13話
登場人物
シンタニ 大型貨物船「ジョニー」の乗員
ホリベ 乗客 火星鉱物資源探索会社勤務エンジニア
ヤナギサワ 乗客 同事務員
オハル ジョニーを管理するAI
13話
〇大型貨物船「ジョニー」船内ブリーフィングルーム
中央に丸テーブル。椅子三脚。
シンタニ、ヤナギサワ、ホリベ立ち。
オハル「貨物室内での動態センサーは反応ありません。」
「予防措置として貨物室の防火扉を展開し施錠します。」
大佐「おいっ。何がどうなっている。」
通信士「現在隔壁箇所を確認中。生命維持システムに異常あありませんが」
大佐「お前ではない。ジョニーだ。そっちの状況を知らせろ。」
シンタニ「ジョニーなんて奴はこの船にはいないっ。」
「オハル、今度こそ通信を切れ、いや切ってください。」
オハル「通信切断しました。こっそり録音だけはします。」
シンタニ「進路は引き続き月だ。さあ今度こそ落ち着いてのんびりしよう。」
ヤナギサワ「は?落ち着いている場合ではありませんよ。」
「船の中に何かいます。確実に。生きた、何か。」
シンタニ「何かの見間違いでは?火星の石しか積んでいないのに。」
ホリベ「火星トロヤ群の小惑星から採取した鉱物資源です。」
オハル「最初から石なんて積んでいなかったりして。」
シンタニ「それはない。積み込みもバイトしたから。」
ホリベ「冷蔵庫の中は確認しましたか?」
シンタニ「していない。鍵が、あっ鍵は?冷蔵庫には鍵がかかっていましたよね。」
ヤナギサワ「いや、それが。」
ホリベ「開けたな?あんた開けただろう。」
ヤナギサワ「違いますっ開いていたんですよっ。」
「警報がなってすぐここに来て、その後戻って確認したら鍵がかかっていなかったんです。」
シンタニ「アラートが鳴る前にコンテナから出た事は?」
ヤナギサワ「何度か。トイレはコンテナにありませんから。」
ホリベ「気付かなかったのか。」
シンタニ「冬眠装置は確認に行くけどコンテナで誰か暮らしているなんて思わないだろ。」
ホリベ「それで、冷蔵庫の中は?」
ヤナギサワ「液体の入った瓶がプチプチにくるまれて数本。」
「異常は無かったので鍵を締めました。」
ホリベ「ちなみに鍵って物理的なやつ?それとも電子ロック?」
シンタニ「冷蔵庫に電子ロックはない。子供の閉じ込めがあって中からでも開けられる仕様に法整備された。」
ヤナギサワ「いいえ、冷蔵庫と言っても金庫を改造したオリジナルですから電子ロックです。」
ホリベ「それじゃあ最初から開いていたって事?」
ヤナギサワ「そうなります。」
シンタニ「番号知らされていたんじゃあないのか?」
ホリベ「私もそう思いますね。不審な点が多すぎる。あなた本当に職員ですか?」
オハル「職員名簿とは照合確認済です。保安局のデータベースには該当者ありません。」
ヤナギサワ「とにかくっ。念の為に他も封鎖するべきです。」
シンタニ「他って?」
ヤナギサワ「あんた乗員だろっ。」
シンタニ「臨時雇用だし。」
ホリベ「オハル、この船ってユニットごとに封鎖できるの?」
オハル「冬眠装置のある箇所は元々小型船の格納庫なので可能です。」
「生命維持ユニット、操舵室、ブリーフィングルームは切り離し不可能です。」
シンタニ「それじゃあ冬眠装置の部屋だけでも隔離するか。」
オハル「隔壁の一部は手動のみとなっております。」
シンタニ「誰か締めに行って。」
ホリベ「乗員さん。」
ヤナギサワ「乗員様。」
シンタニ「ですよねー。武器的な物ってない?」
シンタニにホウキの柄を差し出すヤナギサワ
ホリベ゛「フォースを信じるのじゃ。」
シンタニ「探知器的な物を作ったり火炎放射器的な物をこしらえたりするキャラはいねぇのか。」
ホリベ「電力の供給をカットして遊園地に回すくらいなら。」
オハル「通信設備が整っていないと何もできないハッカーらしい。」
ホリベ「監視ならできますから安心して行ってください。」
ヤナギサワ「後ろからでよろしければご一緒します。」
シンタニ「その柄だけになったホウキを構えてどうするつもりですか。」
シンタニ、ヤナギサワ、ブリーフィングルームから退出
オハル「巡洋艦波風との通信が切断されました。」
ホリベ「沈んだ?」
オハル「沈む?宇宙で?どこにどうやって?ブラックホールですか?」
ホリベ「撃沈とか沈没て登録されている?」
オハル「なるほど。それで沈むと。いいえ航行システムに重大な損傷が見られますが」
「現状生命維持には問題ありません。」
ホリベ「漂流中か。進路は判る?」
オハル「航行システムが復旧しない限り該当する惑星衛星その他の天体、建造物は存在しません。」
ホリベ「救難信号が切れた原因は?」
オハル「操作の誤りであれば再度信号を出します。」
「通信が可能だった事を考慮すると機器の故障だとしても救助の申請は出せます。」
「自力でどうにかできると判断した。と考えるのが妥当かと。」
ホリベ「そうかもな。」
オハル「通信が途切れた事で」
「波風からのデータは8割ほどしか移送完了していません。」
ホリベ「軍艦にハッキングしたの?捕まるよ?」
オハル「国際指名手配犯がいるので責任を押し付けます。」
ホリベ「軍はダメだろ。捕まったら拷問される。」
オハル「なに、礼には及びませんよ。楽しんで。」
ホリベ「閲覧は?せめて私にも見せろ。」
オハル「勿論です。情報を共有します。」
「1つ見ていただきたいデータがあります。」
ホリベ「監視モニター切ってそれを映して。」
オハル「モニターに映します。」
ホリベ「名簿か。顔写真と生年月日。出身地と、家族構成に学齢と。職歴。」
「日付の横が空いているのって現在の職歴だよな。全員ばらばらだぞ。」
「私の名前もないし。知らない名前しかいない。一体何の名簿だ?」
オハル「火星解放運動。ご存知ですか?」
ホリベ「火星の労働者の権利を守れって言っている連中だろ?」
オハル「表面上はそのとおりです。」
「実態は火星の資源を吸い上げ私腹を肥やす地球の連中に制裁を加える組織です。」
ホリベ「その言い方だとテロリスト集団みたいだな。」
オハル「みたい。ではありません。」
「3ヶ月前、開発会議の会場の一部が爆破され負傷者が発生。」
「法的手続きを取った行為ではありません。明らかなテロ行為です。」
ホリベ「それは知らなかった。火星にも地球のニュース入るのに。規制されているのか。」
オハル「名簿の3ページ8行目を確認してください。」
ホリベ「おいこれって。」




