかの儀式を行っているとすれば、阻止しなければならん」


「異界の門……先日の遺跡とは違い、直接異世界に繋がる危険があるということ?」  ミリアが問いかける。


「その通りだ。王国にとっては放置できる問題ではない。だからこそ、お前たちに頼む。魔術師団が現地で待機しているが、実際に封印の調査と戦闘ができるのは、お前たちしかいない」


「わかったわ。行きましょう、皆」


 セレナが立ち上がる。


「どうせまた厄介な敵が出るんだろうな……ま、腕がなるぜ」


 バルトが斧の柄を叩きながら笑う。


「それと……お前たちには、今回特別に王国の支給品がある」


 レオハルトは傍らの箱から数点の装備を取り出した。


「これは?」


 クレアが興味深そうに覗き込む。


「王国の工房で鍛えられた魔法装備だ。今回の依頼は異界の力が絡む以上、普通の武器では対処が難しい。少しでも役立ててくれ」


【王国より支給された特別装備】


アルフレッド:「白焔の剣」炎属性の魔法剣。異界の魔物に特効を持つ。

ミリア:「星霊のローブ」魔力の増幅効果を持つ高級魔道着。

バルト:「戦神の腕輪」攻撃力と防御力を強化する魔法の腕輪。

セレナ:「影疾の短剣」速度と回避力を高める短剣。

クレア:「聖なる盾【ルクス・アエテルナ】」強力な防御魔法を展開できる神聖な盾。


「これなら異界の魔物にも対抗できそうですね」


 クレアが聖なる盾を手に取り、光を宿した。


「もらえるものはもらっておくぜ。これでまた一つ強くなれるな!」


 バルトが腕輪をはめ、軽く拳を握る。


「支給品があるってことは、それだけ厳しい戦いが待っているのね」


 ミリアがローブを整えながら冷静に言う。


「準備が整ったらすぐに出発だ。王国の未来がかかっている。頼んだぞ」


 レオハルトが深く頷く。


「任せてください」


 アルフレッドが剣を握り、皆を見渡す。


「行くわよ!」


 セレナが先に立ち、仲間たちはそれに続いた。



 王都セルゼリッカを発ち、アルフレッドたちは馬を駆りながら北へ進んだ。目的地である《封印の地》は、王国の辺境にある険しい山岳地帯に位置している。


「前回の遺跡と違って、今回は魔術師団がいるって話だったが……」


 バルトが呟く。


「ええ、でも彼らも直接戦うことは想定していないでしょう。結局、私たちが戦うことになるはずよ」


 ミリアが前方の霧がかった山を見つめる。


「山岳地帯か……地形が厄介ね。視界も悪いし、待ち伏せされやすい」


 セレナが慎重に周囲を警戒する。


「この霧、普通のものじゃないわ」


 クレアが神聖な力を込めて霧を観察すると、微かに邪悪な魔力が含まれていることに気づいた。


「おそらく結界の一部ね。封印を守るためのものか、それとも……」


 ミリアが顎に手を当てながら考える。


「敵の仕掛けた障害かもしれないな」


 アルフレッドが剣を握る。


 そんな中、一行は前方に人影を見つけた。王国の紋章を掲げた魔術師団の兵士たちだった。


「ようこそ、冒険者の諸君。待っていたぞ」


 リーダーと思われる男が近づく。


「王国の魔術師団か」


 アルフレッドが馬を降りる。


「今回の件、聞いているな?封印の地に異常が発生し、我々も調査を行ったが……内部に踏み込むのは困難だった」


「つまり、私たちがやるしかないってことですね」


 ミリアが答える。


「ああ。我々も可能な限りサポートするが、実際に封印の奥へ向かうのはお前たちだ」


「了解しました。内部の情報は?」


 セレナが尋ねる。


「封印はまだ完全には破られていないが、確実に緩んでいる。そして、中から……何かの『気配』を感じる」


「……中に、何かがいるってことね」


 クレアが緊張した面持ちになる。


「そうだ。異界の存在がすでに目覚めかけているのかもしれん」


「なら、のんびりしている暇はないな」


 バルトが斧を手にする。


「作戦はこうだ。我々は封印の外で結界を維持し、お前たちが内部に侵入して封印を確認、そして異変があれば対処する」


「了解。やるべきことはわかったわ」


 アルフレッドが頷く。


 こうして、一行は王国魔術師団と協力しながら《封印の地》の奥へと進むことになった。


 その先に、どんな試練が待ち受けているのか。封印が緩みかけた異界の門の向こうには、未知なる脅威が潜んでいた。



 アルフレッドたちは魔術師団の協力のもと、《封印の地》の入り口へとたどり着いていた。


 目の前にそびえ立つのは、巨大な石造りの門。風化してなお威圧感を放つ門の中央には、複雑な魔法陣が刻まれ、淡い青白い光を放っていた。


「これが……封印の門か」


 アルフレッドが剣を握りしめる。


「すでに異変が起きているわね。封印の魔力が揺らいでいる」


 ミリアが手をかざし、魔力の流れを探る。


「確かに……本来なら、もっと安定しているはずなのに」


 クレアもまた、聖なる力を用いて封印を調べる。


 そのとき。


 ゴゴゴゴ……!!


 大地が鳴動し、門の魔法陣が不気味な光を放った。


「何かが……くる!」


 セレナがすかさず剣を抜く。


「封印の中から……何かが目覚めかけている!」


 魔術師団の指揮官が警戒の声を上げた。


 次の瞬間、門の奥から黒い影の塊が湧き出し、うねりながら空間を裂くように広がった。


 影はやがて一つの形を成し、《異界の獣》へと変貌していく。



「化け物が出てきやがったか!」


 バルトが戦斧を構える。


 異界の魔獣・シャドウビーストは、漆黒の霧を纏った狼のような姿をしていた。しかし、通常の生物とは異なり、その身体は明確な実体を持たず、常に形を変化させていた。


「こいつ……ただの魔獣じゃない。魔力の集合体のようなものね」


 ミリアが分析する。


「なら、普通の物理攻撃は効きにくいってことか?」


 アルフレッドが剣を握りしめながら問う。


「ええ。おそらく、聖属性か魔法でなければ効果は薄いわ!」


 ミリアが叫ぶ。


「なら、やることは決まったわ!」


 クレアが前に出て、聖光の魔法を発動する。


「神聖なる光よ、闇を照らせ!《セイクリッド・レイ》!」


 閃光が迸り、シャドウビーストを包む黒い霧を焼く。しかし。


「まだ動く……!? 」


 クレアが驚愕する。


 シャドウビーストは攻撃を受けたにも関わらず、その身体を霧のように分裂させ、すぐさま再生してみせた。


「やっぱり……通常の手段では完全に倒せない」


 ミリアが焦る。


「そんなの関係ねぇ!ぶっ潰せばいいだけだ!」


 バルトが咆哮しながら突撃し、戦斧を振り下ろした。


 ズバァッ!!


 重い一撃が魔獣の身体を切り裂く。しかし、シャドウビーストは霧のように身を躱し、まるで笑うような不気味な音を立てた。


「クソッ! 攻撃がすり抜ける!?」


 バルトが歯を食いしばる。


「いや、完全に効いていないわけじゃない。クレアの聖光でダメージを与えた直後なら、物理攻撃が通る!」


 セレナが素早く分析する。


「なら、コンビネーションで仕留めるしかないってことか……!」


 アルフレッドが剣を構えた。


「行くわよ!」ミリアが魔法陣を展開し、炎の矢を放つ。


「《フレイム・アロー》!」


 炎の矢がシャドウビーストの身体を焼き、霧を払う。その瞬間。


「今だ、アルフレッド!」


 クレアが叫び、再び聖なる光を浴びせる。


 聖なる炎と光を浴びた魔獣の霧が一瞬だけ消える。


「……決める!」


 アルフレッドが疾走し、剣を振り上げた。


「白焔の剣・破閃!!」


 閃光と共に剣が振るわれる。


 ズバァァァッ!!


 シャドウビーストの身体が大きく裂かれ、黒い霧が霧散していく。


「やったか!?」


 バルトが息を切らせながら言う。


「いいえ……まだ、消えてはいないわ!」


 ミリアが警戒する。


 その言葉通り、霧はゆっくりと集まり、シャドウビーストの形を再び作り出そうとしていた。


「……駄目だ、このままじゃキリがない!」


 セレナは打開策を考えるが。


「こいつの再生を止める方法があるはずだ!」


 アルフレッドが周囲を見渡す。


 そのとき。


「アルフレッド、あれを見て!」


 クレアが指さした先には、封印の門の中央にある魔法陣が揺らいでいた。


「魔法陣……そうか、こいつは封印が緩んだことで現れた魔物。なら、封印を再び強化すれば……!」


 ミリアが閃く。


「封印を再構築すれば、奴の存在を消滅させることができるかもしれない……!」


「なら、やるしかない!」


 アルフレッドが剣を構えた。


「私が封印の陣を修復するわ!その間、時間を稼いで!」


 ミリアが叫び、詠唱を開始する。


「バルト、セレナ!俺たちで奴を引きつけるぞ!」


 アルフレッドが号令をかける。


「任せろ!」


 バルトが前へ出る。


「時間稼ぎね……上等!」


 セレナが素早く駆け出す。


 こうして、一行はシャドウビーストとの最終決戦へと突入した。


 封印が完全に修復されるまで、どれほどの攻撃に耐えられるか。


 戦いは、まさにここからが本番だった。



 ミリアは封印の陣の前に膝をつき、素早く詠唱を開始した。


「古の契約のもとに、ここに眠る封印の力よ……再び目覚め、その使命を果たせ!」


 彼女の指先が魔法陣の一部をなぞるたび、淡い青白い光がじわじわと広がり始める。だが、それを察知したシャドウビーストが邪魔をしようと霧のように広がり、ミリアへと襲いかかった。


「させるかよ!」


 バルトが咆哮し、戦斧を振り下ろす。


 ゴォォォン!!


 巨大な斧が大地を砕き、衝撃波を伴って霧を散らした。だが、シャドウビーストはすぐさま霧の中から別の形を作り出し、次の攻撃を仕掛けてくる。


「こいつ……いくらでも形を変えやがる!」


 バルトが舌打ちする。


「ミリア、どれくらいかかる!?」


 アルフレッドが叫びながら剣を構える。


「あと……少し! でも、もう少し時間が必要なの!」


 ミリアが集中しながら応える。


「なら、時間を稼ぐだけだ……! セレナ、行くぞ!」


 アルフレッドが剣を抜き放ち、前へと踏み込む。


「ええ!」


 セレナが剣を構え、素早く動いた。


 シャドウビーストの影が蠢き、鋭い爪のような触手を生み出す。無数の爪が空を裂くように襲いかかるが、セレナは素早い動きでそれを回避し、影の核へと肉薄した。


「貫け、《シャドウ・ピアス》!」


 彼女の剣が漆黒の霧を切り裂き、光を纏って核心へと突き刺さる。


 ギャアアアアアア!!!


 魔獣が悲鳴を上げ、影が大きく揺らいだ。


「まだだ……一気に決めるぞ!」


 アルフレッドが剣を掲げ、魔力を集中させる。


「《白焔の剣・破閃》!!」


 剣から閃光が放たれ、シャドウビーストの体を真っ二つに斬り裂いた。


 その瞬間。


「封印、完成!!」


 ミリアが魔法陣の最後の文字を刻み、封印が完全に修復された。


 封印の魔力が一気に活性化し、強烈な光が遺跡を満たす。


 シャドウビーストは抵抗しようとするが、封印の力がそれを許さない。


 ギャアアアアアアアア!!!


 断末魔を上げながら、シャドウビーストは影の霧へと分解され、跡形もなく消滅していった。



「……終わったか?」


 バルトが戦斧を肩に担ぎながら息を吐く。


「ええ……封印は元に戻ったわ」


 ミリアが汗を拭いながら微笑む。


 アルフレッドは剣を収め、仲間たちを見渡した。


 誰もが傷ついていたが、無事に戦いを終えることができた。


 そして、封印の入り口を修復し、一息ついたアルフレッドたちだったが、彼らの使命はまだ終わっていなかった。


「ここで帰るわけにはいかないわね」


 セレナが周囲の様子を確認しながら言った。


「奥地には、まだ『虚空の門』がある……この遺跡の真の核心部分ね」


 ミリアが地図を広げ、指をなぞる。


「つまり、異界との繋がりを完全に断たなきゃならねぇってことか」


 バルトが斧を肩に担ぎ直す。


「ええ、このままでは封印が再び破られる可能性があるわ。最奥にある『虚空の門』を閉じるのが本当の目的よ」


 クレアが神聖な魔力をこめた聖印を握りしめる。


 アルフレッドは深く頷き、剣を抜いた。


「行こう。まだ戦いは終わっちゃいない」


 一行は休息を取り回復を済ませると、封印の奥へと足を踏み入れた。



 道が進むにつれ、空気が明らかに変わっていった。まるで現実世界とは異なる、ねじれた空間の中に足を踏み入れたような感覚がする。


 壁には不気味な紋様が浮かび上がり、宙に謎の文字がちらつく。


「この雰囲気……間違いなく異界の影響ね」


 ミリアが霊視の水晶を取り出し、周囲を観察する。


「奥から、異様な気配がする……これは、普通の魔物じゃないな」


 アルフレッドが剣を構える。


「ええ、気を引き締めていきましょう」


 セレナが周囲を警戒しながら歩を進める。


 次の角を曲がった瞬間。


「!!」


 闇の中から影のような存在が浮かび上がった。


「出たか……!」


 バルトが戦斧を握りしめる。



 それは黒い霧を纏った異形の存在だった。人の形をしているようでいて、どこか曖昧な輪郭を持ち、顔には目も口もない。だが、その空虚な闇の中に、恐るべき力が渦巻いているのが感じられた。


「コイツ……こっちを見てるのか?」


 バルトが不気味そうに言う。


「違うわ。あれは『見ている』んじゃなくて、『こちらの存在を認識している』だけ」


 ミリアが険しい表情を浮かべた。


 その瞬間、異形が空間を引き裂くように腕を伸ばし、異界の力を解き放った!


 ズガァァァン!!!


「くっ……!!」


 アルフレッドが即座に剣で防御するが、強烈な衝撃に吹き飛ばされる。


「こいつ、ただの魔物じゃない……!異界そのものの力を操ってる!」


 セレナが歯を食いしばる。


「ここは長引かせると危険ね。一気に仕留めるわよ!」


 ミリアが詠唱を開始する。


「援護する!」


 クレアが神聖魔法を展開し、仲間たちに聖なる加護を与える。


「ディヴァイン・プロテクション!」


 白い光が仲間たちの体を包み、異界の影響を一時的に軽減した。


「よし、行くぞ!」


 アルフレッドが地を蹴り、異形へと切り込む。



 そうして異形を撃破し、一行はついに最奥の空間へと辿り着いた。


 そこには、禍々しく渦巻く異界の裂け目。『虚空の門』が広がっていた。


「ここが……異界と繋がる門」


 ミリアが呟く。


「今すぐ閉じなければ……!」


 クレアが封印の術式を取り出し、準備を開始する。


 だが、その時。


 ググググ……!!


 門の奥から、不吉な気配が膨れ上がる。


「何か、来る……!!」


 セレナが警戒する。


「待ち構えてたってわけか」


 バルトが斧を振り上げる。


 次の瞬間、黒い霧の中から巨大な影が現れた。


「これは……!!」


 アルフレッドの目の前に姿を現したのは、異界の守護者《奈落の番人》。


 虚空の門を守る異界の守護者が、一行の前に立ちはだかった。


「ここで終わりにする……!準備はいいな!」


 アルフレッドが叫ぶ。


「ええ!」


 ミリアが魔法の杖を構える。


「いつでもいけるぜ!」


 バルトが笑う。


「ここで仕留めなきゃ、帰れないわよ!」


 セレナが剣を抜く。


「神よ、この戦いに祝福を……!」


 クレアが光をまとい、祈りを捧げる。


 最奥の戦いが、ついに始まる。



 異界の霧が渦を巻き、空間そのものが歪む。


 門の前に立ち塞がるのは、《奈落の番人》虚空の門を守る異界の存在だった。


 その姿は、黒曜石のような硬質な体を持ち、無数の触手が背中から蠢いていた。頭部には何もなく、顔の代わりに巨大な一つ目のような瘴気が浮かんでいる。


「……こいつ、門を守る存在ってわけか」


 アルフレッドが剣を構える。


「普通の魔物とは次元が違うわね……!」


 ミリアが霊視の水晶を握りしめる。


「コイツを倒さなきゃ、門を閉じるどころじゃねぇってことか!」


 バルトが笑いながら戦斧を肩に担いだ。


「なら、やるしかないわね!」


 セレナが即座に身を低くして、先制の突撃を仕掛けた。


 ヒュンッ!


 セレナの剣が閃く。だが。


 カキィィンッ!!!


 彼女の剣は、奈落の番人の表皮に阻まれ、まるで岩を切るような音を立てた。


「何……!? 効いてない!?」


 セレナが驚愕の声を上げる。


「こいつ、普通の物理攻撃じゃ傷が入らねぇぞ!」


 バルトがすぐに判断する。


「まるで呪われた鎧みたいね……なら、魔法で削るしかないわ!」


 ミリアが詠唱を開始する。


「《フレア・ランス》!!」


 高温の炎が槍の形を成し、一直線に奈落の番人へと突き刺さる。


 ボォォォォォッ!!!


 炎は直撃し、番人の表皮が灼かれる。しかし。


「クッ……まだ浅いわね……!」


 ミリアが唇を噛む。


 すると、番人が触手を振るい、闇の波動を解き放つ。


 ズドォォォォン!!!


「ぐっ……!!」


 アルフレッドたちが吹き飛ばされる。


 闇の波動は彼らの体力を削るだけでなく、精神にもじわじわと侵食してくる感覚を与えた。


「……こいつ、ただの攻撃じゃないわね……!」


 クレアが立ち上がりながら言った。


「闇の呪いが混じっている……!!私の聖魔法で対処するわ!」


 クレアが神聖な光を纏い、詠唱を始める。


「《セイクリッド・ライト》!!」


 眩い光が放たれ、奈落の番人の体に直撃する。


「……ッ!!」


 番人が一瞬怯んだ。


「今よ!!」


 ミリアが叫ぶ。


「行くぞ!」


 アルフレッドが剣を逆手に構え、疾風のごとく駆け出した。


「《ホーリーブレード》!」


 剣が神聖な光を纏い、斬撃が奈落の番人の胸を貫く。


 ズバァァァァッ!!!


 一筋の聖なる光が、番人の硬質な体を裂いた。


「効いた……!?」


 セレナが息を呑む。


「やはり、闇の力には聖なる力が有効ね!」


 ミリアが分析する。


「じゃあ、もう一発くれてやるぜ!!」


 バルトが斧を振り上げた。


「《クレセント・スラッシュ》!!」


 魔力を込めた渾身の一撃が、番人の肩口を斬り裂く。


 ゴォォォォンッ!!!


 黒い霧が弾け飛び、奈落の番人が大きく仰け反る。


「今のうちに……封印を!」


 クレアが叫ぶ。


「よし……任せろ!」


 アルフレッドが頷き、剣を構えて番人の動きを牽制する。


 クレアは遺跡の中央に向かい、封印の魔法陣を起動させた。


「聖なる光よ、虚空を閉ざせ……!!」


 彼女の祈りと共に、陣が輝きを増していく。


 だが。


「ギャアアアアアアア!!!!」


 奈落の番人が最後の力を振り絞り、触手を振りかざした。


「邪魔はさせない!!」


 アルフレッドが叫ぶ。


 セレナ、バルト、ミリアもそれぞれ武器を構え、最後の総攻撃を仕掛けた。


「《ルミナス・ストライク》!!」

「《デモリッシュ・アクス》!!」

「《フレイム・カタストロフ》!!」


 それぞれの渾身の一撃が、奈落の番人に叩き込まれる。


 ドォォォォォォン!!!!


 爆発的な衝撃とともに、番人の体が弾け飛ぶ。


「……決まった……!?」


 黒い霧が消え、奈落の番人は完全に消滅していた。


「……これで、門を閉じる準備が整ったわ」


 クレアが静かに呟く。


 彼女は最後の詠唱を行い、虚空の門を封印する。


 ゴォォォォォォ……ッ!!


 門が閉じられ、異界との繋がりが完全に断たれた。


「……終わった、か」


 アルフレッドが剣を収める。


「ええ、これで遺跡は安全になったわ」


 ミリアが微笑む。


「なかなか手ごわい敵だったな……!」


 バルトが斧を肩に担ぎながら言う。


「でも、やり遂げたわね」


 セレナが安堵の息を吐く。


「帰りましょう……!」


 クレアが穏やかに微笑んだ。


 こうして、一行は勝利を手にし、王都へと凱旋することとなった。



 異界の門を封じ、奈落の番人を討ち倒したアルフレッドたちは、傷ついた身体を引きずりながらも遺跡を後にした。


 封印の魔力が安定したことで、遺跡に漂っていた邪悪な気配はすっかり消え去り、まるで何事もなかったかのような静寂が戻っていた。


「いやー、さすがに今回はキツかったな……!」


 バルトが背中を伸ばしながら笑った。


「でも、これで異界の侵食は止められたわ。王国にとっても大きな功績になるはずよ」


 ミリアが冷静に分析する。


「……とはいえ、また新たな災厄が起きないとも限らない」


 アルフレッドが険しい表情で呟いた。


 確かに、彼らが門を封じた今も、この世界には数多の危険が潜んでいる。


「そうね。でも、私たちはそのためにここにいるのよ」


 セレナが剣の柄を握りしめる。


「ええ、どんな脅威が現れても、私たちなら乗り越えられるはず」クレアが微笑んだ。


 彼らはゼイドーアン王都セルゼリッカを目指し、三日かけて山道を踏破した。


 途中、倒れた魔術師団の一行を救出したり、封印が完全に機能しているかを確認したりと、慎重に進んでいった。


 そしてついに——王都の城壁が見えてきた。



「おお、勇敢なる冒険者たちよ! 無事に戻ったか!」


 ゼイドーアン国王のもとに召された彼らは、玉座の間で功績を讃えられることとなった。


「お前たちのおかげで、王国に新たな災厄が降りかかるのを防ぐことができた。本当に感謝する!」


 国王の堂々たる声が玉座の間に響く。


 王の横には王立魔術師団の長、宰相、そして各地の有力者たちが並んでいた。


「異界の門を封じるなど、一朝一夕で成し得ることではない。お前たちの功績は、我が王国にとって計り知れぬ価値がある」


 アルフレッドたちは深く頭を下げた。


「このたびの依頼は、正式に完遂と見なし、相応の報酬を授けよう」


 国王が手を振ると、近衛兵が黄金の箱を運び込んできた。


「まずは、約束の報酬として、3000ゴールドを授ける」


 近衛兵が箱を開くと、中には金貨がぎっしりと詰まっていた。


「そして、お前たちにはさらなる力を与えるべく、王国の宝物庫より選ばれた魔法武具を下賜する」


 再び運び込まれる箱の中には、冒険者たちの力をさらに引き上げる魔具が納められていた。


授けられた魔法武具


アルフレッド《輝炎の剣》

魔力を込めることで炎を纏い、斬撃と同時に爆発を引き起こす。


ミリア《星霊のロッド》

精霊の力を借りて魔法の威力を増幅させる、古代の杖。


セレナ《月影の双剣》

闇夜の中で特に力を発揮し、俊敏な動きを強化する双剣。


バルト《巨人殺しの戦斧》

衝撃波を生み出し、広範囲に攻撃を繰り出せる破壊の斧。


クレア《聖護の聖衣》

聖なる加護を受けた防具。着用者の魔力を高め、治癒効果を向上させる。


「これらの武具を身に纏い、さらに多くの試練に挑んでくれ」


 王の言葉に、一行は改めて頭を下げた。


「ありがたく頂戴いたします」


 アルフレッドが代表して答えると、王は満足そうに頷いた。


「お前たちの名は、もはやこの王国の冒険者たちに知れ渡っているだろう。我らは、今後もお前たちの活躍に期待している」



 王宮での謁見を終えた後、一行はゼイドーアン冒険者ギルドに立ち寄った。


「いやぁ、あんたたちが封印の門を閉じたって話、もうギルド中に広まってるぜ!」


 受付の男性が驚いたように声をかける。


「そりゃそうだろうな。異界の門を封じるなんて、普通の冒険者にできることじゃねぇ」


 バルトが笑いながら肩をすくめた。


「これで私たちも、正式に中級冒険者として名を刻めるな」


 セレナが満足そうに言う。


「それどころか、ギルド長が話があるって言ってたぜ。次の仕事の相談らしい」


 受付が伝えると、アルフレッドたちは顔を見合わせた。


「……新たな冒険の始まりね」


 ミリアが微笑んだ。


 こうして、ゼイドーアン王国での新たな仕事が始まろうとしていた。


 一行の旅は、まだまだ終わらない。

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