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10話

登場人物

シンタニ 大型貨物船「ジョニー」の乗員

ホリベ 乗客 火星鉱物資源探索会社勤務エンジニア

ヤナギサワ 乗客 同事務員

オハル ジョニーを管理するAI


10話

〇大型貨物船「ジョニー」船内ブリーフィングルーム

 机と椅子が散乱

 シンタニ、ヤナギサワ、ホリベ立っている。

シンタニ「とりあえず片付けよう。」

ホリベ「システム異常は無いようですが一応目視しますか?」

ヤナギサワ「あ、あの私貨物室見てきます。」

ホリベ「ちょっと待って。」

 ホリベ、シンタニに向かって

ホリベ「あんた本当に乗員か?」

シンタニ「なんだ突然。」

ホリベ「密航者ってアンタじゃあないのか?」

シンタニ「バレちまったら仕方ない。」

ホリベ「マジか。本当に」

ヤナギサワ「ギャーっ。逃げますか?私逃げましょうか?」

シンタニ「いやうそっ。今のうそ。本当に密航者じゃないからっ。」

ホリベ「は?本当は何者だ。」

シンタニ「その前にどうして突然私を密航者扱いするのか教えてくれ。」

ホリベ「乗員の恰好をしているから。」

シンタニ「なにそれ。乗員なんだから乗員の恰好はするだろ。」

 「ただの雇われだが本物の乗員だ。」

ホリベ「小型船の免許も小型船も持っているのにどうしてこんな仕事を受けた。」

 「そもそも小型船はどうした。火星に置きっ放しか。」

シンタニ「えーと事故で。」

ホリベ「それは嘘だ。出発前まで事故は6件。いずれも搭乗者は死亡している。」

シンタニ「なんでそんな事を知っている。」

ホリベ「事故がある度に現場に行ってシステムの異常を調査するのが仕事だったからだよ。」

 「ブライって言葉で思い出した。」

シンタニ「言ってないよ?海賊との交信コードなんて言ってない。」

ホリベ「自分の小型船を無くしてこんな仕事受けて海賊と付き合いがある。」

 「火星炭鉱唯一のゴールドラッシュだ。それを手放した。」

 「ギャンブルだろ?」

シンタニ「なんで?なんなの?ハッカーじゃなくてエスパーなの?」

オハル「彼は正真正銘指名手配中のハッカー。」

ホリベ「それは関係ない。」

 「借金の理由なんてギャンブルか女だ。」

 「そしてその返済にこの船の積荷を売るつもりだ。」

ヤナギサワ「なんだと?積荷は渡しませんよ。冷蔵庫は絶対に渡さん。」

シンタニ「いや、いやいや、もう必要ないから。」

ヤナギサワ「中身を抜いたのか?いつだ?いつの間にっ。」

シンタニ「売る必要がなくなったってだけで」

ヤナギサワ「借金返済したんですか?どうやって。」

シンタニ「そうじゃなくて海賊船なくなったからもういいでしょ。」

 「海賊は債権取立業者みたいなもんで」

 「海賊が借金肩代わりしたからいなくなればもう返す必要もないってこと。」

ホリベ「小型船が担保にされているんじゃあないの?海賊に返済報告しなければ返って来ないんじゃ?」

シンタニ「担保?船は売った。そんな端金じゃあない。私の借入額舐めるなよ。」

ホリベ「海賊船が一隻破壊されたってだけで」

 「海賊が壊滅したわけじゃあないけど。それはいいのか?」

シンタニ「この先に海賊船沈めた軍艦がいるだろ。」

 「それに付いていけば海賊も襲ってこない。」

 「地球にさえ到着すればどうとでもなる。」

ヤナギサワ「借金が消えたわけでもない。船もない。」

 「地球へ行ってどうするつもりですか?何かアテがあると?」

シンタニ「アテならある。まずはラスベガスに行く。」

 「今回の仕事の報酬を元手に稼ぐ。」

ヤナギサワ「判った、あなたダメ人間ですね?」

ホリベ「結局本物の乗員なのか?ダメ人間なだけの。」

シンタニ「そうだ。いやダメ人間ではない。今はツキがないだけだ。」

ホリベ「じゃあシステムが落ちたり冬眠できないのは?」

シンタニ「それは知らない。」

 「勤務中に突然アラートが鳴って2人が現れ。それだけだ。」

ホリベ「じゃあ本当に誰かが入れ替わった?」

 「本物の乗員を眠らせて乗員のフリをしているヤバイ奴かと思ったのに。」

シンタニ「そんなふうに思っていたの?」

ヤナギサワ「私はそんなふうには思っていませんでしたよ。」

「乗員にしてはちょっとアレだなくらいで。」

シンタニ「アレって?」

ヤナギサワ「言わせないでください。」

シンタニ「私を密航者扱いするが自分はどうなんだ。」

 「さっきさらっと指名手配犯とか言われていたよな。」

ヤナギサワ「そうでした。そうでしたよ。逃げないと。でも何処へ?」

オハル「火星のデータベースで確認しました。」

シンタニ「火星と繋がったのか?」

オハル「繋がっているのはずっとです。」

 「少し前に私に侵入を試みたハッカーの手口を模倣して」

 「火星のデータベースへの侵入を果たしただけです。」

ヤナギサワ「犯罪では?それは犯罪なのでは?」

 「何ですかこの船。犯罪者ばかりじゃあないですか。」

 「移動式監獄か?それとも護送船か?看守は何処ですか?」

ホリベ「火星との交信は相変わらず?」

オハル「応答はありません。呼びかけもありません。」

シンタニ「話を逸らそうとしてもだめだ。」

 「本当に貨物室に監禁する必要があるのか聞かせろ。」

ヤナギサワ「随分と悠長な事を言っていますが大丈夫ですか?」

シンタニ「だってハッカーでしょ?殺されるわけじゃあないでしょ。」

ヤナギサワ「社会的に殺されるかもしれませんよ。」

シンタニ「いやあ私既に社会的には存在していないような者ですから。」

ヤナギサワ「悲しくなるからやめて。」

 「何にせよ貨物室への監禁には反対です。」

シンタニ「どうして。コンテナに入れて外から鍵掛けてしまうのが一番安全かと。」

ヤナギサワ「いや、まあその、ああそう、宇宙貨物船のコンテナって気密性高いですよね。」

 「酸欠になって危険ですよ。」

 「それにほら、この船にいる限りは何処にも逃げようがない。」

シンタニ「それもそうだな。さあ改めて話を聞かせてもらおうか。」

ヤナギサワ「あ、私は社会的信用をまだ無くしたくないので。」

 「訊いていてヤバそうになったら逃げますね。」


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