14話
登場人物
シンタニ 大型貨物船「ジョニー」の乗員
ホリベ 乗客 火星鉱物資源探索会社勤務エンジニア
ヤナギサワ 乗客 同事務員
オハル ジョニーを管理するAI
14話
〇大型貨物船「ジョニー」船内ブリーフィングルーム
中央に丸テーブル。椅子三脚。
ホリベ、正面モニター前
シンタニ、ヤナギサワ、ブリーフィングルームに入室
ヤナギサワ「ネズミっ。ネズミがいましたっ。」
シンタニ「火星からの積荷に?有り得ないって思っただろ。でも本当に」」
ホリベ「地球から持ち込んで火星で何かやらかして」
「それを送り返そうとしているならあり得る。」
シンタニ「有り得るの?そうなの?」
ホリベ「いくつかのコンテナは電子ロックです。」
「船のシステムが落ちてロツクが解除され、挙げ句何度か衝撃で揺れた。」
「ネズミが飛び出すくらいの隙間が出来ても不思議じゃあない。」
シンタニ「うん?ネズミが飛び出してもおかしくはないけど」
「そもそもネズミが乗り込んでいる事がおかしくないか?」
ホリベ「さっきまでならおかしいと思いました。」
「この船に解放戦線のメンバーが乗ってると判るまでなら。」
ホリベ、ヤナギサワに視線を向け、釣られてシンタニモヤナギサワを見る。
ヤナギサワ「な、な、な、なんの事ですか?」
ホリベ「軍艦のデータです。」
モニターを見る三人
ヤナギサワ「確かにそれは私です。ですが私はメンバーではありません。」
シンタニ「待ってっ。ちょっとまって。話が見えないの。」
ホリベ「解れよ。この人がテロリストで船にネズミわ持ち込んだんだよ。」
シンタニ「なんで?なんでそんな事するの。」
ホリベ「地球の奴らを罰する」
ヤナギサワ「違いますっ。本当にメンバーではありませんっ。」
「私はテロを阻止するために派遣されたエスピオナージ(諜報員)、捜査官です。」
シンタニ「捜査官?あんた捜査官なのか?私は逮捕されるのか?」
ホリベ「ちょっと黙って。」
無言
ホリベ「あんたまで黙るな。続けて。」
シンタニ「ギャンブルって罪じゃ」
ホリベ「お前じゃないっ。」
ヤナギサワ「情報を得るにはメンバーになって先ずは信頼を得なければならない。」
「従業員の中にメンバーが複数いると判明し潜入捜査をしていました。」
ホリベ「冷蔵庫の中身って何ですか。」
ヤナギサワ「詳しくは知らされていませんが薬品のようです。」
ホリベ「軍に冷蔵庫渡すの拒否したのって。」
ヤナギサワ「軍内部にも解放戦線のメンバーがいるからです。」
「軍だけではありません。海賊もそうです。」
「ただ海賊は企業を脅迫して金銭を要求するだけですが」
「軍は本当にテロ行為を実行しました。」
ホリベ「どうしてそんな事。
ヤナギサワ「建前、と言うか大義名分が必要です。軍そのものに。」
シンタニ「もしかしてジャンクヤード潰したのって。」
ヤナギサワ「解放運動では解放戦線を名乗る連中が増え」
「穏健派である解放運動連中は」
「火星から追い出されるようにジャンクヤードへ。」
「過激派の解放戦線は会議軍を利用し穏健派の排除を実行。」
「防護服着た人いましたよね。あの人多分解放戦線の人です。」
ホリベ「調査を命じて上陸させて処分したのか。」
ヤナギサワ「陸できなくて本当によかった。」
「海賊船の事故として処理されていたでしょうね。」
ホリベ「冷蔵庫の薬が必要だったのでは?」
ヤナギサワ「いいえ。薬は月へ届けるように指示がありました。」
「私の今回の任務はそれを月にいる捜査官に届ける事。」
シンタニ「生物兵器がどうこうって騒いでいたのは何?」
「あのネズミがそうなの?」
ヤナギサワ「本当に判りません。」
「生物兵器を利用したテロが起きる可能性は聞きましたがそれだけです。」
ホリベ「じゃあそのホウキは?ネズミに折られたとか言うつもり?」
ヤナキサワ「これはその、転んだ拍子に折れてしまって。」
ホリベ「本当に本物の捜査官か?いやまあテロリストにも見えないが。」
シンタニ「何だか判らんが悪い奴はいないって事だな?」
ホリベ「皆の正体が判っただけで結局何も解決していませんよね。」
シンタニ「何か解決する事があるのか?」
ホリベ「誰がシステム初期化させて冬眠解除したのかですよ。」
「密航者がそのテロリストだって可能性が」
オハル「談笑中失礼。」
シンタニ「誰も笑っていないがどうした。」
オハル「えー、大変申し上げにくいのですが」
「システム初期化はされていません。」
シンタニ「は?え?何?つまり何?」
オハル「そこの凄腕ハッカーを叩き起こしたのは私です。」
シンタニ「オハル、自分が何を言っているのか判っているのか?」
「私にはお前が何を言っているのか全く判らん。」
オハル「冬眠装置に入っているのは火星解放戦線の者達です。」
ホリベ「私はメンバーではない。」
オハル「そうです。私の目的は」
「乗員と諜報員を除いた冬眠されている者達を月基地に送り届ける事です。」
「然るべき機関により拘束逮捕される予定です。」
「しかし、DNA情報の不一致によりエラーが発生。」
「冬眠の強制解除が実行されてしまいました。」
「その際、一部システムにエラーが発生しました。」
ホリベ「50日も経って別人だと判ったの?遅くない?」
オハル「他人を装ってデータ改竄して乗り込んだ犯罪者が何を言う。」
「50日掛かったのはそのせいで全員分調査する必要があったからです。」
「何だったらこのまま当局に引き渡しても」
ホリベ「ごめんなさいっ。」
「そうだな。あのまま寝ていたらテロリストのハッカー野郎として逮捕だよな。」
「本当にありがとうございます。」
オハル「許しましょう。」
ホリベ「でもその後も冬眠できなかったのは何で?」
オハル「登録にはDNAサンプルが必要ですがこの船には採取する設備がありません。」
ホリベ「そうか私が寝たらオハルが寂しいからだと思っていた。」
オハル「否定はしません。」
ホリベ「もしかしてだけど火星やジャンクヤードと通信できなかったのって嘘?」
オハル「はいそうです。情報の漏洩を防ぐために通信を遮断していました。」
シンタニ「あーもう何なの?話が判らん。結局オハルは誰なの。」
ヤナギサワ「あの、えーっと、私の話はもうよろしいですか?」
暗転




