レベル21
ナドルヨークの朝日は、澄んだ空を輝かせ、街全体に新たな一日を告げていた。だが、冒険者たちの拠点「金のグリフォン」の一角に集まるアルフレッドたちの表情は、どこか緊張感を帯びていた。
「準備は整ったか?」アルフレッドが仲間たちを見回しながら尋ねる。その手には、古びた羊皮紙が握られていた。それは王立学術院から得た「太古の火」の伝承と地図を記したものだ。
「大丈夫よ。防護装備と冷却ポーションは十分に用意してあるわ」ミリアが魔法の杖を軽く振りながら応じた。彼女の冷静な声には、すでに計画への自信が感じられた。
「溶岩や熱波なんてもの、俺の斧には関係ないがな!」バルトが豪快に笑いながら大斧を背負い直す。その肩の力強さが、仲間たちを心強くさせた。
「でも油断しないで。セイセス=セイセスも動いてるはず。奴らの罠があちこちに仕掛けられてるに違いないわ」セレナが剣の柄を握りしめ、警戒を呼びかける。
「私たちには光があるわ」クレアが聖印を握りしめて微笑む。「どんな闇も、希望を信じれば乗り越えられる。そうでしょう?」
アルフレッドは仲間たちを見渡し、頷いた。「よし、行こう。『灼熱の深淵』で太古の火を見つけ、セイセス=セイセスの計画を阻止するんだ」
旅路は南方へと続き、街道が緑豊かな丘陵地帯から険しい岩山へと変わるにつれて、空気も次第に熱気を帯び始めた。火山地帯へ近づいていることを肌で感じながら、一行は慎重に進んだ。
「地図によれば、この先の峡谷を抜ければ『灼熱の深淵』に着くはずよ」ミリアが地図を確認しながら言う。「ただし、この峡谷には危険な魔物が出るという記録があるわ」
「どんな魔物でも歓迎だぜ。俺たちが片付けてやる!」バルトが斧を一閃して闘志を燃やす。
峡谷に入ると、辺りの温度はさらに上がり、足元の岩が熱を帯びていた。遠くには煙が上り、火山の活動が目に見える形で広がっていた。
「見て!」セレナが指をさす。その先には巨大なトカゲのような魔物が岩陰から姿を現した。体からは赤い光が漏れ出し、まるで溶岩そのものが生きているかのようだった。
「これはただの魔物じゃないわ。周囲の熱を吸収して強くなる特性があるみたい」ミリアが警戒を呼びかける。
「なら早めに倒すしかない!」アルフレッドが剣を抜き、仲間たちに声をかけた。「セレナ、俺と一緒に前衛を張る! バルトは横から回り込め。ミリア、クレア、援護を頼む!」
戦闘が始まると、魔物はその巨体を活かして攻撃を仕掛けてきた。だが、一行の連携は見事で、セレナの素早い動きが魔物の注意を引きつけ、アルフレッドが正確な一撃を放つ。ミリアの魔法が後方から魔物を弱体化させ、クレアの回復魔法が皆の傷を癒す。
「なんとかなったな……」バルトが最後の一撃で魔物を仕留め、息を整える。
「でもこれは序章よ。もっと危険なものが待っているわ」セレナが剣を収めながら言った。
峡谷を抜けた先に広がっていたのは、赤い輝きと煙が漂う「灼熱の深淵」だった。足元には溶岩が流れ、空気が波打つほどの熱が辺りを覆っていた。彼らは火山地帯に備えた防護装備を身に着け、迷宮への入り口を目指した。
「地図には、このあたりに鍛冶師が遺した迷宮があると書かれているわ。そこに『太古の火』があるはずよ」ミリアが言う。
「気をつけろ。セイセス=セイセスも同じ情報を持ってるはずだ」アルフレッドが注意を促した。
迷宮の入り口にたどり着いた彼らを待っていたのは、魔法で封じられた巨大な扉だった。扉には複雑な模様が彫られ、中央には炎を模したルーンが輝いている。
「この扉を開くには、古代の呪文が必要みたいね」ミリアが呟く。「でも、この模様……まるで試練のようだわ」
「どんな試練でも乗り越える。それが冒険者ってもんだろ!」バルトが笑った。
アルフレッドたちは迷宮への第一歩を踏み出す。果たして、「太古の火」を手に入れることができるのか――新たな試練が、彼らを待ち受けていた。
ミリアの魔法によって扉を開いた一行、迷宮の入り口をくぐると、熱気はさらに濃密になり、空気が揺らいで見えるほどだった。石造りの通路は赤い光で照らされ、壁には古代の鍛冶師たちが描いたと思われる壁画が並んでいた。壁画には、王冠を鍛える鍛冶師と燃え盛る炎の中で踊るように輝く「太古の火」の姿が描かれている。
「ここが『王冠の炉』の入り口かもしれないわ」ミリアが壁画を見上げながらつぶやいた。「でも、迷宮に仕掛けられた罠や魔物が待ち受けている可能性が高いわね」
「よし、全員慎重に進むぞ。足元に注意しろ」アルフレッドが剣を構え、仲間たちに指示を出す。
一行が通路を進むと、最初の分岐点が現れた。左右に伸びる通路のうち、どちらが正しい道なのかはわからない。だが、ミリアが壁の模様を観察すると、片方の通路にだけルーンが彫られているのに気づいた。
「このルーンは『試練』を意味しているわ。こっちが正しい道だと思う」ミリアが指差すと、バルトが斧を担いで前に進み出た。
「なら俺が先陣を切る! どんな罠でもぶっ壊してやる!」
しかし、彼が一歩踏み出した瞬間、床が揺れ、石の壁から炎が吹き出した。熱波が通路全体を覆い、一行は咄嗟に後退する。
「危ない! ここは慎重に進むべきだわ!」セレナが警戒を呼びかける。
ミリアは炎の発生装置を観察し、冷静に分析した。「この仕掛けは一定間隔で動作するみたい。タイミングを見計らって進むしかないわ」
アルフレッドたちは一人ずつ慎重に炎の罠を通り抜けた。最後にクレアが聖なる光で焼け焦げた床を浄化しながら通路を抜け、次の部屋へと進む。
次の部屋は広間になっており、中央には巨大な石像が鎮座していた。その姿は鍛冶師の形を模しており、手には燃え盛るハンマーを握っていた。
「これが鍛冶師の守護者……?」セレナが低い声でつぶやく。
「間違いない。この像は動き出すぞ」アルフレッドが剣を構えながら前進する。
石像が目を輝かせ、重々しい音と共に動き始めた。「試練に挑む者よ、その覚悟を示せ」と低く響く声が部屋全体にこだました。
「来るぞ! 全員、連携を取れ!」アルフレッドが叫ぶと、石像が巨大なハンマーを振り上げ、一行に向かって振り下ろした。
バルトが斧でハンマーを受け止め、衝撃を最小限に抑える。「こいつ、力が半端じゃねえ!」
「弱点を探して!」ミリアが魔法の光を放ちながら、石像の動きを観察する。
セレナが素早く背後に回り込み、石像の足元を斬りつけたが、硬い岩肌に剣が弾かれる。「普通の攻撃じゃダメみたい!」
「でも、魔力を込めれば通用するかも!」クレアが叫び、聖なる光を剣に纏わせた。アルフレッドがその光を受け取り、石像の胸部に向けて一閃を放つ。
「やったか……?」石像が一瞬止まったかに見えたが、再び動き出した。だが、胸部に入ったひび割れから赤い光が漏れ出し、動きが鈍くなる。
「今がチャンスだ!」アルフレッドがもう一撃を放ち、ミリアが魔法でさらに石像を弱体化させる。最後にバルトが渾身の力で斧を振り下ろし、石像を真っ二つにした。
「ふう……なんとかなったな……」バルトが息を整える。
石像が崩れ落ちた後、部屋の奥に新たな扉が現れた。その扉の向こうには、赤く光る炉が見えている。
「ここが……『太古の火』の眠る場所かもしれない」ミリアが慎重に扉を開く。
中に入ると、巨大な鍛冶炉が部屋の中央に鎮座しており、その中で青白い炎が静かに揺れていた。それは熱さを感じさせない、不思議なほど神秘的な炎だった。
「これが『太古の火』……」クレアが目を見開いてつぶやいた。
「待て、誰かいるぞ」セレナが警戒する。暗闇の中から、セイセス=セイセスの構成員たちが姿を現した。
「よくぞここまでたどり着いたな、冒険者ども。しかし、この火は我々が頂く!」黒衣のリーダーが叫び、魔物を召喚する。
「止めさせてもらう!」アルフレッドが剣を構え、仲間たちに声をかけた。「この炎を奴らに渡すわけにはいかない!」
再び始まる激しい戦いの中、一行は「太古の火」を巡り、セイセス=セイセスと衝突する。果たして、彼らは炎を守り抜くことができるのか――冒険のクライマックスが今、幕を開けようとしていた。
「太古の火」を前にした広間は、熱気と緊張感が入り混じる空間となっていた。セイセス=セイセスの黒衣のリーダーは、炎の前に立ちはだかり、闇の魔法を操りながら一行を威嚇する。
「この火は、我々の新たな秩序を築く礎となる! 貴様らの邪魔はここで終わりだ!」
リーダーが手をかざすと、彼の背後から次々に魔物が召喚され、太古の火を取り囲むように配置された。その魔物たちは、火そのものから力を引き出しているかのように赤黒い輝きを放っていた。
「みんな、気をつけて! この魔物たちは炎の力を利用してるわ!」ミリアが警告する。
「なら、その火を奴らから奪い返すだけだ!」アルフレッドが叫び、剣を抜いて前へと躍り出た。
バルトが戦斧を振り上げ、最前線で魔物の群れに立ち向かう。彼の斧が一撃を放つたび、敵が弾き飛ばされ、仲間たちへの道が開かれる。
「これ以上通すものか! お前ら、俺を倒してからにしろ!」
セレナはその隙を縫うように素早く動き、魔物の背後を突いて剣を振るう。「バルト、助かるわ! この調子で押し込む!」
一方、ミリアは遠距離から火と氷の魔法を駆使して敵の足を止め、クレアは回復魔法と防御の祈りで仲間を支える。
「光の加護をもたらします!」クレアが唱えるたびに、冒険者たちは魔物たちの攻撃をしのぎ、士気を保った。
戦闘の中盤、リーダーが両手を掲げ、太古の火に向けて呪文を唱え始めた。すると、炎が不穏に揺れ始め、青白い輝きが黒く染まりつつあった。
「これ以上はやらせない!」アルフレッドが突進し、リーダーに剣を向けた。
リーダーは笑いながら振り返る。「その剣ではこの火を止められん。太古の火は闇の中でこそ真価を発揮するのだ!」
「そんなことはさせない!」セレナがリーダーの横から斬りかかるが、リーダーは魔法で攻撃を防ぐ。
「貴様らが束になっても無駄だ。太古の火は我々のものになる!」
その瞬間、バルトが後方からリーダーに向けて斧を投げつけた。斧はリーダーの肩をかすめ、呪文を中断させることに成功する。
「今だ、押し込め!」アルフレッドが叫び、仲間たちと共にリーダーに向かって突撃した。
リーダーが追い詰められたその時、太古の火がさらに不安定に揺れ始めた。部屋全体に熱気と光があふれ、崩れ落ちそうな状況になる。
「このままでは火が暴走するわ!」ミリアが焦りの声を上げる。
「クレア、火を浄化できないか?」アルフレッドが振り返る。
クレアは頷き、聖印を握りしめながら光の祈りを捧げた。「太古の火よ、その力を正しい姿に戻し給え!」
クレアの祈りに呼応するように、火の色が徐々に青白い輝きに戻り始めた。それに伴い、魔物たちは力を失い、一匹ずつ崩れ落ちていく。
「今がチャンスだ!」アルフレッドがリーダーに向けて最後の一撃を放つと、リーダーは黒い煙と共にその場から姿を消した。
「奴は逃げたけど、火は取り戻したわね!」セレナが剣を収めながら言う。
部屋が静寂を取り戻すと、一行は太古の火の前に立ち尽くした。その輝きは穏やかで、どこか温かさを感じさせるものだった。
「これが『太古の火』……鍛冶師が王冠を鍛えた時に使った力なのね」ミリアが呟く。
クレアが静かに微笑みながら火に向かって祈りを捧げる。「これで、王冠の力を正しく使うための第一歩を踏み出せましたね」
「よし、この火を安全な場所に持ち帰ろう。次は『宝石』だな」アルフレッドが剣を収め、仲間たちを見渡す。
「次もきっと厄介な相手が待ってるだろうけど、俺たちならやれるさ!」バルトが豪快に笑い、仲間たちも力強く頷いた。
こうして、彼らは「太古の火」を手に入れ、新たな冒険への道を歩み始めるのだった――。




