第二話:私と手を組まない?(2)
「さて、じゃあ、さっそく準備をはじめましょうか」
俺たちが手を組むことになってすぐ、世利長さんが切り出した。
「準備?」
「ええ、ちょっと動かないでね。サラ」
『了解しました』
愛歌さんがどこかに向かって話しかけると機械音声で返事が返ってきた。
そうすると、天井に穴が開いて機械のアームが出てきた。
「な、なんだよ」
「動かないでってば」
アームの先からレーザーらしきものが扇状に放たれ、俺の体を触っていく。
するとモニターの1つに、俺の3Dモデルらしきものが作られていった。
「さて、処理に少し時間がかかるから個人的に聞きたいことがあるの」
「聞きたいことこと?」
「あなたの力についてよ。力の詳細についてはおいおい聞いて行くとして、まずはヒーローとして活躍できるほどの力をどうやって手に入れたのか、教えてくれる?」
「えーっと」
どう説明した物か。
「少し長くなるし、何より荒唐無稽な話になるけどいいか?」
「話してみて?」
世利長さんが出してくれた紅茶を手に、話始めた。
自分がなぜ人ならざる力を手に入れることになったのかを。
…………。
……。
…。
俺はいわゆる、異世界転移を体験した。
この世界のアニメなんかで異世界と呼ばれているような世界は無数に存在していて、その全てに俺たちと同じ姿かたちをした"ヒト"が生息していることで薄くではあるが繋がりを持っている。
そしてどこかの世界のヒトが滅びの運命をたどり始めた時、またどこか別の世界の誰かが強力な人間に改造されその滅びの運命を変えるために送り込まれる。
その強力な人間は天造人、または超人と呼ばれる。
そして超人はその命ある限り数多の世界に送り込まれ続け、ヒトを救い続ける使命を課される。
「その超人の一人があなたってわけね。ふーん。巨大な"ヒト"という何かのいわば免疫の役割ってことかしら。ウイルス……、外敵から身を守るための」
俺の話を聞いた世利長さんがそんな事を呟いた。
「やけにあっさりと信じるんだな。あんた仮にも科学者なんだろ?」
「もちろん、科学者は疑うことが仕事よ? でも時には疑いながら信じないとね」
「?」
「つまり、その話が本当かどうかは今はどうだっていいってこと。あなたの話を聞いておくことが大事なのよ。少なくとも」
愛歌さんがPCの画面を見せる。
「現在数十の色々な嘘発見器にかけているけれど、1つも引っかかっていない。これを欺くのは訓練を受けたFBIだって難しいのよ。少なくともあなたは自身の話を嘘だと思っていない。それがわかれば十分」
え、怖……。
「で、今は超人としての仕事待ちの時間ってこと?」
「そういう事だな」
「なるほどね。それで暇つぶし」
世利長さんは、妙に納得したような顔をしていた。