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レベル27

 奈落の王子との死闘を経て、アルフレッドたちはさらなる成長を遂げ、ついに レベル27 に到達した。初級の冒険者だった頃とは比べものにならない実力を備え、今では完全に 中級冒険者 の領域へと足を踏み入れていた。


 ギルドの本部で報告を終えると、受付嬢が新たな中級クラスの依頼を紹介した。


新たな依頼『蒼月の遺跡の異変』

【依頼名】 蒼月の遺跡の異変調査

依頼内容:

ゼイドーアン王国の南部、「蒼月の遺跡」 で異変が報告されている。

遺跡内では、突如として魔物の活動が活発化し、封印されていたはずの扉が開き始めているという。


目的:

遺跡の異変の原因を調査し、必要であれば対処する。

王国の学術院から派遣された調査隊が行方不明になっているため、彼らの救助も優先事項とする。


難易度:Aランク(中級上位)


報酬:2000ゴールド+王国より特別報奨


制限時間:十日以内



「蒼月の遺跡……確か、古代王国の祭壇がある場所よね」


 ミリアが依頼書を眺めながら言った。


「遺跡調査隊が行方不明になったってことは、ただの魔物の発生じゃないな」


 アルフレッドが腕を組む。


「誰かが遺跡の封印を解いた可能性もある」


 セレナが剣の柄を握る。


「問題は、何のために封印があったか、ってことだな」


 バルトが斧の柄を叩く。


「異変の原因を探りながら、調査隊を救出する……これは慎重に行動しなきゃね」


 クレアが頷く。


「Aランク依頼だから、敵のレベルも相応に高いわね。準備はしっかりしておかないと」


 ミリアが地図を広げながら付け加えた。


「よし、遺跡に行く前に、必要な装備を整えよう」


 アルフレッドが決断を下した。



 出発前に、一行は装備と物資を整えた。


アルフレッド: 古代の魔法を断つ「蒼炎の剣」を購入。

セレナ: 軽量で魔力を通しにくい「銀狼の鎧」を装備。

バルト: 攻撃力と耐久力を高める「鋼鉄の戦斧」を調達。

ミリア: 遺跡探索用の「魔力探知の水晶」を持参。

クレア: 強力な回復魔法を補助する「聖霊の指輪」を購入。

さらに、遺跡内部の暗闇や未知の罠に備え、「魔法の灯火」「解毒薬」「高性能な地図」を持参することにした。


「よし、準備は整ったな」


 アルフレッドが剣の柄を握り、仲間たちを見渡す。


「この遺跡には、まだ何か隠されている気がする……慎重に進もう」


 ミリアが言った。


「行こうぜ、何が待ち受けてるか、楽しみだな!」


 バルトが笑う。


「調査隊も見つけないとね」


 クレアが微笑んだ。


「じゃあ、蒼月の遺跡へ向かうわよ」


 セレナが前を向き、足を踏み出した。


 一行は王都セルゼリッカを出発し、南方の「蒼月の遺跡」へと向かった。


 新たな冒険が、幕を開ける―——。



 王都セルゼリッカを出発して二日。アルフレッドたちは蒼月の遺跡を目指し、ゼイドーアン王国南部の険しい山岳地帯を進んでいた。


 途中、谷を越え、川を渡りながら道なき道を行く。日が落ちる頃には、遺跡のある山の麓にたどり着いた。


「夜の間に遺跡に入るのは危険ね」


 ミリアが立ち止まり、周囲を見回した。


「そうだな。霧も出てきたし、無理に進むより、ここで野営して朝を待ったほうがいい」


 アルフレッドも賛同する。


「なら、俺が見張りをする。夜中に何かが来てもすぐに対応できるようにな」


 バルトが斧を担ぎ、辺りを警戒する。


 やがて焚き火を囲みながら、簡単な食事を済ませる。


「……それにしても、調査隊の消息が途絶えたって話が気になるわね」


 セレナがつぶやいた。


「単なる魔物の襲撃だったら、撤退の報告くらいはできるはずだものね」


 クレアが同意する。


「遺跡に何か異変が起きたのは確実……だとすると、封印が破られた可能性が高い」


 ミリアが地図に目を落とす。


「その封印を解いたのが、調査隊自身なのか、それとも別の何者か……」


 アルフレッドが剣の柄を握る。


「まあ、考えても仕方ねぇ。明日になれば、全部わかるさ」


 バルトが笑い、焚き火を大きくした。



 翌朝、霧が晴れると、遺跡の入口が姿を現した。


 蒼月の遺跡——長い年月により崩れかけた石造りの門。そこには月の紋様が刻まれ、かつての栄華を物語っていた。


「ここね……」


 ミリアが周囲を見渡す。


「見張りの気配はないな。調査隊が残した痕跡も見えない」


 セレナが慎重に進む。


「なら、やっぱり何か起こったってことか……」


 バルトが斧を握る。


 アルフレッドは剣を抜き、周囲を警戒しながら遺跡の中へと足を踏み入れた。



 遺跡の中は薄暗く、冷たい空気が満ちていた。


 壁には無数の碑文が刻まれ、床には月の紋様が描かれている。しかし、その一部が不自然に砕かれ、破壊された跡があった。


「誰かが遺跡を荒らしている……?」


 クレアが壁の傷跡を指でなぞる。


「調査隊か、それとも……?」


 ミリアが床の瓦礫を調べる。


「どっちにしろ、封印が無事か確認しないと」


 アルフレッドが前を向く。


 遺跡を進むにつれ、異様な光景が目に入ってきた。


 奥の祭壇へと続く通路には、黒い瘴気を纏った魔物の死骸が転がっている。


「これは……!」


 セレナが警戒し、剣を構える。


「明らかに普通の魔物じゃないな。瘴気を纏っている」


 バルトが慎重に斧を振るい、死骸を突いてみる。


「これは、異界の力に侵された魔物ね」


 ミリアが眉をひそめる。


「つまり、封印の異変が影響している可能性が高い……」


 アルフレッドが剣を握りしめる。


 そのとき―——


 ズズン……!


 遺跡の奥から、何か巨大なものが動く音が響いた。


「……来る!」


 セレナが即座に身構える。


 闇の奥から、異形の魔物が姿を現した。



 目の前に現れたのは、蒼月の守護者と呼ばれる巨大なゴーレムだった。


 しかし、その身体は異界の瘴気に侵され、本来の姿とは異なる歪な形に変貌していた。


「守護者……だけど、何かに汚染されてる!」


 ミリアが声を上げる。


「どうする!? 戦うしかねぇよな!」


 バルトが斧を構える。


「封印を修復するには、まずこいつを倒さないと!」


 アルフレッドが剣を構え、突進する。


 ゴーレムの巨大な拳が振り下ろされる——―


 ドォォォン!!!


 床が砕け、土煙が舞い上がる。


「くっ……! 速い!」


 セレナが間一髪で回避する。


 ゴーレムの腕が青白い光を帯び、次の攻撃を放つ構えを見せた。


「ミリア、弱点を探ってくれ!」


 アルフレッドが指示する。


「待って、分析するわ!」


 ミリアが詠唱し、魔力を探る。


 すると、ゴーレムの胸部にある 瘴気を帯びた核 が不安定に脈動しているのが見えた。


「……あそこよ! 胸の核を破壊すれば!」


 ミリアが叫ぶ。


「了解! いくぞ!」


 アルフレッドが駆け出す。


 バルトが正面から攻撃を引きつけ、セレナが素早く回り込み、クレアが神聖魔法を放つ。


「バルト、隙を作れ!」


 アルフレッドが叫ぶ。


「任せろ!」


 バルトが巨体のゴーレムに真正面から立ち向かい、斧を振り下ろす。


 ズガァァァン!!!


 ゴーレムの動きが一瞬鈍る——―


「今よ!」


 ミリアの魔法が炸裂し、セレナが突進する。


「終わらせる……!」


 アルフレッドが剣に魔力を込め、胸部の核に渾身の一撃を叩き込んだ。


 ズバァァァァァン!!


 核が砕け、ゴーレムは咆哮を上げながら崩れ落ちた。


 静寂が訪れる。


「はぁ……終わった?」


 クレアが息を整えた。


「とりあえず、一つ目の障害はクリアだな」


 バルトが斧を肩に担ぐ。


「問題は、封印がどうなってるかね」


 セレナが剣を納める。


 奥へ進むと、そこには異様な光景が広がっていた。


 封印の石碑が砕かれ、その先には異界へ続く裂け目が……。


「やっぱり……封印は破られていたのね」


 ミリアが眉をひそめた。


「誰かが、わざとやったんだな……」


 アルフレッドが険しい表情を浮かべる。


 一行は、次なる謎を解き明かすべく、更なる探索へと踏み込んでいった——―。



 封印の石碑が砕け、その先に広がるのは漆黒の亀裂―——異界へ続く裂け目だった。


 亀裂からは瘴気を帯びた冷たい風が吹き付け、まるで何かがこちらを覗いているかのような不気味な気配が漂っている。


「やっぱり、誰かが意図的に封印を壊したのね」


 ミリアが低く呟く。


「異界への裂け目か……これはまずいな」


 アルフレッドが険しい表情を浮かべる。


「このまま放置すれば、もっと強力な魔物が現れるかもしれない……」


 クレアが聖印を握りしめる。


「ってことは、やることは決まってるな」


 バルトが斧を担ぎ直し、裂け目を睨む。


「封印を修復するには、まず周囲の魔力を抑える必要がある。でも、この亀裂はただの封印破壊じゃなく、何か別の目的で開かれた可能性があるわ」


 ミリアが慎重に言葉を選ぶ。


「つまり?」


 セレナが剣の柄を握る。


「中に誰かいる」


 ミリアが断言した。


 その言葉に、一同が息を呑む。



 その瞬間——―


 ズズズ……


 亀裂の奥から黒い影がゆっくりと現れた。


 細長い腕、ねじれた角、そして暗闇に溶け込むような漆黒の身体。


「……っ!?」


 クレアが思わず後ずさる。


 影はゆらゆらと揺れながら、まるでこちらを品定めするように動き、異様に長い指をゆっくりと広げた。


「人の身で、此処へ踏み入るとは……愚かなことだ……」


 男とも女ともつかない囁くような声が響く。


「誰だ?」


 アルフレッドが剣を構え、警戒する。


「我は……門を開く者……」


 影が腕を広げると、亀裂からさらに黒き瘴気が溢れ出した。


「封印を破ったのは、あんたか?」


 バルトが斧を肩に担ぎながら睨みつける。


「……破壊ではない……開放、である……」


「開放?」


 ミリアが警戒する。


「此の地はかつて、月の王が異界の力を操りし場……彼の遺志を継ぎ、力を解き放たねばならぬ……」


「異界の力を操る……?」


 クレアが目を細める。


「ゼイドーアン王国の歴史には、そんな話は記録されてない」


 セレナが冷静に言い放つ。


 影がクスクスと笑う。


「表の歴史にはな……だが、確かに存在していたのだ。かつての王が、禁忌の力を求め、月の神と契約したということを」


「もしそれが本当なら、何故王国はそれを隠したんだ?」


 アルフレッドが問う。


「力は力を求める……だが、それを恐れた者たちが封印した……。力を支配できぬ者には、手にする資格はないと……」


「だから、お前は封印を解いた……?」


 ミリアが低く呟く。


「否。封印は既に緩みつつあった。我はただ、導いたに過ぎぬ……」


「その結果が、この異界の裂け目ってわけか」


 バルトが肩を鳴らす。


「では、問おう」


 影がゆっくりと宙に浮かび、こちらを見下ろした。


「お前たちは、この封印を閉じるというのか?」


「もちろんだ」


 アルフレッドが剣を構える。


「ならば――我が力を見極めよ。封印を閉じるに足る力を持つのか」


 影が手を振ると、裂け目からさらに黒き魔物が溢れ出した。


 巨大な四足の獣、蛇のように蠢く触手、そして異形の騎士――


「くっ……! こいつら!」


 セレナが剣を抜く。


「試されてるってことかよ……!」


 バルトが斧を構える。


「上等じゃない」


 ミリアが魔法を詠唱し始める。


「私たちの力、見せてあげるわ!」


 こうして、アルフレッドたちと異界の使者との戦いが始まった。



 異形の騎士が剣を振るい、黒き瘴気を纏った刃がアルフレッドに襲い掛かる。


「……っ!」


 アルフレッドは寸前で剣を交え、衝撃を受け流した。


 ギィィィン!!!


 凄まじい力がぶつかり合い、地面に裂け目が走る。


「こいつ……強い!」


 アルフレッドが歯を食いしばる。


 その隙を突き、蛇の触手がクレアへと襲い掛かる。


「クレア!」


 セレナが即座に動く。


 シュバッ!!


 剣の閃光が触手を斬り裂き、クレアは間一髪で回避した。


「ありがとう、セレナ!」


「礼は後でいいわよ!」


 一方、バルトは巨大な四足獣と対峙していた。


「こいつは俺がやる!」


 戦斧を振りかざし、豪快な一撃を繰り出す!


 ズガァァァン!!!


 斧が獣の頭部を砕くが――すぐに黒い霧が集まり、傷が再生される。


「チッ……タフだな!」


 バルトが舌打ちする。


「異界の魔物は普通の攻撃じゃ倒せないわ!」


 ミリアが魔法の杖を掲げる。


「魔法でとどめを刺す!」


 ミリアが詠唱を完成させ――


「フレイム・レイン!」


 無数の炎の矢が降り注ぎ、魔物を焼き尽くす!


「今よ、バルト!」


「おうよ!!!」


 バルトが全力で斧を振り下ろし――


 ズガァァァァァン!!!


 炎と衝撃で、四足獣が粉砕された。


「やったか……!?」


 しかし、異形の騎士は未だに健在だった。


「こいつが本命か……!」


 アルフレッドが剣を握り直す。


「いくぞ、お前ら……!!」


「ええ、最後の決着をつけるわ!」


 異界の裂け目を前に、アルフレッドたちの最終決戦が始まる——―!



 黒き剣が鈍く輝き、異形の騎士は静かに剣を構えた。騎士の体に異界の門よりいずる闇が流れ込んでいく。


 その動きは洗練され、無駄がない。まるで何度も戦場をくぐり抜けた戦士のようだった。


「……ただの魔物じゃない」


 アルフレッドが慎重に剣を握り直す。


 異形の騎士がゆっくりと顔を上げた。


「……我が名はロア=ヴァルグ。かつて月影の王に仕えし者」


「……自ら名乗るとは、随分と律儀な魔物ね」


 ミリアが呟く。


「魔物ではない」


 騎士は淡々とした声で続ける。


「我は、この地を守る者……封印されし騎士」


「封印されし騎士……?」


 クレアが眉をひそめる。


「封印が破れし時、我が主は復活する……。だが、お前たちが封印を戻さんとするならば……」


 ロア=ヴァルグは剣を振り上げた。


「――戦え。お前たちの力を示せ」



「来るぞ!」


 アルフレッドが叫ぶ。


 ロア=ヴァルグは一瞬で距離を詰め、黒き剣を振り下ろした。


 ズバァァッ!!


 アルフレッドはとっさに剣を構え、受け止める。


 ギィィィン!!!


 衝撃で足元の石畳が砕けた。


「なっ……重い!?」


 アルフレッドは圧倒的な剛力に押し込まれそうになるが、何とか踏みとどまる。


「ちょっと待って、今の一撃、アルフレッドでも受け止めるのがやっとなの?」


 セレナが目を見開く。


「これは相当な強敵ね……!」


 ミリアが魔法の詠唱を開始する。


 ロア=ヴァルグは一歩踏み込み、再び剣を振るった。


 ドガァァァン!!


 地面が抉られ、衝撃波が一行を襲う。


「くっ……!」


 クレアが防御魔法を発動し、何とか耐える。


 だが、その隙にロア=ヴァルグはセレナへと迫った。


「……ッ!」


 セレナは瞬時に回避し、カウンターで剣を突き込む。


 キィィン!!!


 しかし、騎士の鎧は驚異的な強度を誇り、セレナの剣が弾かれた。


「硬っ……!?」


「セレナ、下がれ!」


 アルフレッドが援護に入る。


 ロア=ヴァルグはすかさず反撃し、黒い刃が弧を描いた。


 ズバッ!!


 アルフレッドが避けきれず、肩に深い傷を負う。


「ぐっ……!!」


「アルフレッド!!」


 クレアがすぐに回復魔法を放つ。


「……チッ、厄介ね……!」


 ミリアが炎の魔法を撃つが、ロア=ヴァルグはそれを軽々と剣で弾いた。


「魔法も簡単に防ぐの……!?」


「なら、どうするってんだよ!?」


 バルトが戦斧を振り下ろすが、ロア=ヴァルグは最小限の動きでそれをかわし、肘打ちでバルトを吹き飛ばした。


 ドガァァン!!


「うおぉっ!? こいつ……本気でやばいぞ……!!」


 バルトが壁に叩きつけられる。


 パーティ全員が圧倒されていた。


 だが――


「……なら、戦術を変える!」


 アルフレッドが血を拭いながら剣を構え直した。



「ミリア、クレア、連携攻撃で隙を作るぞ!」


「わかった!」


 ミリアがすぐに理解し、詠唱を開始する。


「炎と光の融合……聖なる炎よ、導きを!」


 クレアも魔力を込める。


「神の御加護を……!」


 二つの魔力が合わさり――


 聖焔の閃光が生み出された。


「今だ、バルト!」


「おう!!」


 バルトが聖焔をまとった戦斧を振りかぶり、一気に突進する。


 ズガァァァン!!!


 ロア=ヴァルグが衝撃に耐えようとするが、その瞬間——―


「セレナ、決めろ!」


「任せなさい!」


 セレナが素早く騎士の背後を取り、剣を突き立てる!


 ザクゥッ!!


「……っ!!?」


 ロア=ヴァルグが苦悶の声を漏らし、一瞬動きが止まる。


「アルフレッド!」


「――終わらせる!」


 アルフレッドが渾身の一撃を放つ。


 ズバァァァァァン!!!


 剣がロア=ヴァルグの胸を貫いた。



「……見事だ」


 ロア=ヴァルグが静かに呟く。


「封印を閉じるに足る力……確かに、お前たちはそれを持っている」


 彼の身体は黒い霧となり、ゆっくりと消えていく。


「……封印を……守れ……」


 最後の言葉を残し、ロア=ヴァルグは完全に消滅した。


「終わった……?」


 クレアが安堵の息をつく。


「いや、まだだ……封印を閉じなきゃ」


 ミリアが疲れた声で言う。


 異界の裂け目は、まだ完全には閉じていなかった。


「クレア、頼む!」


「はい!」


 クレアが聖なる光を放ち、封印の術式を再び編み直す。


 光が裂け目を覆い――


 ズズズ……


 裂け目がゆっくりと閉じていった。


 ――そして、完全に消滅した。


「……やったな」


 アルフレッドが剣を収める。


「これで、ゼイドーアン王国に異界の脅威が及ぶことはないわね」


 セレナが息を整える。


「大仕事だったな……!」


 バルトが笑う。


「さあ、ギルドに戻ろう。報告しなきゃね」


 ミリアが微笑む。


「うん」


 クレアも頷いた。


 こうして、アルフレッドたちの新たな冒険は、一つの幕を閉じた。


 しかし――


(まだ、封印を狙う者がいるかもしれない……)


 アルフレッドはそう考えながら、王都へと歩き出した。


 次なる試練が待ち受けていることを、彼はすでに感じていたのだった。



 ゼイドーアン王国、王都セルゼリッカの冒険者ギルド。


 堂々たる石造りの建物の扉を開けると、酒場のようなざわめきと冒険者たちの笑い声が一気に耳に飛び込んできた。


「お、帰ってきたな!」


 カウンターの奥から、ギルドの受付嬢がアルフレッドたちに向かって手を振った。


「どうだったんだ?『封印されし騎士』の討伐任務は」


 受付嬢の隣にいた筋骨隆々の男が尋ねる。彼はこのギルドの管理を担当するギルドマスター、バルザックだ。


「任務は完了しました」


 アルフレッドが静かに頷き、封印が無事に再び閉じられたことを報告する。


「封印の騎士ロア=ヴァルグ……彼は決して暴走する魔物ではなく、封印を守るために戦っていた。封印を戻すためには、俺たちが試される必要があったんです」


「ほう……そうか、奴もただの亡霊ではなかったか」


 バルザックが腕を組み、唸るように言った。


「依頼の目的だった封印は無事に閉じたってことでいいんだな?」


「はい」


 クレアが神聖魔法を使って封印を完全に閉じたことを説明すると、ギルドの面々がどよめいた。


「ふむ……さすがは中級冒険者。良い働きだったな」


 バルザックは満足げに笑い、奥の棚から報酬袋を取り出した。


「報酬だ。1500ゴールド、それと追加報酬として――」


 バルザックが合図すると、奥から一人の男性が大きな布に包まれた品を運んできた。


「これは王国魔術師団からの報奨品だ。お前たちの実力を評価して、特別な魔法武具を授与するとのことだ」


 ミリアが目を輝かせた。「魔法武具……?」


 バルザックはゆっくりと布を外すと、そこには五つの装備が並んでいた。


白炎の刃(アルフレッド向け)

法付与が施された長剣で、斬るたびに白き炎が刃を包み、魔を断つ力を持つ。


影疾のブーツ(セレナ向け)

素早い動きを支援する魔法のブーツ。使用者の反応速度を向上させ、瞬時の回避や急襲を可能にする。


魔道士の紋章(ミリア向け)

強大な魔力を増幅する装飾品。呪文詠唱の速度を向上させると共に、魔力消費を抑える効果を持つ。


神聖のヴェール(クレア向け)

聖属性の魔力を増幅し、回復効果を高めるクローク。


獅子王の腕甲(バルト向け)

腕力と耐久力を向上させる魔法の腕甲。


「すごい……!」


 クレアが驚きながら装備を眺める。


「この装備があれば、戦いの幅も広がりそうね」


 セレナがブーツを手に取り、試しに軽く跳んでみる。驚くほど軽やかに動けることに気づき、笑みをこぼした。


「これで俺たちも、正式に中級冒険者として認められたわけか」


 バルトが腕を組み、誇らしげに言う。


「まだまだ、上には上がいるけどな」


 アルフレッドが剣を握りしめながら言った。


「それでも、俺たちは確実に強くなっている」


 バルザックが笑いながら頷いた。「お前たちは今や、ギルドでも有望な中堅冒険者の一角だ。これからの依頼も、さらに難しくなるだろう。だが、期待してるぜ」


 ギルドの仲間たちが酒を掲げて、一行の功績を称えた。


「よし! 今日は祝杯だ!」


 バルトが酒樽を担ぎ、無理やり皆に飲ませようとする。


「ちょ、ちょっと! 私は酒は……!」


 クレアが慌てて断ろうとするが、バルトは意に介さず豪快に笑う。


「これも冒険者の務めだぜ!」


「まったく……」


 ミリアは呆れながらも、少しだけ杯を傾ける。


 セレナは黙っていたが、微笑みながら皆の楽しそうな様子を見ていた。


 アルフレッドは、静かにギルドの喧騒を眺めながら考えていた。


(……次の冒険では、どんな試練が待っているのだろうか?)


 だが、それを気にするのは明日からでいい。


 今は仲間と共に、この勝利の余韻を楽しむことにしたのだった。


 ――こうして、一行は次なる冒険へと進む準備を整えていく。



 翌日。


 ギルドの掲示板に、新たな中級依頼が貼り出された。


【依頼名】 王国の秘宝を追え

【依頼内容】

王都近郊にある「太陽の神殿」にて、古代王国の秘宝が発見された。

しかし、何者かがそれを狙い、神殿内部の封印が破壊されたとの情報がある。

秘宝を回収し、神殿の安全を確保せよ。


【難易度】 Bランク

【報酬】2000ゴールド+王国より特別報奨


「王国の秘宝……?」


 ミリアが興味深げに依頼を読んだ。


「また封印の話か。最近こういうのが多いな」


 セレナが腕を組んで言う。


「それだけ、何者かがこの国の秘宝を狙っているということね」


 クレアが神妙な顔で呟く。


「よし、やるか!」


 バルトが気合を入れる。


 アルフレッドは剣を腰に収め、静かに頷いた。


「次の冒険も、気を引き締めていこう」


 ――こうして、彼らの新たな冒険が始まるのだった。

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