表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/48

レベル1

 クラウツリーア大陸。四王国二帝国からなる世界である。バルダネリア帝国、マリネリージ王国、ゼイドーアン王国、ゲルマーシア王国、ベラルテ王国、ダウニシア帝国である。これらの国々は条約を結んでおり、大陸には平和が訪れている。


 そんな時勢、一人の若者が冒険者としての第一歩を踏み出そうとしていた。彼の名はアルフレッド。アルフレッドはバルダネリア帝国生まれであり、帝都ハイドエールの冒険者ギルドを訪れていた。そこでは様々な経験豊富な冒険者たちが活動している。まだレベル1のアルフレッドは、まずはギルドの登録手続きを行う必要があった。登録後、彼はギルドから初めての冒険に向けての依頼を受けることができる。


「ここから俺の新たな伝説が始まる……」


 アルフレッドが偉大な英雄になるかはさておき、ベテランからのアドバイスとすれば、「まずは生き残れ、話はそれからだ」と言ったところだろう。


 ギルドの案内役は、アルフレッドに利用可能な初心者向けの冒険を紹介し、彼が安全かつ経験を積むことができるようにサポートしてくれる。アルフレッドはまず簡単な仕事から始め、次第に経験を積みながらレベルを上げていくことが必要だ。彼が思い描く夢は大陸の遥か彼方へと続いているが、まずは地道な下積みがあればこそ。誰しも最初から英雄であるわけではないのだ。誰もが最初はレベル1からのスタートなのだ。


 アルフレッドは冒険者としての第一歩を踏み出すため、バルダネリア帝国の帝都ハイドエールにある冒険者ギルドを訪れた。ギルドの入り口には立派な看板が掲げられ、そこには勇壮な冒険者の姿が描かれていた。


 ドアを開けると、ギルドの内部は活気に満ちていた。冒険者たちが交流し、依頼を待っている様子が見受けられる。アルフレッドはやや緊張した面持ちで歩みを進め、案内所のカウンターに向かった。


 カウンターの後ろには、丁寧に身なりを整えた受付係の女性が立っていた。


「すみません、こんにちは。冒険者としてギルドに登録したいのですが」


 アルフレッドが声をかけると、女性は天使のような笑顔で頷いた。


「ようこそ、アルフレッドさん。冒険者ギルドへの登録手続きをご希望ですね。ではクラスと経歴を教えていただけますか」


「ああ。クラスはファイターだ。経歴は、帝都育ちの二十歳。そりゃあまだ若いし、仕事をしたことはないけど、冒険者としての情熱と意欲は十分にある。これから、大いなる冒険に挑んでいきたいと思ってる」


 アルフレッドの熱意に、女性は微笑んだ。


「素晴らしいですね。では登録させていただきますので、しばらくお待ちください」


 女性は書類を取り出し、幾つかの項目を記入していくと、最後にアルフレッドのサインを求めた。アルフレッドは言われるがままにサインをする。女性は頷く。


「はい、これで完了です。たった今から、ギルド認定冒険者として活動できますよ」


「これで終わり?」


「はい。いかがですか、早速仕事をなさいますか」


「そうだな。今どんな仕事があるんだ」


 彼の心は興奮と期待で躍り、これからの冒険の旅が始まることを心待ちにしていた。


「初めての冒険として、近隣の村からの依頼があります。彼らの羊が最近頻繁に行方不明になっており、それが村の生活に深刻な影響を与えています。あなたには、その羊の失踪事件の調査と、原因を特定する任務が与えられます」


「了解した。俺にできる限りのことをやろう。どのように進めればいいかな?」


「まず、依頼主である村の村長と面談して、詳細な情報を入手してください。また、村の周辺を調査し、何か異常なことや疑わしい痕跡がないか探ってください。この任務は初心者向けですが、慎重に行動し、村の安全を確保することが大切です」


 アルフレッドは受付係からの指示を受け、初めての冒険の任務に臨む準備を整えた。彼は冒険者としての初歩のステップを踏み出し、村の問題を解決するために動き始めるのだった。


 アルフレッドはギルドでの説明を終えると、すぐに必要な準備を整えた。村へ向かうための地図や基本的な装備、食料を用意し、出発の準備が整った。


 ハイドエールの冒険者ギルドを後にし、彼は近隣の村へと足を運んだ。道中、彼は周囲の風景を楽しみながらも、任務に対する決意を新たにした。


 数時間後、アルフレッドは目的地である小さな村に到着した。村は穏やかで、住民たちは彼を好意的に迎えた。村長の家を見つけ、ドアをノックした。


 ややあって村長が顔を出した。アルフレッドは自己紹介をした。村長は頷いた。「ようこそ、冒険者さん。私はこの村の村長です。今回の依頼について話を聞いてくださりありがとうございます」


 アルフレッドは頷いた。「こちらこそお世話になります。早速ですが、羊の失踪について詳しくお聞かせいただけますか?」


 村長は困った表情で説明を始めた。


「数週間前から、夜になると羊が一匹ずつ消えていくのです。足跡もなく、まるで空中に消えたかのようです。村の者たちは不安で眠れない日々が続いています。何とかして原因を突き止め、羊を取り戻していただけないでしょうか」


 アルフレッドは村長の言葉に耳を傾け、詳細をメモした。


「了解しました。まずは消えた羊の放牧地を見て、周囲を調査してみます。何か異常な痕跡や手がかりが見つかるかもしれません」


 村長はアルフレッドを放牧地へ案内した。そこは広々とした牧草地で、残った羊たちが草を食んでいる。アルフレッドは周囲を慎重に観察し始めた。


 しばらく調査を続けると、草むらの中に奇妙な痕跡を発見した。地面に微かに残る爪の跡と、小さな動物の毛のようなものが見つかった。


「この痕跡を辿ってみます。何か手がかりが見つかるかもしれません」


 彼は痕跡を追いかけ、森の中へと進んでいった。森は静寂に包まれ、不気味な雰囲気が漂っている。アルフレッドは慎重に進みながら、痕跡を辿り続けた。


 すると、森の奥に小さな洞窟を発見した。洞窟の入り口には、さらに多くの痕跡が集まっていた。


「どうやらここが怪しいようだ……」


 彼は洞窟の中に足を踏み入れ、ランタンで周囲を照らしながら進んでいった。奥へ進むにつれて、羊の鳴き声が微かに聞こえてきた。


 アルフレッドは警戒を怠らず、慎重に進んだ。そして、洞窟の奥で羊たちを囲む三体の小型クリーチャーと出くわした。クリーチャーたちは驚いた表情で彼を見つめたが、すぐに攻撃態勢に入った。


「ここで引き下がるわけにはいかないな!」


 アルフレッドは剣をしっかりと握りしめ、クリーチャーたちとの距離を測りながら戦闘態勢に入った。洞窟の薄暗い光の中で、彼の剣がきらりと光る。


 クリーチャー1は鋭い爪を持ち、素早い動きでアルフレッドに向かって突進してきた。アルフレッドは冷静に一歩後ろに下がり、その勢いを利用してクリーチャーの攻撃をかわし、逆に剣を振り下ろした。クリーチャーの腕に深い傷を負わせると、苦痛の叫び声を上げて後退した。


 その隙を突いて、クリーチャー2が横から攻撃してくる。アルフレッドは瞬時に体をひねり、盾でその攻撃を受け止めた。ガツンと響く衝撃に耐えながら、彼は盾を押し返し、クリーチャー2のバランスを崩した。続けて剣を振り上げ、クリーチャーの脇腹に一撃を加えた。クリーチャー2もまた後退し、痛みによって動きが鈍くなった。


 クリーチャー3は慎重にアルフレッドの動きを見極めていたが、仲間が攻撃を受けているのを見て、突進してきた。アルフレッドはこれを予期しており、素早く前方に踏み出してクリーチャー3の頭部を狙った。しかし、クリーチャー3は素早く身を翻し、アルフレッドの攻撃をかわした。


 その瞬間、アルフレッドは再び立て直し、クリーチャー3の側面に回り込む。クリーチャー3が反応する前に、彼は一撃を加え、その動きを止めた。クリーチャー3が地面に倒れこむと、残りの二体が再び襲いかかってくる。


 しかし、アルフレッドは戦闘の中での冷静さを失わず、集中力を保ち続けた。彼はクリーチャー1とクリーチャー2の動きを見極め、彼らの攻撃を順次かわしながら、的確に反撃を加えた。最終的に、彼はクリーチャー1の首に一撃を加え、その命を絶った。クリーチャー2もまた、アルフレッドの剣によって致命的な傷を負い、倒れこんだ。


 アルフレッドは深く息をつき、周囲を見回した。洞窟内は再び静寂に包まれ、羊たちは恐怖から解放された。彼は羊たちを洞窟の外に導き、村へと戻る準備を整えた。


 村に戻る道中、アルフレッドはこの初めての戦いで学んだことを振り返りながら、次の冒険に向けて心を引き締めた。村人たちは彼の帰還を喜び、感謝の言葉を惜しみなく送った。これにより、アルフレッドの冒険者としての名声は一歩前進したのだった。


「本当にありがとうございます、アルフレッドさん。あなたのおかげで、村は再び平和を取り戻しました」


 村長はじめ村人たちから感謝された。


「お役に立てて何よりです。これからも困っている人々を助けるために頑張ります」


 アルフレッドは村での任務を無事に終え、羊を取り戻したことで村人たちから感謝の言葉を受けた。その感謝と共に、彼は村長から手厚い報酬を受け取った。彼はその報酬をしっかりと受け取り、冒険者ギルドへと戻る準備を整えた。


 ハイドエールの街並みが見えてくると、アルフレッドは冒険者ギルドの存在感ある建物に目を向けた。ギルドのドアを開けると、内部はいつものように活気に満ちていた。彼は胸を張ってカウンターへと歩み寄り、受付係に声をかけた。


「ただいま戻ったよ。初めての任務を無事に終えることができた」


「お帰りなさい、アルフレッドさん。任務の詳細をお聞かせいただけますか?」


 アルフレッドは任務の経緯を詳細に説明した。村に到着してから、村長との会話、羊の行方を追うための調査、そして洞窟でのクリーチャーとの戦いまで、彼は一つ一つ丁寧に報告した。受付係は彼の話に耳を傾け、時折うなずきながらメモを取った。


「素晴らしい働きでしたね、アルフレッドさん。初めての任務でありながら、冷静に対処し、無事に任務を完了されたことは大変素晴らしいです。これであなたの冒険者としての評価も高まるでしょう」


 受付係は満足そうに微笑み、彼の報告書を整理し始めた。


「次の任務についてですが、少し休憩を取られても構いません。ですが、もし次の冒険にすぐに取り掛かりたいのであれば、いくつかの依頼が届いていますので、選んでいただくこともできます」


 アルフレッドは次の冒険への意欲を示しつつ、少し休憩を取ることにした。彼はギルドのラウンジでリラックスしながら、次の冒険について考えた。


 そしてしばらく休憩した後、アルフレッドは再び受付係に声をかけた。


「次の任務について詳しく教えてもらえるかい?」


「かしこまりました。現在、いくつかの依頼があります。例えば、近くの森に出没するゴブリンの討伐、山間部に隠された古代遺跡の調査、そして交易路の安全を確保するための護衛任務などがあります。どれも重要な依頼ですが、あなたのスキルと経験に応じて選んでいただければと思います」


 アルフレッドは依頼内容を吟味し、次なる挑戦を決めるために少し考えた。彼の心は次の冒険への期待で膨らみ、さらなる成長と経験を求めて新たな道を歩む決意を固めた。


「どの任務を選ばれるにせよ、ギルドはあなたを全面的にサポートいたします。頑張ってください、アルフレッドさん」


 アルフレッドは受付係に感謝の意を表し、次なる冒険に向けて心を躍らせながら準備を始めた。彼の冒険者としての旅は、まだ始まったばかりだが、その一歩一歩が彼を強くし、新たな物語を紡いでいくのだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ