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第二十五話:科学は人を殺しても許されるのか(後編)

「つまりなんだ? 文明発展のためなら人の死も仕方ないって?」


 話を続ける。


「言っただろ、現代人が気に食わないと。科学という名の原罪を抱えているというのに、自分はさも穢れていない、罪を持たぬ人間であるかのようにふるまって生きている。何食わぬ顔で科学の美しい面だけを利用している! ……にも関わらずその矛先を自分に、親しい人に向けられれば、倫理がどうだと都合と聞こえだけのいい言葉を持ち出し、赤子のように泣き叫び、なぜ俺が! 何故あいつが! と喚き散らす。身勝手極まりないと思わないか?!」

「愛歌もおなじだろ。いつかあいつの病気の謎が、あいつの死を礎にして解き明かされて、未来の誰かの助けになる。……それを受け入れられず喚き散らしているのは、お前だろーがっ!」


 特大ブーメラン刺さりすぎだ。


「それが愛歌と僕らとの違う点だ。言ったろう。愛歌は類まれなる天才。まさにアインシュタインのごとく発想力と頭脳! 百の犠牲を以てしても愛歌を生かす方が、人類に大きく貢献する!」


 ……違うな。こいつの行動原理の根本はやはり人の親であるということ。

 何かの理由や言い訳をつけてはいるが、それ以前に自分の子を何を犠牲にしてでも救いたい、それだけが本当の願いなのだ。

 俺だって愛歌には生きていて欲しいさ。でも……。


「愛歌を生かすために生じる罪も罰も、その重さも! ……それを背負うのはあんたでも俺でもない! 愛歌自身なんだぞっ!!」

「……なぁ、白君。君は音楽が好きだと聞いたよ」


 また回りくどい話。

 愛歌ならいいが、男にされるとムカつく。


「だからなんだよ」

「例えばベートヴェンがその素晴らしい作品を作り出したその背景で麻薬を吸っていた事がわかったとして、今更誰が気にすると思う?」

「それは……」


 それを叩くのはその素晴らしさを理解することのできない奴だけだろう。

 音楽の事をわかっている人間ほど、そんなこと気にしなくなる。素晴らしいものは素晴らしいものであると、その事は覆しようのない事実だ。


「同じように、ダ・ヴィンチが盗人だったとして、ニュートンがDVをしていたとして、今更誰が気にする? 何が変わる?! 悪行などという垢は偉業という水で洗い流せる! 偉業は時を超えれば伝説へと昇華するからだ。どれだけの悪鬼羅刹であろうと、信長は日本人にとって英雄だ。どんなに節操のない男であろうと、神の中の神と崇められるゼウスのようにっ!」

「……」

「だから、あの子は何を背負うこともない、後ろめたく感じる必要など微塵もない。世利長愛歌の名は後1000年に渡って人類史に刻まれるのだから。その天才のためには犠牲は付き物、それだけの話だ。そして白君、君は唯一愛歌が選んだ男だ。愛歌は見る目がある。自らを犠牲に英雄となる道を選べるものなど少ない。君こそ愛歌を、天才故に孤独な道を辿ってしまうであろうあの子を支えるに相応しい。僕の実験もあと少しなのだ。君と僕なら必ず愛歌を救える。そのためにも僕の仲間になれ」


 その言い分は、……確かに正しいとは思った。

久しぶりに連投です。

ここは一気に出すべきだと思いまして。

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